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1 2 3 4 5 あとがき 「願いを言え」 いつもの帰り道。 駅から徒歩で、駅からそう離れてはいないが人影もまばらになりだす通り。 りらの前に立ちはだかってそう言い放つ青年がいた。 (何、この人……) 自分より頭ふたつみっつぐらい高いだろうか、長身で細身。淡い金の髪と青い目。デザインスーツ姿で一見モデルのようでもあるが広告などで見た記憶はない。 何よりそんな知り合いはいない。 りらは自分の背後に誰かいるのかと、後ろを確認する。 「おまだ、おまえ。荒井りら」 「え」 (なんで) 名前を知っていることに怪訝な目を向ける。 「ちょっとした賭けをしててな。お前の願いを叶えないと俺はなりたいものになれな」 「しゅ、宗教勧誘なら興味ないから! じゃ!」 話しを遮り、言うが早いかりらは駆け出していた。 「ちょっ……待て! こらーっ!」 りらの素早い行動に出遅れた青年はその背に声をかけるのが精一杯だった。 「バカか。あいつは」 建物の影でその様子を見ていた男は、壁に寄りかかりそう呟く。 「でも、どーしテ天帝サマまで人界に来るんですカ?」 青年と男が対峙していた時には見かけなかった、金髪の巻き毛の少女はカタコトなクセをもった言葉で彼に問う。 「それはねエニィ、バカと天才はなんとやら。万が一アイツが魂を手にいれた時、いや、いれそうになった時のためだよ」 「つまり、ロード様の邪魔をするつもりデ、トいうコトですネ?」 「……エニィ、お前のその遠慮のない物言い好きだよ」 「ハイ。私も天帝サマ大好きでス」 嫌味のつもりが、いかにも通じてませんといわんばかりに笑顔を湛えてエニィと呼ばれた少女は言う。 「本当に……そのまっすぐで物怖じしないところなどは似ているな……」 「ハイ?」 「ロードの母親だ。好きな男がいたのに、無理やり妻にして思いっきり嫌われていたがな」 男は自分を静かに嘲笑する。 「流石でス。似たもの親子ですネ」 「どういうイミかな」 「天帝サマもおばかでス」 エニィはそう言って、再びにっこり微笑んだ。 どさ。 ソファーに荒々しく学生カバンが放り出された。 「つっかれたー」 荒い息を整えながら、りらもカバンの横にどっかと腰をおろす。 さすがに駅から家までの距離をひたすら走れはしなかったが、時折歩くその間もついてきているのではないかと、ゆっくりはできなかった。 (ヘンなヤツにあったから、いつもの疲れ以上よね。顔はよかったけど……) ふー。 と、ダイブ楽になった息を吐いて天井を見上げる。 「人が説明しようとした矢先に逃げやがって! 手間とらすんじゃねぇよ!」 さっき見たばかりの顔が逆さになって視界に入ってきた。 「…………」 何をどう言っていいのか、驚きのあまりに真っ白になったりらは、言葉にならない言葉を発し口をぱくぱくさせる。 「まぁ、他に人がいないみたいだからゆっくり言えそうだがな。俺の名はロード。あんたと契約し願いを叶え、魂をもらうのが目的だ。そうすれば俺は悪魔になれる」 「い……やぁぁぁ!」 ようやく発することが出来た声と、手が動いたのが同時だった。 青年の顎を手のひらで弾き、りらは座っていたソファーを離れ、反対側のソファーの後ろに回りこむ。 「ドロボー! ゴートー! チカン! ヘンタイ!!」 思いつく単語を並べ叫ぶ。 「あのなぁ……」 「うちにはお金なんてないわよ! 父さんは3年前の離婚で出てったし! お母さんは男のとこ入りびたりで必要最低限の仕送り生活費でのアパート生活だし、暮らしぶりみてればわかるでしょ!」 「……そいつはお気の毒に」 りらの並べた言葉に、青年は思わずそう言うしかなかった。 「お気遣いいたみいります」 りらもそういった反応になれているのか頭をさげて返す。 「っじゃねぇ! 大体、泥棒でも強盗でも痴漢でも変態でもねぇっ!」 「じゃぁ、何なのよ……」 危険ではないと判断したらしく、りらは聞き返す。 「言ってるだろうが『願い』を言え」 「なんで……?」 とはいえ警戒を解くまでには至らず、ソファーの後ろからきょとんとしてりらは言う。 「……きちっと説明するから、よぉぉぉっく聞けよ」 対する青年はそろそろガマンの限界なのか、握りこぶしをかすかにふるわせていた。 |
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