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<プロローグ>(1) 2 3 4 5 後記 生命は自分の目を疑った。 近づくにつれ、まさかと思う気持ちはあったが。 巨大な門の両脇に立つ兵士らしき門番に頭をさげられ、それに萎縮するでもなく平然と通っていく息吹の後ろを戸惑いながらついていくしかなかった。 町の中心の高台に建つ城。 今二人がいる場所は、そこ以外のどこでもなかった。 門を入ってしばらく、建物に入ろうかという時、息吹は足を止めた。 「生命、まだ大丈夫か? 疲れてるなら部屋で休んで明日でもいいけど」 「え? あ、はい……そんなに疲れては」 街から歩き通しではあったものの、緊張の方が気になって判らないというのが正直なところなのだが。 「じゃぁ、一応……挨拶しといて欲しいんだ。あ、礼儀とか気にしなくていいから」 あまり気はすすまない風に空に視線を泳がせながら、再び歩き出す。 生命は、ただついていくしかなかった。 「誰が真似しろって言ったかなー」 横長の赤い布貼りのソファに腰掛け、その傍らに銀髪でサイドの一部分のみが青みをおびた銀の色白な娘を置いた黒髪の青年が呆れたように息吹に向かってぼやいた。 息吹と生命は、その二人の前に対に置かれたソファに座っていた。 「誰が真似するかよ。アンタのは闘技場で見てて気に入ってかっさらってきたんだろうが。俺のは困ってたからもらったの!」 「かっさらうって、話勝手に作るな。シシリアが俺に惚れてついてきたのっ」 「そこも勝手に作ってます。河岸」 穏やかな笑みを作りながら、傍らの少女がツッコミを入れた。 「シシィ……旦那をたてようとか、そういう気持ちはないのか」 責めるというより、すがるような目でカシと呼ばれた青年は隣の少女、シシリアを見る。 「いい年して子供と張り合おうとされてるからですよ。大体、今更、人形の一人や二人増えたところで困りはしないでしょう?」 「かーさん……その子供ってさすがに、いや、まぁ、親から見れば子供はいつまでたっても子供とはいうけど。俺も20過ぎてるんだしさ」 息吹はがっくりと、眉間に手をあててうな垂れる。 「そりゃ、フツーの人形ならな。けど、難ありだっていうじゃないか。挨拶は出来るし、カワイイけど……正統後継者まで変人扱いされるのは俺イヤだぞ。これだから、きちんと教育うけてないのはなんだとか、俺が言われる!」 「開き直ってここまできたくせに」 ポソリとシシリアが呟く。 「俺は俺のことだからガマンできたのっ。俺のせいで息吹まで悪く言われたら、いなくなった兄貴になんて言えばいい? もしフラっと帰ってきて成長した息子がヘンジン扱いされてたりしたら泣くぞ、きっと!」 「「今更……」」 息吹とシシリアの声が重なる。 「てか、とーさん話飛躍しすぎ。俺は生命を城に、俺の側に置くって報告しにきただけなのに、その言い方だと妻に迎える了解とりにきたみたいだぞ」 最初に挨拶した以外、一言も発していなかった生命がようやく「え」と小さい驚きの声を出す。 「その側にで充分問題なんだよ。おまえは当然といえば当然、兄貴に似てるから期待も注目度も高い。初代以来、久方ぶりの賢王とやらにな」 「中身は粗王に似ちゃったのにねぇ」 ふぅとシシリアが息を吐く。 「だから、シシィ……愛が見えないぞ」 「方向性は悪くないんだけど、強引とか横暴とか……粗暴のソ王ですものねぇ。確かに、お兄様が帰ってらしたら嘆き悲しまれそうですわぁ」 「とにかく、城で働かせるぐらいなら問題はないし許可するが、側にってのはダメだ。おまえは……ちゃんとした妃を迎えてくれ」 おまえはの後に何か違うことを言おうとしたのか、間を空けて河岸は言った。 「親父も、とーさんも好き勝手に生きてるくせに」 ポソリと息吹が呟く。 「俺からは好きな生き方奪うつもりか?」 静かな声だが、無表情なその顔は明らかに怒りを発していた。 「その生き方の結果があるから忠告しているんだ」 「ふざけるなっ」 息吹は声を荒げ、立ち上がった。 「俺の結果は、俺がだす! それで王にふさわしくないと言われるなら、位などいらない」 息吹は生命の腕を掴んで立ち上がらせ、ドアに向かって大股で近づいた。 「息吹!」 「しばらく城には戻りません。では」 背を向けたまま二人が視界にはいる程度にだけ首を回し、息吹は言い放って扉を閉めた。 「あー」 瞼を手のひらで多いながら、河岸は天を仰いだ。 「親バカ」 呆れた顔でシシリアが呟く。 「粗王のソは粗野でもあったわね。ほんと不器用なんだから」 「……なんかなぁ。俺や兄貴みたくならないようにって頑張ってきたつもりだが、思いっきり反作用して似てくれたよなぁ」 「問題なのは、それなのに嬉しそうなところよね」 はーっとシシリアは溜息をつく。 「親バカだからねぇ」 手のひらの下で、そう言った河岸の顔には笑みが浮かんでいた。 |
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