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1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 あとがき 「予防策が役にたったね」 「デス」 玉座に座って微笑む天帝。その隣ではエニィが笑って相槌を打つ。エニィと対なすように天帝をはさんでグラナディエルも立っていた。 「で?」 天帝の正面に立つロードは仏頂面で短く言う。その後ろには、りらが心もとなさそうにロードの服の裾を掴んで顔をのぞかせていた。 「1年を待たずして目は私に戻った。私の勝ちで異論はないな?」 「……あぁ」 不機嫌な表情のまま、ロードは頷く。 「こいつに別れの挨拶するぐらいはもらえるんだろ?」 後ろのりらを指し、ロードは言う。 「構わないよ。逃げようにも逃げられないぐらいは、おまえも判っているだろうしね」 ロードはそれには応えず天帝に背を向け、りらの手をひいてその場を後にした。 「悪かったな」 神殿から離れ、しばらく経った頃、ロードはおもむろに言う。 「え?」 「願いを叶えるってこと。いらない期待を持たせただけだった」 きょとんとしているりらに、ロードは説明する。 「ああ、そういうこと。いいよ、別に……特に浮かんでもいなかったし」 (……期待なんて、してなかっただけ……だけど) 何も、誰も信じないから、期待も生まれない。それだけのことと、りらは自嘲して微かに笑う。 「結局、自分でなんとかするしかないでしょ」 「嫌味か」 あまりにさらりと言うりらに、ロードは思わず言う。 「違う違う。自分の気持ちの問題だからさ……ロードが現れるまで一人で平気だって、一人で捜せるって思ってたけど、違うって判ったから」 りらは苦笑を浮かべる。 「何が?」 ロードが先を促す。 「ロードに願いを言えって言われた時、全然知らないロードに対して”ずっと傍にいて”って言いそうになってたんだよね。あぁ、それって、一人じゃやだったってことなのかなって今は思ったりしてて」 「あほか!」 ロードはいきなり大声で叫ぶ。 「そんな簡単なことで幸せになれるんなら、とっとと叶えられただろうが!」 自分の頭を抱えながら、ロードはその場にしゃがむ。 「え、簡単って……でも、それ、私の事……好きになってって意味も含んでて……」 「俺は嫌いなヤツの傍に居たがるほど酔狂な性格はしてねぇぞ」 しゃがんだまま、りらを見上げて言う。 「……私、アリルじゃないよ……?」 「判ってるよ」 ロードはゆっくり立ち上がる。 「ま、こんな結果になっちまったし、傍にいるのは無理だし願い叶える意味もねぇけど、たまには会いにいってやるよ。いいな?」 りらの額を拳で軽く小突く。 「うんっ」 りらは笑顔で頷いた。 天帝はまだ玉座にいた。 その前には、ロードとりらを写す映像が切り取られたかのように小さく浮かんでいる。 「良いのですか?」 傍らのグラナディエルが聞く。 「良くはないな。記憶に封をしたところで、アリルの記憶のように思い出すとも限らない……完全ではなくとも、目障りだ。ロードの事を知る者はいらない」 「は」 天帝の言葉にグラナディエルは頷き、軽く頭を下げ姿を消した。 「天帝サマ……」 不安そうに小さい声でエニィが声を出す。 「うん?」 「本当に……やるのでスか? 天帝サマ、今と違うお姿になられルの、私、チョットさびしいでス」 天帝は手を伸ばし、エニィの髪を撫でる。 「すぐに慣れるよ。地界で生きていたロードを知るものは天界にはいないだろう、入れ替わったところで気付くものもいないだろう……私が天帝であり続けるために必要なんだ。判っておくれ」 だだをこねる子どもに言い聞かせるように言う。 エニィはそれ以上、何も言うことはできなかった。 彼女には翼がなかった。 天使でありながら。 神の御使いとなることもできず、それでも、生きていた。ただ、生きていた。 「言葉を教えられることもなく、着るものも与えられず捨てられていたようです」 「やれやれ……目が届かないところでは、こういうことが平然と行われているんだから……表面だけの平和を保つのがやっとといったところか」 それは彼女が声を声と認識さいた最初だったのかもしれない。 「エル、ただでさえ忙しいところ悪いが、面倒見れるかな?」 「主の命とあらば、我が命に換えましても」 「それは大げさすぎるだろう。お前も一緒にもう少しくだけた言葉勉強したらどうだ?」 「……考えておきます」 笑う声がした。 自分を嘲る笑いではない笑い声。 そのときの気持ちを、彼女は言葉を覚えていくことで知った。 あたたかい。 そのときの事を思い出すたびに、彼女は彼への忠誠を密かに誓っていた。 1 / 5 | NEXT
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