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1 2 3 4 5 あとがき 「つまり神様なの? あんた」 りらは未だにソファの後ろで警戒態勢をとりながらも青年に問う。 「……まぁ、そうなるな。悔しいが天帝として神格も最高位の親父には敵わないから、こんな賭けにのったが……お前の願いを叶えてとっとと目を宿した魂を持って帰ればそれで済むしな」 「天帝の目ねぇ……」 りらは夢の中で一瞬だけ見た光を思い出す。 (あれ、なのかな) 「でも、それってあんた達の賭けに巻き込まれたわけで……それで魂とられるってのもなぁ……」 「いいだろ。願いは叶うんだ」 青年はさらりと言う。 「断るのは?」 「却下」 試しに言ってみた言葉に対して青年はきっぱりと言い放つ。 「他の人にゆずる」 「却下」 「願いを叶えなくていいって願いとか」 「却下」 りらとの不毛な言葉のやりとりに、青年は溜息をつく。 「あのなぁ、魂かかってんだぜ? テキトーな願いじゃ契約成立しねぇの。まぁ、低俗低級な悪魔ならむりやりこじつけて契約書にサインさせて少しでも力つけようとするかもしんねーけど。力がついたり、あったりしてそれなりになると言葉での強制力のが優先される……て、聞いてるか?」 「聞いててもわかんないけど、つまりいい加減じゃダメ、と?」 うーん、と人差し指を顎にあてながら、りらはなんとか自分が判った範囲で答える。 「そういうことだ。あるだろう? 魂をかけてでも叶えたい願い」 りらは再び、わずかな間だが沈黙する。 「あるけど」 重そうに口を開き呟く。 「具体的に言えないものを叶えられるかどーか……」 「は? それは俺の力を疑ってるってことか?」 険しい顔になり前のめり気味にソファに近づいてこようとした青年を見て、りらは慌てて否定する。 「そうじゃなくて! 幸せになりたいってのがあるけど、どうしたら幸せになれるかって、あんたに判る? 本人わからないのに」 青年が再生中の動画停止を押したようにピタリと止まる。 「だから、保留にしといてくんない?」 動きを止めた青年に安堵の息を吐きつつ、りらは続ける。 「あんたの話しじゃ、あと1年あるんでしょ? だったらそのうち願いは他に出てくるかもしれないし」 「……面倒だな」 「他にどうしろってのよっ。あんたが、あいまいな今の願いでもカンッペキに叶えられる自信あるならともかくっ」 りらはムっと唇をとがらせ言う。 「はいはい、判った。一年内にってことにしてやろう……じゃ、これからよろしくな」 そう言って、りらが盾にしているソファと反対側のソファに青年は座り込んだ。 「は?」 それは、りらの想定していない行動。 (これから、て) 「まさか、ここに1年居座るつもり!?」 「それが嫌なら、それなりな願いをさっさと決めるんだな。ま、必要最小限てことで周辺の記憶操作とかするけど、力使ったウチに入れねぇから」 「……」 りらは唖然と目の前の青年を見る。 (ま……負けるかっ) まるで自分の家かのように悠々としている青年に、ワケのわからない対抗心がそう呟く。 「そりゃ、どぉもっ」 ひきつった笑いを浮かべ、りらは言う。 「おまえ、反応面白いなー。もうこの状況に慣れてきだしてるだろ?」 ひざを台にして頬杖をついていた青年だったが、彼にはりらの反応も想定外だったのか驚いた表情で言う。 「ほめ言葉としてとっとくわっ」 りらはひきつったままの顔で応える。 慣れてきたというより、どうこうしたくても出来ない状況があるというのをりらは知っているだけだった。 人間規格外、神だという青年に常識は通じないだろう。 現れ方からして、何の力ももたない自分が追い出すことなどためすまでもなく不可能だ。 消去法で考えていくと、結局出来ることなど何もないだけなのだ。 りらは、はーっと深い溜息をついた。 りらの住まいである一室があるアパートの屋根の上に、ふたつの影があった。 けれど、それは人の目にとまることはない影。 「天帝サマ、どうされまス?」 金髪の巻き毛を風に揺らしエニィは隣に立つ男に問う。 「そうだな。天界じゃ大した時間じゃないとはいえ……留守にすると天使長とかウルサイしな。一旦戻るか」 つまらなそうに男は空を見上げる。 「はいっ。助かりまス。実は天使長サマから、天帝サマがもし戻らないトおっしゃったら、泣きマネをしてデモ連れて帰って来いト言われてましたのデ」 元気よく返事をしたエニィはにっこり笑って言う。 「ほう。天使長が」 心配性なのか口うるさい者の筆頭である存在を思い出し、そんなことをエニィに吹き込んだのかと苦笑する。 「帰るぞ、エニィ」 「はい」 エニィの明るい返事が終わるか終わらないかのうちに二人の姿は消えた。 空には帰るという言葉が合うような、濃い色が広がっていた。 |
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