「どうかされましたか?」
憔悴した様子で座り込んでいた少年に、エリンは声を掛けた。
「妹が居なくなったんだ」
初対面のエリンに、そうとだけ言って俯いて黙り込んだ。
その様子から、エリンはかなりの異常性を汲み取った。
「人探しなら、私の主人に頼むと良いですよ」
少年が、そう言ったエリンを不思議そうな顔をして見た。
エリンが確信に満ちた満面の笑みをして、少年を誘うように立ったまま見下ろしていた。
「ただいま戻りました」
そう言って戻ったエリンの背後に、少年が僅かな不信感を表情に表しながら付いて来ていた。
ナフィルはそれを認めながらも、
「さっきまた犠牲者が見つかったそうよ。これで3人目よ」
と苦々しげに言い捨てた。
「そうですか」
後ろを気遣う様子を見せながら、エリンも表情を曇らせた。
「で、そちらは?」
ナフィルが表情を崩すことなく、そう問うた。
「あ、はい、先ほど市場の入り口のところで出会いまして、妹さんが居なくなったそうで探しておられたのでお連れしました」
少年はそれだけで話が通じるのかと不安そうな顔をする。
しかし、
「そう。なら中で話を聞くわ」
と言って、ナフィルはその理由をあらためることもなく、思いのほかすんなりと話が通じた。
「そちらで座ってお待ちくださいね。今お茶を入れてきますから」
「ああ、エリン、私は薬湯ね」
炊事場に消えるエリンの背後に、ナフィルはそう横柄に言って先にテーブルに着く。
その風貌はエリンと差ほど変わりない年齢に見えるが、奇妙な威厳を漂わせるローブを着て、エリンの言う主人がこの少女であることを知って少年を戸惑わせた。
「座りなさい」
エリンとは違って配慮の無いそっけない言い方をして、向かいに座るように促す。
「はい」
少年は返事はしたものの、それはおびえた様に小さなものだった。
「いつから居ないの?」
単刀直入に、ナフィルはそう聞いた。
「昨日の朝から、です」
そう答えながらも、自分の不安が解消するようには思われない期待の外れた態が見て取れる。
「じゃ、違うわね」
ナフィルはしかしそれで何かに確信を持つと、小さく息を吐いた。
「では、まだ無事なんですね?」
エリンが盆に3人分のカップを載せて現れると、先ほどまでは見せなかった真剣な面持ちで、ナフィルに聞いた。
「多分ね。と言うより、まだ連れ去られたと決まったわけでもないし」
ナフィルはそう言うと、受け取ったカップを一飲みで飲み干して立ち上がった。
「その妹の名前は?」
「レイスです」
そう問うて、その名を刻み込むように噛み含めると、
「エリン、後は頼んだわよ。私は追跡結果を見てくるわ」
と言って、奥の部屋へと姿を消した。
「分かりました」
少年の表情はますます混迷の中に迷い込んだように晴れない。
それを見てエリンは、
「大丈夫ですよ。これからナフィル様が探してくれます。それで、そのレイスさんの使っていた品物が何かありませんか?」
と再び微笑んでそう言ったが、少年はそれでエリンの言葉に理解を示すことは無かった。
「えっと、たぶん髪留めなら家にあるかも・・・」
少年の言葉に、
「では、それを預からせてください。それを手掛かりにすぐ見つけ出します。出来れば急いで持ってきて下さい。それだけ早く不安が解消されますから」
エリンはそう自信満々な言い方をした。
それで安心をすることは無かったが、少年はエリンの言葉に従うことにした。
すがりたくなる抱擁力が、エリンの微笑みにはあった。
セレスタという小さな都市が、魔術師の実験場跡に造られた街であると知ったナフィルが訪れたのは4日前の事。
その事実は既に知られていて、文献を調べたナフィルもそれほどの期待をして来たわけではなかった。
事前の調査は、大抵は傭兵などを雇うなどしてナフィルが一人で訪れるのだが、今回はエリンを伴って、装備もさほど持たずにやってきた。
迂闊だった、と言う事は今更言うまでも無い。
街に入った途端、結界が発動した。
それは明らかにナフィルに対するものだった。
しかし、魔術師が居るはずは無い。
その魔術師は、人間によって捕らえられて殺されていた。
それが偽装では無いとは言い切れないが、ナフィルは恐らく魔術師は居ない事を確信していた。
この結界が、遺跡の稼動と防御を行う意図によってもたらされている事がすぐに分かったからだ。
それが、あの人工生命体だ。
結界自体は直接人間には作用しない。
また、現状はナフィルに制約を科すとは言え、実害はない。
問題は、あの管理者精霊に似た存在が、その礎にするための肉体を得るために、人間を襲っていると言う事だ。
そして、この4日間で数人の女性が行方不明となり、そのうちの3人が遺体で見つかっていた。
その様子から、ただ人を襲っているのではないと推測された。
「礎には条件が必要なのよ。恐らく、魔力干渉力か魔力への順応への適性がいるのね」
遺体の一つに接する事が出来たナフィルは、それが急激な魔力中毒によるショック死であることを察して警戒していた。
肉体を得ればすぐにでも現れるはずだ。
しかし今の世界では、その適性を得るのは簡単ではない。
しかも、1日で1体程度を支配下に置くことしか出来ないようで、それに耐え切れずに死んだ肉体を捨て、次々と礎を探しているのだろう。
エリンの感は当たっていた。
追跡していたナフィルの使い魔は、そのセレスタの管理者精霊の居場所をある程度突き止め、少年から預かった髪留めの霊視によって、まだ生存している事が分かったのだ。
ただ、ナフィルは予断を許さない。
時間的にみて、今生存が確認できた事は、裏を返せば礎として認められた可能性があった。
「もちろん、すぐ使い魔で襲わせたわ。逃げられたけど、あの様子ではまだ完全に支配していない。このまま放置して来るのを待つわけにはいかないわ。こちらから追い詰めるわよ」
ナフィルはそう言うと、いくつかの装備をエリンに渡した。
エリンはそれらの支援魔法具を使用して、ナフィルの魔術支援者として同行する事になった。
設定だけあったのを、気晴らしに適当にでっち上げたもの。
いつか書きたい。
そんな感じ。
憔悴した様子で座り込んでいた少年に、エリンは声を掛けた。
「妹が居なくなったんだ」
初対面のエリンに、そうとだけ言って俯いて黙り込んだ。
その様子から、エリンはかなりの異常性を汲み取った。
「人探しなら、私の主人に頼むと良いですよ」
少年が、そう言ったエリンを不思議そうな顔をして見た。
エリンが確信に満ちた満面の笑みをして、少年を誘うように立ったまま見下ろしていた。
「ただいま戻りました」
そう言って戻ったエリンの背後に、少年が僅かな不信感を表情に表しながら付いて来ていた。
ナフィルはそれを認めながらも、
「さっきまた犠牲者が見つかったそうよ。これで3人目よ」
と苦々しげに言い捨てた。
「そうですか」
後ろを気遣う様子を見せながら、エリンも表情を曇らせた。
「で、そちらは?」
ナフィルが表情を崩すことなく、そう問うた。
「あ、はい、先ほど市場の入り口のところで出会いまして、妹さんが居なくなったそうで探しておられたのでお連れしました」
少年はそれだけで話が通じるのかと不安そうな顔をする。
しかし、
「そう。なら中で話を聞くわ」
と言って、ナフィルはその理由をあらためることもなく、思いのほかすんなりと話が通じた。
「そちらで座ってお待ちくださいね。今お茶を入れてきますから」
「ああ、エリン、私は薬湯ね」
炊事場に消えるエリンの背後に、ナフィルはそう横柄に言って先にテーブルに着く。
その風貌はエリンと差ほど変わりない年齢に見えるが、奇妙な威厳を漂わせるローブを着て、エリンの言う主人がこの少女であることを知って少年を戸惑わせた。
「座りなさい」
エリンとは違って配慮の無いそっけない言い方をして、向かいに座るように促す。
「はい」
少年は返事はしたものの、それはおびえた様に小さなものだった。
「いつから居ないの?」
単刀直入に、ナフィルはそう聞いた。
「昨日の朝から、です」
そう答えながらも、自分の不安が解消するようには思われない期待の外れた態が見て取れる。
「じゃ、違うわね」
ナフィルはしかしそれで何かに確信を持つと、小さく息を吐いた。
「では、まだ無事なんですね?」
エリンが盆に3人分のカップを載せて現れると、先ほどまでは見せなかった真剣な面持ちで、ナフィルに聞いた。
「多分ね。と言うより、まだ連れ去られたと決まったわけでもないし」
ナフィルはそう言うと、受け取ったカップを一飲みで飲み干して立ち上がった。
「その妹の名前は?」
「レイスです」
そう問うて、その名を刻み込むように噛み含めると、
「エリン、後は頼んだわよ。私は追跡結果を見てくるわ」
と言って、奥の部屋へと姿を消した。
「分かりました」
少年の表情はますます混迷の中に迷い込んだように晴れない。
それを見てエリンは、
「大丈夫ですよ。これからナフィル様が探してくれます。それで、そのレイスさんの使っていた品物が何かありませんか?」
と再び微笑んでそう言ったが、少年はそれでエリンの言葉に理解を示すことは無かった。
「えっと、たぶん髪留めなら家にあるかも・・・」
少年の言葉に、
「では、それを預からせてください。それを手掛かりにすぐ見つけ出します。出来れば急いで持ってきて下さい。それだけ早く不安が解消されますから」
エリンはそう自信満々な言い方をした。
それで安心をすることは無かったが、少年はエリンの言葉に従うことにした。
すがりたくなる抱擁力が、エリンの微笑みにはあった。
セレスタという小さな都市が、魔術師の実験場跡に造られた街であると知ったナフィルが訪れたのは4日前の事。
その事実は既に知られていて、文献を調べたナフィルもそれほどの期待をして来たわけではなかった。
事前の調査は、大抵は傭兵などを雇うなどしてナフィルが一人で訪れるのだが、今回はエリンを伴って、装備もさほど持たずにやってきた。
迂闊だった、と言う事は今更言うまでも無い。
街に入った途端、結界が発動した。
それは明らかにナフィルに対するものだった。
しかし、魔術師が居るはずは無い。
その魔術師は、人間によって捕らえられて殺されていた。
それが偽装では無いとは言い切れないが、ナフィルは恐らく魔術師は居ない事を確信していた。
この結界が、遺跡の稼動と防御を行う意図によってもたらされている事がすぐに分かったからだ。
それが、あの人工生命体だ。
結界自体は直接人間には作用しない。
また、現状はナフィルに制約を科すとは言え、実害はない。
問題は、あの管理者精霊に似た存在が、その礎にするための肉体を得るために、人間を襲っていると言う事だ。
そして、この4日間で数人の女性が行方不明となり、そのうちの3人が遺体で見つかっていた。
その様子から、ただ人を襲っているのではないと推測された。
「礎には条件が必要なのよ。恐らく、魔力干渉力か魔力への順応への適性がいるのね」
遺体の一つに接する事が出来たナフィルは、それが急激な魔力中毒によるショック死であることを察して警戒していた。
肉体を得ればすぐにでも現れるはずだ。
しかし今の世界では、その適性を得るのは簡単ではない。
しかも、1日で1体程度を支配下に置くことしか出来ないようで、それに耐え切れずに死んだ肉体を捨て、次々と礎を探しているのだろう。
エリンの感は当たっていた。
追跡していたナフィルの使い魔は、そのセレスタの管理者精霊の居場所をある程度突き止め、少年から預かった髪留めの霊視によって、まだ生存している事が分かったのだ。
ただ、ナフィルは予断を許さない。
時間的にみて、今生存が確認できた事は、裏を返せば礎として認められた可能性があった。
「もちろん、すぐ使い魔で襲わせたわ。逃げられたけど、あの様子ではまだ完全に支配していない。このまま放置して来るのを待つわけにはいかないわ。こちらから追い詰めるわよ」
ナフィルはそう言うと、いくつかの装備をエリンに渡した。
エリンはそれらの支援魔法具を使用して、ナフィルの魔術支援者として同行する事になった。
設定だけあったのを、気晴らしに適当にでっち上げたもの。
いつか書きたい。
そんな感じ。
[ 作品]

[ 0 ]
[ 0 ]







