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1 2 3 4 5 あとがき 「天帝になんかならねぇつってんだろ!」 その怒号は辺りの空気を震わせた。 石らしきものでできている建物は震えこそしなかったが、音を響かせる。 「困ったな。占神(せんしん)の予見では、息子の中ではお前が適任と出たのに」 金色の長い髪を持ち、どっしりとした椅子に座っている青年は口元に手をあてながらフムと考え込む。 目の前には大声をあげた青年。一見銀髪にも見える淡い金の髪の青年は、まるで罪人のように後ろ手に縛られ、体にも縄を巻かれていた。 「お前の母と同じく、かまってやれなかったことが、こうやって裏目に出てしまったか」 「ちがうっ。そりゃぁ確かに今更何様だとも思うがっ」 自分の意志など知ろうともしていないだろうことに苛立ちを募らせ、隠しもせずに彼は続ける。 「毎日毎日、座って他人の話に耳向けてんのは性に合わねぇ! 俺は悪魔になるんだよっ」 「ほぉ……面白い。流石、堕天した妻が産んだだけのことはある。だが、天帝という立場上、スンナリ認めてやるわけにもいかぬな」 男は自由を奪われている青年にニっと笑みを向ける。 「賭けをしようか」 「賭け?」 「悪魔といえば契約による取引……そうして報酬に魂をもらうことは天界でも公認している」 そう言いながら男は自分の右目に手をあてた。 「げ」 あまりにも唐突な行動に青年も思わず声を漏らす。 「そこで、これより我が目を人界に落とす。おまえはこの目を宿した者の魂を人界が時にして1年内に持ち帰って来い。それができれば、お前が悪魔となるのを認めてやろう」 「宿主とグルなんてこたぁねーだろうな」 「逆だよ。宿した者は宿したことさえ知らないだろう。私も選別するわけではない。後はお前の運次第だ」 「運、ね……」 「ただ、期限内に持ち帰れなかった時は判っているな?」 男の問いに青年は不敵な笑みを浮かべる。 「天帝になりゃいいんだな……やってやろうじゃねーかっ!」 青年の言葉は、再び辺りの空気を震わせた。 彼女は幸せな頃の夢を見ていた。 暖かい夢のなか、暖かい光があった。 (違う……落ちてくる? どこかに行く?) 『ごめんね、りら』 どんな調子だったか思い出せない。 ただ、文字だけしか思い出せない。 でも、その言葉は彼女の中にこびりついて離れない。 光はすぐに消えた。 それは、願ってもどうしようも出来ない願いのように見えた。 (わかってる) 大丈夫、わかってる。 夢だということを。 過去、自分が思っていたことも、判っていたことも。 二人が二人でいることに苦痛を感じていたことを知っていた。 それはとてもイヤな空気。 何が二人をそうさせていたのかまでは知らない。 でも、彼女から見た二人は努力すらしていなかった。 ソウヤッテ ズット ニゲテレバイイ 唐突に目がさめた。 彼女は自分が泣いているのを知った。 (何……泣いてるんだか) 彼女は夢で泣いた自分を嘲笑する。 (私は……逃げない) それは、その夢を見た後に必ずする決意。 (私は、幸せになるんだから……) カーテンごしの光で明るくなった部屋の中、彼女はパジャマの袖で涙を拭いた。 その夢は、両親が別れた時の記憶。 1 / 6 | NEXT
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