感想を書きたい本はどんどんたまっていくのに、なかなか時間が取れなくて歯がゆい私である。
さらに、読もうと思って買った本、読まなくてはならない本もどんどんたまっていく。本棚はとっくの昔に溢れかえり、部屋の隅っこにうず高く積み上げているのが見苦しいが、どうにもならない。
そんな私に相応しい今回のテーマ「蒐集家(コレクター)」。まあ私の場合は単に整理整頓の出来ないズボラ野郎なだけなので、蒐集家を名乗ったりしたら本物の方々に睨まれるかもしれない。
では、各編の簡易感想にいってみたい。
●「陰陽師 蚓喰(みみずく)法師」夢枕獏
有名作家だが、実は初めて読んだ。もっとおどろおどろしい話かと思ってたのだが、思いのほかファンタジックで驚いた。いつもこうなんだろうか。
●「愛書家倶楽部」北原尚彦
前述の通り、本は好きだが本の扱いは杜撰な私にとっては理解の範疇外の話。そこまでして"一体化"するのが幸せかどうかはわからねど、ちょっとだけロマンチックだと思ってしまったのも事実。そういやタイトルも、「読書家」じゃなくて「愛書家」なんだよな。
●「いちばん欲しいもの」石田一
このオチ、どう解釈すればいいんだろう。私が想像してる最悪のパターンが正解、なんだろうか。ポイントは主人公の"蒐集物"か。
●「箱」冲方丁
無数の箱からとめどなくあふれ出す"悪意"の描写がすさまじい。しかもその悪意が、主人公等によって生み出されたものだというのがまた。『リング』のような無限ループを予感させるラストの一文が強烈。
●「終夜図書館」早見裕司
なんだこりゃ読みにくいなと思ったが、我慢して読んでみるとこれが実は、全ての小説家を代表するかのような魂の叫びなのでした。この苦悩、書き手にも読み手にもなったことがある私にはしみじみと分かる。
この作品もラスト一行が秀逸だ。ただし、プラス方向で。
●「ディープ・キス」草上仁
予想できたオチではあるのだが、主人公が被告人の女を見る視線がじっとりと陰湿で妙に印象に残る。気持ち悪い話だ。<誉めてる
●「怪異蒐集家」木原浩勝
正統派"怖い話"。語り手の蒐集家の声が、稲川潤二の声で脳内再生された。
●「眼」竹河聖
華族のお嬢様、女学生たちの秘密というシチュはなかなかだが、その秘密の中身そのものが平凡でややガッカリ。でも雰囲気は好き。
●「プロセルピナ」飛鳥部勝則
これ、どちらかと言うと男性が読んでこそゾッとする話ではなかろうか。私は女なので、ちょっと爽快だったりした。この変態変態変態野郎!!
●「蝋燭取り」飯野文彦
生きていたはずの父子が死に、死者だった母が異形のまま生き続けるオチがなんとも後味悪い。さらに、この話自体を「高座にかけると不幸が起きる呪いの噺」として書いているのが怖さに一味加えている。高名な噺家の語る怪談はマジ怖いからなあ。
●「空中回廊」井上雅彦
●「參」浅暮三文
まさに実験作。このへんてこな味は実際読んでもらわないことには説明できん。しかし変なこと考えつくなあ。
●「記憶玉」岬兄悟
うーん。人をとり殺しておいて悲劇のヒロイン面してる主人公が気に喰わん。
●「人形の家2004」久美沙織
リカちゃんたちが力を結集して哀れな老女を救うのかと思ったら・・・。容赦ねえええ!!
●「枷(コード)」平山夢明
出た、平山氏お得意のグログログチャー話。視覚的にも精神的にも心底グロい。しかしこの人、「愛する娘を心ならずも惨殺する羽目になる父」という設定に何か思い入れでもあるんだろうか。
●「DECO-CHIN」中島らも
図らずも中島氏の遺作となってしまった一遍。この人の作品はいずれも何らかの形でイカレてるのばっかりだが、この話はその真骨頂とも言える。DECO-CHINてそういう意味かよ!
それにしても、異形のバンドが異形の音楽を歌い上げるライブのシーンは掛け値なしに素晴らしい。ライブは疲れるので嫌いだが、こんなバンドなら聞きにいってみたいものだ。
●「尊氏膏(たかうじこう)」朝松健
平山氏とはまた違った方向性のグロさ。グロいというよりは凄惨と言うべきか。
しかし私は権力者の愉しみの贄となった母子よりも、因果応報がもたらす地獄絵図よりも、冴え渡るバトルアクションで魅せてくれた若き一休が印象に残った。カッコいいぜ一休さん!
●「ミアのすべて」安土萌
この人にしては捻りのないオチ。不条理さを「気が狂った」で済ませるのはずるいと思うのです。
●「蒐集男爵の話」菊地秀行
女が自分を磨くのは男のためではなく、自分自身の虚栄心のため。そのどろどろした情熱が童話風に見事に昇華されていて感嘆した。さすが大御所。
●「海を集める」松本楽志
投稿作品。小説と言うよりは幻想絵画を見ているような、もしくは夢の中をさまようような不思議な作品だ。
なんだか、亡くした人に対する後悔を呼び覚まされる感じが胸苦しい。多分私だけだろうけど。
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