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1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 あとがき 「冥王、遅ぇな。あいつなら、迎えに来るまで時間いらないと思ったんだが」 ロードは辺りを伺うように遠くを見る。 「私の体預かってくれてるんでしょ? 離れていいか悩んでるとか?」 「結界だって張れるやつが、それはない」 だろう、と言いかけ、りらの方を見たロードの顔が強張った。 りらの左胸が赤く染まっていた。 鋭利な刃が、貫いている。 声が漏れぬように口を抑えていたのは─── 「てめぇ! 腰巾着っ」 向かっていこうとしたロードに、りらの体を投げるように放し、ぶつける。 「りら!」 「……作りものだから、痛みは……ないみたい、苦しい、けど……」 (血も出てて、痛みないけど苦しいって、変なの) そんなことを思ったせいか、しまりのない笑いが浮かぶ。 「あっちも判ってるだろ。魂の破損……消滅させんのが目的だろうが、これっ」 りらとは逆に、深刻な顔でロードが言う。 血は破損の度合いを示す目印なのだろう。白い衣服にじわじわと広がってゆく。 「ご心配なく。貴方も共に消してさしあげますよ」 「っだと……」 「欲しかったのは貴方が天帝につくという言葉と、その身体。魂はいらない」 手にした剣の刃が光る。 「はじめっから、そういうつもりだったな? あんのクソ親父っ」 グラナディエルが剣を構え向かって来る。 「っざけんなっ」 ロードの片腕の先が光り、剣を受け止める。 「ロード、りらを! 魂を修復する」 二人の背後に冥王が現れ、声をかかける。 「させるか!」 グラナディエルは剣を構えなおし、振り下ろす。 「うっぜぇ! 冥王、受けとれよ!」 言うと同時にりらの体を後ろに引くようにして、手から放す。 力の抜けたりらの体は、勢い良く冥王の体にぶつかるようにして、その腕におさまる。 「っ! 怪我人ってこと考えろっ」 乱暴な渡し方に冥王は思わずロードに怒鳴る。 「片手が塞がってんだ、しょうがないだろ! 親父に気に入られてるだけあって、こいつ強ぇんだよっ」 小さな光は結界か、小さな盾となって刃を受け止めている。 「ったく……こっちはいないと思っていいぞ。全力でいけ」 「言われなくとも」 ふわと空気が歪むように、ロードの周りが歪んだ。 一瞬のその後、ロードがいた場所に、やわらかそうな長い髪をした青年がいた。 「姿を変えたところで、私に勝てると?」 剣を押し当てながらグラナディエルが言う。 「地界で神族級だと目立っていらないケンカ売られまくるしうざったかったもんでな、普段は自ら抑えてんだよ」 「というか、その喧嘩全部勝って、誰も喧嘩売ってくれなくなってつまらないからじゃなかったかな?」 りらの傷口に手をかざし、二人のやりとりを聞いていた冥王がぽそりと呟く。 「茶々いれんなっ! ってか、それもアリルからかっ」 (緊張感ないなぁ) 苦しさの中、聞こえる会話にりらは苦笑する。 (でも、ほんと、ちょっと……これ、つらい、かも。死んだ方がマシっていうか、楽かも) 『そうね、その方が楽かもしれない』 (!?) 自分の思考に応えた声にギクリとする。 『そうすれば、あなたが私に重ねて見られることも、私があなたの中で目覚めに怯えることもない』 苦しさに意識が遠くなっているのか、夢で見る時のようにアリルがそこにいた。 (……怯え……? アリル? 怖いってこと? 何が怖いの?) 『私は冥王の気持ちを知りながら、ロードに惹かれた……ロードと結ばれたくて転生を選んだ……逃げるようにして』 (それが辛い?) 『結局、天使長の言葉に簡単にだまされて、ばかなことをしただけ……そしてロードをこんな目にあわせてる』 (楽しそうだしいいんじゃない? っていうか、私に謝ってよね。ロードなんて怪我してないじゃない、苦しいのは私っ) アリルの表情が驚きを浮かべる。 (大体、私のは気持ちどうのじゃなくて、体感で苦しいのっ。あんたの思考にほいほい釣られて死ぬつもりなんかないわよ、喩えってもん知らないのっ) クスとアリルが笑う。 『りらって、面白い』 (昔の自分が言う?) 『ロードが、判ってるって言ったのが判るわね。本当に違う……』 (戻るわよ。で、私達、幸せになるのよ) 『強いのね』 (おかげさまで) それは、繰り返したくないから。 ばかな過去も。 親のような別れも。 (殆ど覚えてなくたって、あんたがいたから、私がいるんでしょ) その思考にアリルは応えない。 「──ら?」 (呼んでるのは先輩の声……? あ、冥王だっけか) 「大丈夫か?」 ゆっくりと目を開いた先に、冥王の顔が入ってきた。 「まだ少し苦しいかもしれないが、呼吸も落ち着いたようだし、あと少しだから」 「ありがとうございます」 抱きかかえられているのが判って、りらは照れ笑いを浮かべる。 「こう見えて魂の管理者だからね。消滅させられる前で良かったよ」 「……名前、なんでしたっけ」 「え?」 りらの質問の意図がわからず冥王は困惑の色を浮かべる。 「いや、思い出せた限りでもアリルって冥王とか冥王様としか呼んでない気がしたから……自分も先輩のこと先輩としか呼んでないから、どっちの名前でもいいんですけど、知っておきたいなぁって」 「あぁ、人間の方は考えてなかったからなぁ。ソヴァーリンって言うんだけど」 「……先輩のが言いやすい」 りらの言葉に、あははと冥王は笑う。 「構わないよ。言いやすい方で」 「すみません」 りらが喋れるほどに回復したのを目にしたグラナディエルは、チと小さく舌打ちした。 「よそ見してる暇なんざ、ねえだろ!」 ロードの拳がその頬をとらえ、グラナディエルの体が傾ぐ。 「……原始的な戦い方……ですね。もっと魔法戦みたいなもの想像してたけど」 ロードとグラナディエルの戦いは拳と剣で、時折小さな光の盾が見えるものの、基本は殴り合いに近かった。 「力使うと制御が面倒みたいでね。まー、神様が暴れたら普通に地上にも影響出るよね……普通は。そういうのも面倒みたいだね」 「ロードらしいというか……」 りらと冥王が見守る中、グラナディエルの体が大きく揺れ、地に伏した。 「うっしゃぁぁぁ! 次はクソ親父だっ」 パンとン握りこぶしを掌に打ち付け、ロードは遠くにある神殿を見据えた。 と思うと、その姿はフと視界から消えた。 「いないと思えとは言ったけど、最後の最後にこっち忘れたね。あれは」 冥王は苦笑する。 「ハイテンションっていうか……キレて、る?」 治癒が終わり冥王に支えられるように座っていたりらは、ゆっくりと立ち上がる。 まだふらつくのを察した冥王は添うようにして支える。 「自分を殺そうとした首謀者が父親ではね。神族では珍しいことではないけれど、気持ちいいものでもないだろうから」 「天帝、優しそうな人に見えたのにな……」 「彼には彼の考えがあるのだろうけれど、やはり本人の口から聞かないとなんとも言えないね」 「って、あれ? 先輩、ロードの魂いらないとか……話してた時からいましたっけ?」 苦しさのあまり記憶がおかしくなったのか? と、りらは首を傾げる。 「いや、別口で聞いた。それで少し遅れたんだ、ごめんね」 冥王はにっこりと微笑む。 「じゃ、こっちも行くよ」 「え、あ、は」 い、と続く頃には二人の姿も消えていた。 |
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