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2008年07月15日 @ 11:41PM
 妄想†夢想 キリ番SS 

 恋姫†無双 キリ番SS (666666 HIT SS 九龍様)

 


 蓮華編 

 
 ※はじめに
  
  孫権=お酒好き
  という、イメージしかわかなかった自分にorz
     


  後、表現が一部、エイプリルフールSSの時みたいにちょっと過激かもしれないので一応、十五歳未満禁。
 
  申し訳ありませんがお読みになられる時は自己責任でお願いします。


 

 江東の碧眼美女はお酒がお好き?  





 曹魏を討ち、南国の孫呉をも併呑した北郷の王こと北郷一刀には今、気になる事があった。

 無論、中国大陸の殆どを統一したとは言え、戦乱に明け暮れ疲弊した国の再開発や、歴史の裏で暗躍している白装束達の所在が未だに掴めないことなどの諸問題はあったが、それは“王”としての公的な立場の事であり、今、彼が気にしているのは“北郷一刀”という一個人私的な立場からであった。

 一刀は、本日の朝議の後、執務室兼寝室で朱里から渡された行政府の仕事に関する採決が書かれた竹簡の山を黙々と処理していた。

 お昼すぎに月が運んできてくれた食事を食べ、その後、食器を片付けにきた詠へ行政に関する質問をして、彼女に叱られながらも何だかんだで結局アドバイスを貰い、引き続き仕事をしていた一刀だが、ふと、溜め息をひとつ吐いて、筆をすずりに置き天井を見上げる。

 そして何やら少し、思案した後、座臥の下に隠してあった履物を出し窓から抜け出すのであった。



 まあその結果、一刀の仕事ぶりを見に来た愛紗が一刀の不在を知り、執務机の上に置かれた紙に『探さないでください』との書き置きを発見し、彼女は、顔少し俯かせながら不敵にワラう。

「ふふふ、またですか? ほんと、懲りない御方ですねご主人様は――毎度毎度、そんなにわたしを怒らせたいのですか!?」

 紙を手でビリビリに破き、咆哮する愛紗。どうやら、ひとりの夜叉を覚醒させてしまったようであった。

 一刀も懲りない――いや、ここまで来れば、ワザと愛紗を怒らせているように見えないでもない。要は、好意を持った女の子にはつい、意地悪したくなる感情が入っているのであろう。

 兎にも角にも、一刀が愛紗に見つかったらゲームオーバーという宮中では、わりと日常的な鬼ごっこが今日も始まろうとしていた――




 余談だが、鬼である愛紗が一刀を発見した時に彼が他の女の子と楽しげにしていた場合は、アイシャゴン覚醒の後、三途の川体験日帰りコース一直線である。



 さて、仕事を放り出した一刀は、ある場所に赴いていた。

 その場所とは、一応、捕虜という名目で捕らえている華琳に宛がわれた部屋である。

 一刀は部屋の扉をコンコンとノックし、中から「どうぞ」という言葉を聞き、中へと入った。

「――お邪魔するよ」

「あら? 誰かと思えば一刀じゃない。どうかしたのかしら?」

 部屋の主である曹操こと華琳は、書物に埋もれた机の隙間から顔をのぞかせていた。

「――また、すごい光景になっているな」

「そうね。暇つぶしに孫子の兵法書の編纂をはじめたのだけれど結構、おもしろくてつい熱中してしまっている最中よ――ああ、報告が後になったけど、この本はここの軍事府から借りたモノだから」

「ああ、それは構わないよ――そう言えば、他のみんなは?」

 部屋の中をキョロキョロ見渡しながら、そんな事をのたまう一刀に華琳は少しムッとした表情になる。

「春蘭はこの部屋の惨状を見て知恵熱を出して、秋蘭が付き添って部屋から出て行って、桂花は私の頼みごとで席を外しているし、季衣はあなたの所のおチビちゃん(※鈴々のこと)と今日こそ決着をつけてやるっていきこんで出て行ったわよ」

「華琳?」

 何故か、不機嫌そうな声音でそう伝える華琳に一刀は首を傾げる。

 そんな一刀の態度に華琳は「はぁー」っと呆れた溜め息を一つ吐くのであった。

「まあ、朴念仁のあなたに期待してもしょうがないわね――で、ここに来たって事は、何かしら用事があるってことでしょう? なにかしら?」

「ああ、実は華琳に頼みたいことがあってさ」

 一刀は華琳に視線を戻しながらそう答えた。

「へえー、中華を統一した王が虜囚の身である私に頼み事って何かしら?」

 華琳は、両手で頬杖を付きながら、幼さの残る顔立ちに妖艶な微笑を浮かべる。

 一刀は、華琳の視線にドキッと少し、ときめいてしまうが、首を振り、心を落ち着かせる。

「ん。実は、桂――いや、華琳が造った酒を少し分けて貰えないかなと思ってさ」 

 華琳は一刀の申し出に少し意外そうな表情を浮かべた。

「なんかヘンな事言ったのか?」

「違うわよ。あなた王――いえ、覇者としての自覚はないの!? わたしは、あなたに負けた捕虜よ? そんなこと――これ以上言っても無理ね」

 華琳は一刀に権力者としての自覚の無さを誡めるため言葉を投げかけるが、何の事かわかっていないキョトンとした一刀の表情を見て、それを止めた。

 そして、それならそれとして、言葉を紡ぐ。

「まあ、好きなだけ持っていけばいいわよ。けど――その見返りとしてあなたは何をくれるのかしら?」

 楽しそうな表情を浮かべながら、少し意地の悪いことを言う華琳。

「うっ……」

 一刀は痛いところを突かれたように眉を顰める。

 王とは言え、私用で仕える一刀の財産は、一兵卒の給金と同じ額。“女遊びをされても困るから”という理由で、相も変わらず、愛紗と朱里の紐は固いようである。

 まあ、そのおかげで紫苑などは時折、金欠の一刀の面倒を見ていたりして、彼の好感を得ているのだから愛紗達の策は完全とは言えないのだが。

 話は元に戻るが、華琳の造った(実際にはほとんど桂花だが)お酒は、あまり酒に詳しくない一刀から見ても市に売り出せば高価なものだと理解していた。

「……俺の出来る範囲であれば、一つお願いを聞くよ」

「殊勝ね」

 故に、一刀はそう答えたのである。

 華琳は、紙に酒蔵から必要な分だけ酒を持ち出す許可を一筆書き、一刀にそれを渡した。

「ありがとう、華琳。恩にきるよ」

「ひとつ、ついでに忠告しておくわ。――これからは、余り自分を安売りしない事ね」

「? ああ」

 一刀は華琳の言った意味を完全に理解出来ていなかったが、とりあえず頷いて答えたのであった。

「じゃあ、悪いけど急いでいるからまた」

「ええ、わかったわ」

 部屋を出て行った一刀を確認し、華琳は少し、疲れたような表情を浮かべ、椅子の背もたれに身体を預け、少し、ズレ落ちる。

「ふぅ、全くあの男は、自分の価値と置かれた立場が全然解っていないわね全く――捕虜に対しても、安請け合いしていると、いつか寝首を掻かれる事になるかもしれないのに」

(まぁ、でもそれならそうならないように一刀の支えとして、――宰相にでもなって、彼を補佐して、実質的な天下を取るのも悪くは――いや)

 そこまで思考して、華琳はぶんぶんと首を横に振って、少し頬を朱に染める。

「らしくないわね――いっそのこと、今回の借りのお礼は“あなたの正室にしてください”とでも言ってみようかしら? ふふふ、愛紗達の怒る姿が目に浮かぶわね――」

 華琳は今の暮らしを満更でもなさそうに過ごしているようであった。



 酒蔵から、少し大きめの徳利に酒を手に入れた一刀は、目的の場所に向かっていた。

「――主」

 だが、その道中、星と出会い呼び止められた。

「星」

 一刀の呼びかけに星は、満足そうに少し微笑みを携えて、一刀の許にやってきた。

「普段ならまだ、政務のご時間でしょうに、このような所でお会いするとは思いもしなかったゆえ――さぼりですか?」

「まあ、そんな所かな」

 星の言葉に一刀は、ごく自然に答えた。

 それ故に、星の視線が少し細くなる。

「ほう、そうですか……なれば、護衛も付けず、どのような理由があってこちらにお越しですかな?」

 一刀の行き先には宮中とは言え、彼が一人で行くには余りよろしくない場所であり、星は臣として己の主の軽率な行動を諌める。

「……ん」

 だが、一刀は星の質問に即答せず、視線を彼女から外して、どうしたものかと言わんばかりの態度で考え込んでいた。

 星は、そんな一刀の態度に、さて、どうしたものかと考えていたが、ふと、一刀の持っていた徳利に視線が移った。

「――主、それは酒ですね?」

「あ、うん。実は、華り――」

 一刀はハッとした表情になり慌てて右手で己の口を塞ぐ。

「なるほど。曹操が造ったアレですか――主、是非私も一献戴きたい「ダメだ!」――ふむ」

 普段の一刀らしからぬ発言に、星はよほどの事だと思考する。

「とにかく、今回は見逃してくれないか星。――頼む」

 一刀は両手を合わせて星に懇願した。

 星は、そんな自分の主君に思わず苦笑してしまう。だが、その瞳はどこか優しげに一刀を見つめていた。

「主、お顔をあげてください。何も無理やり取ってまで飲みたいとは思いませぬゆえ」

 一刀は顔を上げて「本当か?」という表情を浮かべてる。

「ははは、主は私を何だとお思いか?」





「――妖怪メンマスキー」 





 阿吽の呼吸、打てば響くという形で一刀はキッパリと迷う事無くよどみもせず、真剣な表情でそう答えた。

「ほう」

 星の整った顔立ちがヒクヒクと怒りで痙攣し、手にしていた槍を一刀の首へあてがう。

「はっ! しまったつい…・・・」

「――ついで許される問題ではないと私は思うのですが?」

 一刀は目的のために手にした酒を失わないように必死になっていた為、少し、注意力がおろそかになってしまい普段とても口に出せないことを口走ってしまったのである。

 星の気の篭った瞳に一刀は、蛇に睨まれたカエルのようになり脂汗をダラダラと掻き、迫りくる恐怖に恐怖で目を閉じた。だが、酒だけは何としても死守せんと後ろ手で背に隠す。

 だが、一刀の予測を超えて星は――





 ――ちゅっ




 何が起こったか咄嗟に理解できない一刀は己の唇を指であてがう。

 そして、星に視線を向けると、彼女は少し頬を朱に染めながらもまるで、イタズラ猫のような表情で微笑んでいた。一刀と同じく、人差し指を己の唇に当てながら。

「ふふふ、今回はこれで無しという事にしておきましょう――主、少しの浮気ならそれも男の甲斐性とは思いますが、私も女ですので、お慕いしている殿方が、他の女を必要以上に気を遣うのは正直、好ましくありませぬ――まあ、今回はお優しい主に免じて見逃しますゆえ」

 星は、石のように硬直している一刀の頬を愛しそうに優しく撫でると、その場を後にする。

「…・・・」

 後ろの柱の影から感じる、戸惑いと怒りと嫉妬を含んだ視線を背に感じながら。

(ま、今回は貴女に主を譲るのだから、このくらいの役得は貰っておいて然りだろう?)

 星は本当に楽しそうに口元をニヤリとさせながら、飄々とした態度で去るのであった。
    




「――全く、星のやつにも困ったもんだな」

 そうブツブツ言いながらも先程の星との情緒を思い出し、少し頬を赤くする一刀ではあったが、目的地である孫権こと蓮華の部屋の前に辿り着き、コホンと咳払いをして心を落ち着かせる。

 そして、コンコンと部屋の扉をノックした。

「蓮華。一刀だけど」

 だが、反応が無いのでもう一度、ノックする。

「蓮華ー」

 さらにもう一度。

 一刀は蓮華が不在な事に首を傾げる。

 記憶に間違えがなければ今日の午後、彼女は部屋にいる予定であっただからだ。

 故にこうして、一刀は午後の政務をサボってきたのではあるが。

 彼女に対して気になる事がある一刀はここで諦めたら、次の機会が得られるのか解らないと考えていたが、ふと、扉をよく見ると、少し開いていたのである。

 悪いとは思いつつも一刀は部屋の扉を開けた。

「蓮華?」

 探し人は部屋の中にいた。

 ただ、椅子に座って顔を俯かせているので彼女の表情が今どのようになっているのかは、一刀の位置からわからない。

「……お邪魔していいかな」

「何のようかしら? “北郷”」

 どこか陰の雰囲気を纏い、虚ろな表情で言葉にそう答えた蓮華。 一刀は思わず、一歩後ずさってしまう。

 呼び名が”一刀“から”北郷“へ変化しているのも気になったが、これではどのみち埒があかないと考えた一刀は勇気を出して声を出した。

「蓮華に逢いにきた」

「うそ」

「? うそじゃないよ。どうして、そう思うの?」

「さっき、そこで趙雲将軍と仲良くしてたじゃない――唇まで交わして」

 蓮華の言葉に一刀は、見られていた事に驚いたと同時に、星のおかげで話が、余計にややこしくなってしまった事に頭を悩ませる。

「あれは――事故のようなもので、たまたまそうなっただけで、あまり深い意味はないよ」

 星がこの場にいたら、間違いなくオシオキされそうな事を言う一刀。

「ふーん。北郷は、好きでも無い相手と唇を交わすのね」

 蓮華の言葉に一刀は、突然、真剣な表情に変わる。

「いや、そんなことはない。今回は事故だったかもしれないけど、俺は、星の事が好きだから、そんないい加減な事はしない」

 一刀の剣幕に、何よりも『星の事が好きだから』という言葉に、勢いに押される蓮華。

 そんな彼女の心の動揺を察した一刀は首を横に振る。

「いや、こんな事で言い争うために俺はここに来た訳じゃない」

「……」

「――蓮華と一緒にこれを飲もうと思ってね」

 一刀は徳利を持ち上げて、笑顔を浮かべて蓮華にそれを差し出した。

「――えっ?」

 思いもよらない一刀の言葉に蓮華は、纏っていた陰の空気が一気に四散し、小麦色の頬を朱に染める。

 ―― 一刀が私に逢いにきてくれた?

 きちんと、そう理解した蓮華は、先程、外で見た一刀と星の一見すら忘れ、急にソワソワし始めた。

(か、一刀が逢いにきてくれたのに、わ、私、きちんと身なりを整えない!?)

「蓮華、どうかしたのか?」

「! ううん、何でもない」

 恥ずかしそうに身を縮こまらせて、顔を俯かせる蓮華。

「まあ、この酒をぱーっと飲んでさ、面倒なことは忘れてさ。気晴らしでもしようよ」

「えっ?」

 一刀は蓮華が塞ぎ込んでいる理由を彼なりに理解していた。

 北郷軍に破れ、呉の王としての地位を失い、しかし、一刀のはからいにより生きながらえることが出来、建前は捕虜ということで、新しい環境に置かれ困惑していたこと。

 曹操のように機転が利き、要領がいい人間なら兎も角、蓮華のように不器用で一途な人間はどうしてもそういった新しい環境には馴染めず、また、消極的な性格が災いして塞ぎ込んでしまう。

 それは、性格のことはさて置き、一刀がこの外史に飛ばされた直後と似たような状況であったからだ。

 いくら、愛紗や鈴々が傍に居てくれたとは言え慣れるまで孤独感は消えなかった。故に、蓮華の気持ちを考えると、一刀は放って置く事が出来なかったのである。

 さらに彼女は、先の戦いで仲違いはしたものの姉亡き後、自分を支えてくれていた周喩――冥琳を失ったことも大きい。
 
 一刀の気になる事というのは、仲良くなった蓮華が塞ぎ込んでいるので何とかしたいという事他ならない。

 それで、考えついたのが酒盛りというのは考え物ではあるが。

 だが、蓮華にとっては、“一刀が自分の事を気にかけてくれていた”というのが重用なのであった。

「……あ、ありがとう一刀」

「ははは。さあ、飲もうか。味の方は保障付だからさ」


 こうして、二人は酒を飲み交わす事になった。

 ――だが、一刀は一つ気づいていないことがあった。 
 


 孫権仲謀といえば――無類の酒好きなのである。

 しかも酒癖が悪く、人にも無理やり飲ませたりし、度々、それが臣下とのトラブルのもとにもなっていたという記述があったことを一刀は覚えていなかった。

 故に、飲み始めて数刻後に彼の不幸は始まるのであった。



 北郷一刀は今、窮地に瀕していた。

 蓮華と軽く飲み始めていた時は、談笑交じりにほんわかとした空気であったのだが、貰ってきた酒を二人で飲み干し、追加を貰ってきてから、その様子が段々と変化してゆく。

 何時のころかは覚えていないが、蓮華の目は座り、ただ無言で酒を煽り出したのである。

 その空気が一刀には重たかった。

 そこではじめて、鹿児島の祖父の家で読んだ三国志の本に『孫権はお酒が大好きであり、酒癖が悪かった』という記述を読んだことがあるようなないような気がしてきたのである。

「―― 一刀」

 ジト目で蓮華がこちらを見据えてきた。

「ん? なんだい蓮華」

 酔っ払いは刺激しないに限ると考えていた一刀はやんわりと蓮華の言葉に応じた。

 ずいっと酒の入った器を一刀に差し出す蓮華。

「まだ、こっちに入ってるよ?」

 一刀は自分の手にした器を少し持ち上げて彼女に見せる。

「ん」

 だが、それとはおかまいなしに蓮華はさらに手を伸ばし、器を一刀に押し付ける。

「……」

 一刀は、それを受け取る。

 手持ち無沙汰にどうしたものかと考えながら、酒を眺めているとじぃ〜っとこちらを見ている蓮華の視線を感じた。

 一刀が蓮華に視線を向けると彼女は、無言でこちらをずっと見ている。

 試しに一刀が、手にしていた酒を一気に煽る。

 すると、彼女は表情を嬉しそうに崩した。そして、空になった器に新しい酒を注ぐ。

 一刀が躊躇していると、蓮華は表情をまたいつものポーカーフェイスに戻し、「ん」と言って、その器をずずいっと一刀に差し出してきたのである。

(――もしかして、エンドレス!?) 

 流石に一刀はこのペースで飲まされたら潰れると、自分の酒量を弁えていた。

「あー蓮華? 俺、これ以上はさすがに……」

 と、一刀が断ると――

「……ひっく、えっぐ、えっぐ」

 蓮華は、碧い瞳からぽろぽろと涙を流し始めたのである。

 普段のクールな彼女とは違い、まるで幼子のように涙を流す。

「ははは! よし! どんときなさい蓮華クン!」

 一刀はそんな蓮華を宥めるために、胸を張り“どーんとこいカモーン”と虚勢を張る。

 すると蓮華はまるで向日葵のような笑顔になり喜びの表情を浮かべた。

「……」

 そんな彼女に見惚れてしまい動きが止まる一刀。そんな彼を余所に蓮華は笑顔のまま彼の器にトクトクと酒を注ぐ。

 そして、一刀は頑張って酒をあおる。

 蓮華にもうキツイと告げる。

 蓮華悲しむ。

 一刀酌を受ける。

 蓮華喜ぶ。

 一刀頑張って酒を胃に流し込む。

 蓮華笑顔で空になった一刀の器に酒を注ぐ

 エンドレス。

 こんなことが幾たびと続き、一刀は机にうつ伏せに倒れてしまう。

「……さ、さすがに、もう、飲めない」

 一刀がこれ以上は、勘弁してもらおうと蓮華の顔を見上げると――彼女は、倒れた一刀が不満らしく、不機嫌な表情をしていた。

 蓮華は、一刀が見上げている事に気が付き、また空になった器に酒を注ぐ。

「いや、蓮華さすがにこれ以上は――」

 と、一刀がうつ伏せのまま苦笑いを浮かべながら蓮華にそう告げる。

「……勝負」

「は?」

「私の酒が呑めないというなら、それ相応の事をしてもらう――そうね、何か面白いこと言って私を笑わす事が出来たら勘弁してあげるわ」

「……」

 蓮華のあまりにも理不尽な提案に一刀は頭痛を感じるのだが、さりとてこれ以上酒は飲めそうに無い。故にそれの話に乗る。

「ん……」

 一刀は少し考え、やがて答えが出来たのか、蓮華に視線を戻した。

「えーっと、“周泰(しゅうたい)さんがお酒を飲んで醜態を晒す”なーんてね」





 ひゅるりら〜




 彼が選んだのは、駄洒落。しかも、かなり寒い。

 とりあえず炎も凍てつくような蓮華の流し目が一刀の心臓に突き刺さる。

 さらに、その場にシュタッっと音を立て、天井から影が降りてくる。

 その影は、クノイチのような忍者衣装を身に纏った蓮華のボディーガードである周泰こと明名(みんめい)その人であった。

「「「・・・・・・」」」

 何ともいえない気まずい空気に支配されてしまう。

「……う」

「う?」

 明名の言葉に一刀が首を傾げる。

 そして――


「うわ〜ん! かずとさまの馬鹿ぁ〜! 私、蓮華様みたいに酒乱じゃないもん!」

 そして、そのまま部屋を飛び出しフェードアウト。

 普段、大人しい彼女が取り乱した事に一刀は驚きを感じつつも、どうしようもないので諦める事にした。

 だが、一刀はそれで窮地を脱したわけではない、明名の出て行った扉を見ていたのだが、悪寒が彼を襲う。

 そして、振り向くと、何時の間にか席を立ち一刀の後ろに回りこんだ蓮華が酒の入った器を手にしていたのである。

「おもしろくなかった――だから、罰として飲む」

 淡々と冷酷な表情で一刀にそう告げる蓮華。

「いや、蓮華。うん、落ち着こう」

 一刀は何とか蓮華を宥めようと立ち上がり彼女の両肩に手を置き、椅子に座らせよと促す。

 そんな一刀の心中をよそに蓮華は器に入った酒を少し口につけた。

(ああ〜こんなに蓮華が酒癖が悪いとは……もうちょっと別の手段を考えるべきだった――んぐうぅ!?」

 思考が突然途絶え、一刀は口の中に突如、広がる酒の味を感じた。

 そして、鼻腔に広がるのは、目の前で一刀の口を自分の唇で塞いで酒を口移しで流し込んできた蓮華の甘い香りであった。

「――!?」

 ピチャ、ピチャとどこか淫靡な音を立て、酒と唾液が蓮華の舌が交わる感触に一刀は目を見開いて石のように固まってしまった。

「――ぷはっ」

 蓮華は一刀の口内を充分堪能し、満足したのか一刀から唇を離した。

 その表情は、艶かしく喜びに満ちた女の表情を浮かべていた

 一刀の唇と蓮華の唇との間に銀糸が一本垂れている事が先程の行為の激しさを物語っているようであった。

 そして、一刀は――




 目を見開いたままそのまま後ろに後頭部から、ばたーんっと倒れてしまったのである。



「……?」

 蓮華は何故、一刀が倒れたか理解できないようで、可愛らしく首を傾げていた。

 一刀の頬をぷにぷにと指で突いて、反応が無いことを確かめると、蓮華は器に入っていた残りの酒を飲み干し、寝台にあった毛布を一刀にかけた。

 続いて、その場で蓮華は頭に付けている冠を取り、机の上に置く。

「ふぅ」

 そして、毛布をめくり、気絶した一刀を抱き枕のように抱えながら、彼の胸に寄り添う。

「ん〜おやすみ、かずとぉ」

 ここに来て、いや、姉の孫策が無くなって依頼始めての心底に幸せそうな笑顔を浮かべ蓮華は、一刀の横で目を閉じたのであった。




 孤独な王であった呉の元王は、一刀に出逢い、そして敗れてこうして生活するようになり、本当の“蓮華自身”の幸せを掴み始めていたのかもしれない――





 願わくばこの不器用なまでに生真面目で、心優しき少女に幸せを――



 終劇





 おまけ


「うーん」

 一刀は閉じた瞳に陽光を感じ、意識を覚醒させた。

 シュルシュルとを音を立てながら毛布を体から除け、腰を起こす。

「――頭が痛ぇ」

 ズキズキと頭が痛み、吐き気を少し感じながら一刀は立ち上がろうとしたが、半身に重みを感じ、そちらに視線を移すと――

 そこには自分に寄り添うようにして、幸せそうな寝顔をしている蓮華がいた。

 その状況に一瞬、ドキッとしたが、彼女の表情を見るとそれも落ち着く。

 優しく蓮華の前髪を指で梳く一刀であったが――背後から感じる身の危険に振り向かないほうがいいと頭の中で解っていても振り向く。



 そこには、阿吽の金剛像よろしく若しくは、西遊記に出てくる金角、銀角兄弟のように仁王立ちしている愛紗と思春がいた。



「――ご主人様? 昨日は政務を放棄してこのような所でさぼっていたのですか? さぞ、お楽しみだったようで」

 一刀を冷たい瞳で見下している愛紗。

 昨日、一刀の姿が見当たらず始めは怒りでうち震えていたが、やがて、不在な事にそれは心配にかわり、必死で彼を探していたらしい。

 愛紗の瞳にはクマが浮かび、手入れの出来なかった美しい髪が少し乱れている。――故に怖さは倍増である。

「北郷一刀、貴様! 蓮華様に対してどのような不埒な振る舞いをしたのか!」

「えっ? ……」

 激情する思春の言葉「不埒な振る舞い」というキーワードに一刀は、昨日、意識を失う前に蓮華に情熱的なキスをされた事とその感触を思い出し、目の前に居る二人から視線を外し、頬を染める。

 ブチッ!

 一刀の態度に愛紗と思春は堪忍袋の緒が切れた。



 ドンガラガッシャン! ドタン! バタン! 

 滑稽な音を立てながら、二人の猛将から処刑を喰らう一刀であった。







「――あ、愛紗! 俺のお尻に青龍偃月刀は入らないから! アッー!」

 一刀の雄叫びが虚しく、朝議前の宮中の中に響き渡る。

 そんな中にあっても、碧眼の少女は安らかな表情ですやすやと幸せそうに寝息を立てていたそうな――







 おまけ その二 


「とほほ〜 愛紗も思春も、手加減してくれよ全く」

 身体のいたる所に包帯を巻き、頬に残る引っかき傷が非常に痛ましい姿を晒している一刀は、遅れが出ていた政務にしぶしぶと励んでいた。

(まあ、痛い目にはあったが、蓮華が元気になったのならそれでいいかな)

 一刀は筆を動かしながら、そんな事を考え少し微笑むのであった。

「――失礼します」


 そんな事を考えている一刀の許へ、愛紗が訪れてきた。

 彼女は、少し緊張した面持ちで一刀の傍へと歩いてきたが、執務机を挟んだ状態でピタリと動きが止まった。

「? どうしたの愛紗」

 両手を後にやり、なんだがそわそわしている愛紗を不審に思った一刀が声をかける。

「ご、ご主人様!」

「は、はい!」

 突如、叫んだ愛紗に吃驚した一刀は背筋を伸ばし返事をする。

 そして、ダンッ! と大きな音を立てながら、愛紗の手により机の上に置かれたのは徳利であった。

「――もしかして、お酒」

「はい、ご主人様が仰るとおりです」

「また、なんで?」

 一刀のその言葉に愛紗は、耳まで真っ赤にさせ、俯く。

「ご、ご主人様も考えてみれば年頃の男性です。で、あるなら――やっぱり、こう政務や会議ばかりだと、その溜まってしまうのは無理もないかと」

「は?」

 愛紗の言葉の意図が読めない一刀は首を傾げる。

「で、ですから! そのはけ口を求め、捕虜の身にある女性を用いて解消して、それが街中に広まったなら、国の品位が民に問われてしまいます!」

「あ、愛紗」

 そこで、愛紗が何を言っているのか理解した一刀は、先日の蓮華との件を思い出し恥ずかしさで頬を朱に染めてしまう。

「――ですから! そ、そのような事をなさらずとも、臣下である私にお申しつけてくださればいつでも……ごにょごにょ」

 愛紗は恥ずかしそうに身を小さくさせながら、一刀にそう告げる。

「い、いや、なんだその」

 好意を抱いている異性からそんなアプローチを受ければ一刀とて、嬉しくないなんてことはない。

 何ともいえない二人の間に微妙な空気が流れる。それを破ったのは――





「お兄ーちゃん! 鈴々と一緒にお酒を飲もうなのだ!」

 自分より大きな瓶を背負ってまるでお日様のような笑顔を浮かべながらやってきた鈴々。



「あ、あの! 本で調べて気分が和らぐ薬草の入ったお酒を作ってみたんですが――はわわっ! 愛紗さんに鈴々ちゃん!?」

 自分で調合した酒を手にしてやってきた朱里。



「ごごごごご、ご主人様! あたしの故郷の西涼のお酒を部下の奥さんから貰ったんだ! よかったら…… なななな、なんでみんなもいるんだよ!」

 なにやら決意した真剣な面持ちでやってきた翠は、一刀以外にも人がいた事に驚き、首まで真っ赤にさせて、部屋の隅へと後ずさって「う〜」と唸りながら、一刀を恨めしそうに見る。



「主、街の酒屋でここより遠き国から仕入れた珍しい酒を手に入れましたぞ――ん? ふむ、“皆も考える事は一緒”なのか」

 翠の後に、窓から侵入してきた星は、部屋の中にいる者達を見渡して、満足そうに微笑む。



「失礼しますわ――ご主人様」

「ごしゅじんさまー」

 そして最後に部屋に現れてたのは、娘を抱っこしながらニコニコと楽しそうな笑顔で入ってきた紫苑と、母に抱かれて、お酒の入った瓶を落とさないように両手に抱えた璃々であった。

 何気に璃々の衣装が、月や詠が着ているメイド服と同じである。

 娘に何をさせる気なのでしょうか紫苑さん?



「……」

 一刀は執務机にパタンと力無く、うつ伏せで倒れる。


 もう、お酒は当分コリゴリだと思った一刀であった――




 おしまい




   

あとがき


 666666Hit キリ番SSがようやく完成しました。(約二ヶ月以上)

 九龍さまのご依頼は蓮華で、外史を舞台にした外伝との事でしたが、こんな感じになりました。orz

 少しでも楽しんで頂けたら幸いです。

 それでは、短くて申し訳ありませんが、失礼します。



Commented by らすおた at 2008-07-16
キリ番SS面白かったです。三国志は恋姫と一騎当千のアニメ盤(2期から)しか知識無いのでこういう話はすごく楽しめました。ちなみに恋姫のアニメ版は個人的には残念な事になってます。ただ、雪連(孫策)が普通に出ているので最終回は一刀か劉備が出てきてゲーム版に続くって感じでしょうか。真・恋姫は恐らくですが主人公(一刀?)が三国のどこにでも行ける様になっているようですね。個人的には最強の布陣になるであろう呉ですね。外史伝で活躍している魏の面々にも注目ですが。蜀が敵に回るのは少し複雑ですが。長くなりましたが、これからも頑張ってください。
Commented by 九里虎 at 2008-07-21
祝・更新再開!!
ここのサイトが休止すると聞いたときは本当にショックが大きかったですが、更新再開と知ったときの喜びを考えれば今ではアリだったかな?って思っている自分がおります^^
リハビリという感じで更新を行っていくものと思いますが
心より応援の方をさせていただきたいと思います!!(笑

キリ番SSは孫権が堪らなく可愛いもんで、
ニヤニヤしながら見ていた自分が恥ずかしいです^^
本編の方も今後更新されていくようですので
また、このSSを日々の楽しみに出来るんだなぁ・・・と
嬉しく思います(笑

頑張ってください!!
Commented by 九里虎 at 2008-07-21
祝・更新再開!!
ここのサイトが休止すると聞いたときは本当にショックが大きかったですが、更新再開と知ったときの喜びを考えれば今ではアリだったかな?って思っている自分がおります^^
リハビリという感じで更新を行っていくものと思いますが
心より応援の方をさせていただきたいと思います!!(笑

キリ番SSは孫権が堪らなく可愛いもんで、
ニヤニヤしながら見ていた自分が恥ずかしいです^^
本編の方も今後更新されていくようですので
また、このSSを日々の楽しみに出来るんだなぁ・・・と
嬉しく思います(笑

頑張ってください!!
Commented by rame at 2008-08-03
凄く次回が気になると共に、おまけが好きなrameと申します。
いや、つい最近このssを知りまして一気に全話読んじゃいましたww

是非、みんなには幸せになるような話であって欲しいです。
やはり、お姉さん's は本編でアレだったので特に幸せになってほしいっす!
愛紗もはやく幸せになってほしいです。

最後に差し出がましいかと思いましたが、誤字をば・・・

ss本編の最後辺りで、蓮華が寝た後の文章で
【〜姉の孫策が無くなって依頼〜】は以来であるかと思います

生意気なことを言ってスイマセヌ。
次回更新を楽しみに待っていますwwデゎデゎ
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