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[ 小説/オカルト]2007年08月01日
1 2 3 4 5 あとがき

 ロードとりらが出会い数日が過ぎていた。
 りらにとって奇妙な同居人となったロードだが、生活に支障をきたすようなこともなく時間も奇妙に過ぎていた。
 だが今日はいつもと違っていた。学校に行く支度を終え、部屋を出たりらは一瞬、動きを止める。
「……なんでウチのガッコの制服着てるわけ」
 じっと見た後、間違いないと脳が理解し、やっと言葉となる。
「毎日どこ行ってるのかなぁと思ったから。楽しいのかなぁって」
「……」
 どう応えたものかと、りらは黙する。
「それと、願い把握するなら似たような環境にいた方が判りやすいかなと」
「……いいけど。問題おこさないでよ」
 ここ数日で、彼自身がフシギな存在なのは実感していた。
 一緒に出かけようが、誰も彼を気にしはしない。見えていないわけではなく、あたかも昔からいるかのように誰一人疑問を抱かない。
 従兄弟という設定にしてはあるようだが、それがどう他人に刷り込まれているかまで、りらは知らない。
「ヒトを歩く厄介ごとみたいに言うなよ」
「少なくとも、私にとっては厄介事よ」
 通用するかわからないが、トゲを含ませりらは言う。
「そりゃぁ悪ぅございました」
 大したダメージはやはりなく、さらりとロードは言う。
「ついて来ないでよ。仲良く登校なんてヤだからねっ」
 素早く靴を履き、りらは玄関をくぐる。
「へーい」
 しょうがないといわんばかりにロードは返事をした。



 りらは顔をひきつらせていた。
 ざわめく教室。ホームルームのその時間。
 先生の隣に立つ、かの人物を見て。
「はい、静かに。転入生のロード・ランダム君だ。ウチの荒井と遠縁で、日本語もペラペラだぞ。皆安心したか?」
(まぁね、来るって以上、そうなるだろうって思いもあったけどね)
 ランダムなどという以下にもテキトーな名前もまた、苦笑を誘う。
(遠縁に神様なんか、いないっつーの)
 涼しげな顔をして立つ、金髪碧眼の青年。
 そこに神様がいるなどと、誰も思いもしないだろう。
 教室は転入生への好奇心によるざわめきだけが満たしていた。



「珍しいよね」
 休憩時間、りらの前に一人の女生徒が立つ。
「ん?」
「フツウ、転校生のとこって人だかりできるじゃん。日本語もペラペラなら敬遠する理由もないしさ」
 そういう彼女もロードの前ではなくりらの前に来ている。
(そういうトコ疑問に思ってないあたり、なんかした可能性が高そうだなぁ……)
 チラとロードを見ると、どこから手に入れたのか教科書に目を通している。
「恵留は? そういう恵留こそ声かけてみればいいじゃん」
「あぁ、私はりらアテにしてるから〜焦らなくてもいいかなって」
 ウィンクして、りらにイタズラっぽい表情を見せる。
「でも、私より、りらじゃない? 一緒に暮らしてるんでしょ? チャンスじゃない」
「何が」
「彼氏。いらないとはいわせないわよー」
「……欲しいとは思わない」
「もぉ! それで青春の何を謳歌するのよ! 恋せよ乙女でしょっ」
「……そんなの、したいひとがすればいいじゃない。大体……」
 言いかけて、りらは口をつぐむ。
(あ、悪魔になりたがってる神様なんて言えないーっ!)
 言ったところで、頭大丈夫? と言われるのが目に見えている。
「何よ?」
「私の好みじゃない」
 ごにょと歯切れ悪くりらは言う。
 顔は美形だ。性格は、語れるほど知らない。否定するには知らなさすぎるが、くっつけようと盛り上がられても困る。
 そう思った上での言葉。
「へー、じゃぁあんたの好みってどんなよ?」
 にやりと笑いながら恵留が顔を近づける。
「ほらほらっ。おねーさんに言いなさい」
「どうって、あんなじゃないくらいだけど」
 返答に困り、ロードを引き合いにだすしかなくなる。
「俺よりいい男なんてそうそういないだろ。程ほどにしとけよ」
 いつのまに居たのか、りらの背後に立っていたロードが言う。
「理想高すぎて幸せこねーんじゃねぇの? お前」
「余計なおせわっ! でも、あんただけは選ばないわねっ」
 りらがそう言い放った瞬間、ロードの表情が固まった。
「……何?」
 自分の言葉にそんなにショックを受けるほどのことがあったかと、りらはおずと聞く。
「いや……昔、似たような言葉、言われたなぁと思って」
「古傷? へぇ? ふられた?」
 にやにやしながら恵留が伺う。
「容赦なくえぐってくるとは、いい友人もってんなぁ」
 ロードはひきつった笑いをりらに向ける。
「まあね」
 別に自分の傷をえぐられてるわけではないので、さらりと受け流す。
 ただ意外だった事項に思考は向いている。
(神様でも古傷なんてあるんだ)
 知るつもりはないし知らなくていいと思っている。
 けれど、人間くさいそれは嫌が応にも親近感となる。
(……だから何だってワケでもないけど)
 りらは否定する。
 それを、否定する。

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Up— posted by 常盤巽 @ 02:09AM   Comment[0]  Trackback[0] 

 
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