2008年11月15日 @ 10:16AM
 それはあたしにとって、目標の一つ。
 持てる技術と経験の全てを、あの人は惜しむこと無く託してくれて。その気持ちに、思いに応えるべく、あたしは今も訓練を怠らない。
 集束系魔法の集大成。
 高町なのは教導官の切り札。
 星の輝き、スターライト・ブレイカー。
 勿論、凡人のあたしがすぐに会得できる魔法ではないし、なのはさんみたいに扱え無いことも解ってはいる。だけど、それでも……。

「スターライト・ブレイカァ――――!!」
 ミッドチルダの空に、あたしの叫びが木霊する。
 クロスミラージュから撃ち出された魔力は集束すること無く、拡散し、散っていく。
 ――まだまだ、か。
 正直、なのはさんの魔法であるスターライトブレイカーの名を借りて撃つのは気が引けるのだが、他に良い魔法名が浮かばないのだから仕方無い。それに、まだまだ自分のスターライトブレイカーはなのはさんの模写でしかない。
 威力もそこそこ、集束なんて持っての外だ。今のように、どうしても集めた魔力は集束せず、好き勝手に拡散してしまう。
「何が、足りないんだろう」
 ぼやくのはダメだと頭では理解っているのだが、どうしても口から突いて出てしまう。ヴァイスさんが聞いたら何か色々言ってきそうではあるが。
 あたしはもう一度クロスミラージュを構える。集束系の魔法は術者のみならず、デバイス自身にもかなりの負担を与えてしまう。なのはさんとレイジングハートでさえ、J・S事件ではかなりの深手を負った。
 だから少し心配になり、クロスミラージュに訊ねてみた。
「少し……休もうか?」
 すると、クラスミラージュの丸い宝石部分が力強く輝いた。
『いえ、まだやれます。続けましょう、マスター』
「解ったわ」
 流石は頼りになるあたしのパートナーだと思った。執務官になり、モード三を解除してからも変わらずに一緒にいてくれる。
 あたしはもう一度クロスミラージュを構える。
 集中しろ。
 周りの微量な魔力を感じ取れ。
 イメージしろ。
 魔力が一点に、一箇所に集まる様を。
 恐れるな。
 信じろ。
 自分と、自分を信じてくれるパートナーを。
「全力! 全開!!」
 足を大きく広げ、虚空の空に向かって、あたしは力の限り叫んで引き金を引いた。
「スタァーライトォォ……ブレイカァァ―――――!!!」

 ◆ ◆ ◆

 どさっとあたしは部屋のベッドにうつ伏せに倒れこむ。結局あの後、スターライトブレイカーを連発した反動で体中が痛い。一度も成功しなかったのも痛い。ベッドの下布団に左頬を付けながら、あたしは考え続ける。
 何がいけないのだろう。
 どこが違うのだろう。
 あたしは、なのはさんのようにはなれないのだろうか。
 執務官の仕事にしてもそうだ。
 あたしは、フェイトさんのように上手くやれていない。
「って、ダメダメ。何ネガティブになってるのよあたし!」
 いけない。つい悪い癖が始まる所だった。この癖の所為で執務官試験に何度落ちたと思っているんだ。しっかりしろ、ティアナ・ランスター。
 その時、管理局から通信が入った。あたしはベッドから起き上がり、通信に出る。
「あ、ティアナ? 元気にしてた?」
「へっ?」
 そこにいたのはフェイトさんだった。あたしは突然のことだったので思わず素っ頓狂な声を上げてしまう。てか、どうして貴女が?
「ふふっ、驚いたかな? 丁度仕事が一段落ついたからちょっと後輩の顔でも……と思ってね。何か悩んでいるみたいだし」
「……はい」
 誤魔化す必要は無いと思い、正直に頷いた。だって今のあたしの顔は「悩んでます」って顔をしているだろうから。フェイトさんは「やっぱり」とちょっとだけ苦笑する。
「どんな悩みかな? 私でよければ相談に乗るけど」
「実は……」
 そしてあたしはこれまでのことを打ち明けた。
 なのはさんに教えられた魔法、集束系がどうしても上手く出来無いこと。
 フェイトさんのように、執務官の仕事も上手く出来ていないこと。
 気づけばまるで愚痴のように、あたしはフェイトさんに全てをぶちまけていた。
 それでも彼女は厭な顔一つすることなく、真剣な顔であたしの話を聞いてくれる。
 そしてひとしきり言い終わった後、フェイトさんが口を開いた。
「そっか。ティアナも私と同じように悩んでいたんだね」
「ふぇ、フェイトさんが?」
「どうして驚くのかな。私だって悩む時ぐらいあるよ」
 困ったような顔をされても。けど、確かにそうだろう。フェイトさんだって人間だ。悩む時もある。ただ、中々想像し辛いだけで。
「うん、なのはの魔法に関してだけど……ティアナはなのはになりたいのかな?」
「え?」
 なのはさんの、ように?
「ティアナはティアナ、なのははなのは、だよ。比べちゃいけないし、比べられるものでもない。確かにスターライトブレイカーはなのはの魔法だけどそれをティアナが使う以上はなのはの使う力とは違う、ティアナ個人の魔法として使えば良いんだよ。なのはの魔法だからとか、なのはのように、って考えちゃうから失敗するんじゃないかな。ティアナはティアナのままで良いんだよ」
「あたしは……あたし」
「うん。それと執務官の仕事にしても私は上手くやれていると思うよ」
 そんなこと、と言おうとしたが口に出ない。いや、出せなかった。ここで否定したらフェイトさんに失礼な気がしたから。だからその言葉を飲み込んで、違う言葉を出す。
「ありがとうございます」
 そしてフェイトさんと小一時間程仕事の話や雑談を交え、通信を終了した。
 いつの間にか、悩みや憂いは吹っ飛んでいた。
 あたしはあたしのままで……か。
 ベッドに仰向けに寝転がりながら、拳を上に突き出す。
 あたしを信じてくれるフェイトさんの為に。そして、あたしに持てる技術の全てを託してくれたなのはさんの為に。少しでも一歩、近づけるように。
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2008年08月01日 @ 07:57PM
 あっちこっち二次創作SS

 「ぼーいあんどがーる」


 ――めきっ

 電信柱に皹が入り、今まさに折られんとばかりにぐらぐらと揺れる。
 日曜日の休日の午後、何となく散歩しようと商店街を歩いていた時、音無伊御を見かけ、声を掛けようかどうか悩んでいた所、『とんでもない場面』を見てしまった御庭つみきは、慌てて隠れた電信柱の影から一歩も動けないでいた。
 嘘だ、きっと何かの間違いだ。心でそう言い聞かそうとするも、しかし「もしかすると……」と悪い方向へ向かってしまう。
「伊御……」
「おや、つみきさんじゃないのん。はろー」
 つみきはぽつりと想いを寄せている彼の名前を呟く。それと同時、背後から自分を呼ぶ声がして飛び上がるぐらい驚いた。いや、実際に飛び上がってしまったのだが。
「……ま、真宵」
 爆発しそうなぐらい暴れている心臓を静めるため、胸に手を当てながらつみきは振り返った。そこには私服に白衣という奇抜な出で立ちをした片瀬真宵の姿があった。
「つみきさん、こんにちわです」
 その真宵の隣にいたのは清純なピンクのワンピースにカーディガンと言う私服を纏った少女、春野姫だった。彼女はぺこりと頷くと挨拶をする。
「こ、こんにちは。奇遇ね、二人とも……」
 つみきは狼狽する。まさかこんな所でこの二人と出くわしてしまうとは。今「アレ」を見ている所を見ていたなんて真宵に知られたらどんな風にからかわれるか。
「つみきさんも買い物かね?」
「電柱に隠れて何してたんですか?」
「な……なんでもにゃいわよ!」
 ふかーっと威嚇する。しまった、これでは逆に動揺しすぎてばればれではないのか。
 つみきはそう思いつつも、ポーカーフェイスを装うことができない。
「ふーん、あそこに誰かいるのねん」
 真宵が電信柱から顔を出す。
 刹那、つみきの神速を超える手が彼女の後頭部を掴み、後方にあるコンクリートの塀へとぶん投げた。

 ――ぐわっしゃぁぁぁん!!

 塀の一部が瓦礫の山と化し、真宵の口から魂がだだ漏れる。
「ままま、真宵さぁ――ん!?」
 突然の出来事に姫はうろたえ、つみきと真宵を交互に見つめる。
「ふぅ……」
 額の汗を拭い、取り敢えず危機は去ったわ、と安堵。実際何も解決してないわけだが。
 改めて伊御のいた方へと顔を向ける。今度はおもちゃ屋さんに入っていく所が視認された。
「あれ、伊御さんじゃよね?」
「!?」
 いつの間に復活したのか、ぱんぱんと白衣についた埃を払いながら真宵が言う。つみきは思わず驚いてしまい、電信柱に背中をぶつけるが、痛がっているどころではなかった。
「なるほどにゃあ。休日散歩に出かけたら偶然商店街で伊御さんを見かけ、声を掛けようかどうか迷ってしまい、思わずストーカーっていると」
 どうしてここまで勘が鋭いのか、つみきは感心してしまう。
「普通に声を掛ければ良いじゃないですか」
「だ、だって……」
 姫が最もな意見を言う。しかし、それが出来れば苦労はしない。
 つみきは両手の人差し指をつんつんさせながら、自分が見た衝撃的瞬間を口にした。
「お……女の人と一緒だった」
 暫しの静寂。
 数秒後、姫と真宵が目を合わせる。
(姫っち、もしかしてみいこさんじゃないのん?)
(私も一瞬そう思いましたけど、あの人今お店にいる筈ですし、第一みいこさんだとつみきさんがここまで動揺するのもおかしいかと……)
(じゃよねぇ、とするとやっぱり……)
(やっぱり、なんですか?)
「ざ☆うわき!」
 やべ、思わず声がでかくなった。
 慌てて口を抑えるがしかし遅く、つみきはいきなり電信柱にトドメをささんがばかりに更に強く掴んだ。

 ――めき、べき、びしし!

 電信柱が! 電信柱が本当に折れてしまう!!

「じょ、冗談じゃよ冗談! きっとつみきさんの勘違いじゃよ!?」
「そそそ、そうですよ! だから落ち着いてくださいつみきさあああん!?」
 二人は慌ててつみきのフォローに入る。
 どうにか深呼吸して落ち着きを取り戻すが、つみきの悶々は晴れそうに無い。
「仕方ない……」
「真宵さん、どうするんですか?」
「れっつ尾行♪ これしかあるまいて!」
 前回も同じようなことしたわね……と心の中で思いつつも、つみきは特に異論はないようで黙っている。
 姫も二人に逆らっても無駄だと理解しているので、異議を唱える気は元から無い。


「ターゲットはおもちゃ屋さんでぬいぐるみを物色しているようじゃね」
 こそこそと商品の棚の影に隠れながら、真宵が目標の行動を報告している。何故かサングラスを掛けているが意味は特に無い。
「その前は電気屋さんと雑貨屋さんに寄っていたわ……」
 つみきの声が震えている。
「姫っち、伊御さんの隣にいる女性、誰だか解かるかにゃ?」
「ええっと……あれ、クラスメイトの咲さんじゃないですか?」
「「あ」」
 名前を聞いてつみきと真宵が反応する。
 崎守咲。伊御達と同じクラスメイトであり、友人の一人でもある金髪の少女だ。
「伊御さんと咲っちが……むぅ、ますます謎だにゃ……は! もしやデ――」
 デート、と言おうとした瞬間、つみきが物凄い形相で睨んだので、真宵は口を噤み、言い換えることにした。
「で、で、デット オア アライブ!」
「生と死ですか――!?」
 ああ、もはや何が何やら。
「そんなこと……ないもん」
 伊御がクラスの女子と遊ぼうが何しようが、それは彼の自由であり、自分がどうこう言って良いことでは無い筈だ。
 しかし、胸をきゅっと締め付けられるような感覚につみきは耐えられなかった。
「そんなこと……ないもん」
 同じ台詞を繰り返す。そんな彼女を、友人である二人はもう、見ていられない。
「つみきさん……しっかりしてください」
「そうじゃよ。まだ伊御さんが咲っちとデートしているって決まっているわけじゃないのじゃし」
「そうですよ。気になるのならお二人に直接聞きましょうよ」
 そう。最初からそうすればよかったのだ。
 こそこそ隠れたり尾行したりせず、直接聞けばよかったのだ。
「けど……本当にデートだとしたら二人の邪魔しちゃうし」
「何言ってるんじゃよ! 本当に伊御さんのことを思っているのなら、愛しているのなら、とことん邪魔してやろうじゃん!」
 と、いきなり真宵は白衣の袖口から丸い物体を取り出した。見るからに怪しいものだが、彼女は本気で邪魔する気満々のようだ。
「真宵……ありがと」
 うつむき加減でお礼を言うと、つみきは丸い物体を掴むと真宵の口へと押し込み、ボタンを押した。

 ――ぼぼん!

「んばぁ!?」
 口の中で爆発が生じ、もくもくと煙が出る。
 真宵はまぁ……生きているだろう。
「つ、つみきさん。やりすぎじゃないですか……」
「良いのよ。――姫もありがと。そうね。こんな風にこそこそしないで、ちゃんと伊御に聞けばよかったのよね。私馬鹿ね、一人であれこれ考えて……暴走して」
「つみきさん」
 がんばって、と言おうとした時だった。
「何やってんだ、お前ら……」
 いつのまにか姫の背後には、伊御が呆れた顔で立っていた。
 そりゃ、あんな爆発音を立てれば気づくと言うものだろう。いくらド鈍い伊御でも。
「あれ、春野さんに御庭さんじゃない。どうしたの?」
 ひょこっと咲が顔を出す。つみきも姫も苦笑するしかない。
 伊御は「さてどうしたものか」と腕を組み、考えるのだった。


 ――時間は、一日ほど遡る。
 昼休み、普段ならいつものメンバーと昼食を取る伊御だったが、彼は咲と一緒にいた。
 学校の屋上。澄み切った青空、爽やかな風が頬を撫で、絶好の昼食日和である。二人は屋上のベンチに隣り合って座り、お弁当を食べていた。
「それにしても珍しいね。音無君が私に頼みたいことがあるなんて」
「ああ、まぁな」
 ややぶっきらぼうな言い方だが、それが彼の性格だと言うことは咲は理解している。
 伊御は何品か自分の弁当のおかずを食べた後、彼女の方を向いて言った。
「もうすぐつみきの誕生日なんだが、何を贈ったら良いのか分からなくてな……その」
 ごにょごにょと言葉を濁し、真っ赤になる伊御。咲は思わずかわいい、と思いつつ、理性を保たせる。
「私に選ぶのを手伝ってほしい、と」
 こくりと伊御が頷く。
「うーん、それなら真宵と春野さんに訊けば良いじゃない。普段から一緒にいるんだし、私なんかより参考になると思うよ?」
「いや、それはそうなんだが……」
 言葉を区切り、再び弁当のおかずに箸を伸ばす。噛んでいる最中は喋らない。かなり伊御は礼儀正しかった。
 良く噛んでから飲み込み、伊御は再び口を開く。
「真宵はああ言う性格だから絶対にからかうだろうしろくな展開にはならないからな。姫が知るとそのまま真宵にも知られそうだから」
 ああ、なるほどと咲は納得した。しかし結局プレゼントを渡すとそれはそれでからかわれそうだが。
「まぁそう言うことだ。頼めるか? いや、無理なら良いんだが」
「ま、協力してあげないこともないけどー、条件があるわ」
 咲はいたずらを思いついた小悪魔のごとく笑みを浮べる。
「条件?」
「明日の日曜日、プレゼント選びを手伝うと同時、私とデートして欲しいなー、なんて」
 頼みごとをする手前、伊御は断れるはずもなく。
 結果彼はその条件を飲むことにした。
 そして日曜日に商店街で待ち合わせという約束をし、お昼休み終了を告げるチャイムが鳴る。

 因みに咲は伊御が食べ終わるよりも早く、自分の弁当を終えていた。


「結局デートな訳ですか――!?」
 伊御から話を聞かされた姫は驚いて声を荒げてしまう。
 いつまでも店にいては迷惑だと言うことで、皆は場所を公園に移したのだった。
 ベンチで寝転んでいる真宵は無視するとして。
「ごめんね、御庭さん。その……ゆるしてくれる?」
 咲がベンチで座って俯いているつみきを覗き込む。泣いているのかも知れない。もしかしたら噛まれるかもしれない。そんな恐怖を抱きつつも、咲はつみきに話し掛ける。
「……ぷ」
「ぷ?」
 姫が、伊御が、咲が同時に首を傾げる。
「プレゼント……。伊御が、私に、プレゼント……はふぅ」
 思いっきり顔を赤くしてトリプっていた。三人は思わずずっこけてしまう。
「ですけど、言ってくれたら協力しましたのに」
 姫は少しだけ不満そうな声を出した。仲間外れにしたのが許せなかったのだろう。
「ごめんな。別に姫を信用してなかったわけじゃないんだが……」
 ちらりとベンチで横になっている真宵を一瞥し、嘆息する。
「約一名、絶対に何かしでかす輩がいるから不安でな」
 姫とつみきは納得した。確かに、トラブルメーカーである真宵のことだ。プレゼント選びを手伝うどころか、とんでもない行動に出るに決まっている。
「それと、三人に内緒にしてたのには、もう一つ理由があるのよ」
「あ、こら! 言うんじゃない!」
 咲がいじわるそうに笑みを浮べた。伊御が制しようとするが遅く、彼が三人に内緒にしようとしてた本当の理由を話し出す。
「いつもお世話になっているあなた達に、だってさ」
「えっ」
「にゃんと!?」
 真宵がベンチから起き上がり、驚きの声を上げた。姫は伊御の顔を凝視している。
「御庭さんの誕生日プレゼントと、春野さんと真宵にも何かプレゼントを贈りたいって。だから内緒にしてたんだよね」
「うう……」
 恥ずかしさのあまり、伊御はかぁーっと真っ赤になって俯いてしまう。
「全く音無君ったら。素直じゃないし不器用だよね。ま、そこが良い所なんだけど♪」
 伊御に向かってウィンクし、それをつみきがガードする。くすくすと笑いながら咲はベンチから立ち上がる。
「さて、私は満足したし帰るかな。じゃあねみんな〜」
 まるで嵐のように、咲はこの場を後にした。
「さ、崎守さん、まるで台風のようでしたね……」
 姫の率直な感想に皆頷くだけだった。


「さて、と」
 おもむろに伊御が袋の中に入っている綺麗にラッピングされた箱を取り出し、つみきに手渡した。
「い、お?」
 箱を受け取り、つみきはきょとんとする。
「その、誕生日おめでとう……つみき」

 ブ――――――!!

 ぽりぽりと照れ臭そうに頬を掻く伊御に、つみきは思わず鼻血を噴射する!
「はい、姫と真宵にも」
 つみきの鼻を慣れた手つきでティッシュで拭ってあげながら、伊御は姫には大きな袋を、真宵には少し小さめの箱を手渡す。
「あ、ありがとうございます……伊御君」
「さんきゅー伊御さん。開けていいかにゃ?」
 びりびりとラッピングを破りながら真宵が尋ねる。
「……そう言うのは破る前に聞いてくれ」
 伊御が呆れた声でツッコミを入れる。真宵は必死にラッピングを剥がし、箱を開けた。
「しかし、ただ紙を剥がすだけで『必死』と言うのもおかしい気がするねん」
 ごもっとで。
「って、こ、これわぁ!?」
 真宵が手にしているのは、今では入手困難とまでされているパソコンのパーツだった。伊御がどうやって手に入れたのかは謎だが、真宵にとっては喉から手が出るほど欲しいものだったらしい。
「い、伊御さん、ほんとにこれ貰って良いのん!?」
「ああ、貰ってくれ。苦労したんだぞ。俺そう言うの分からないから崎守さんに教えてもらったりしてな」
 崎守咲、出来る! 真宵はそう思った。
「はぅ――!」
 可愛らしい叫びと同時、姫が鼻血を噴出した。真宵は思わず驚いてしまう。
「ど、どうしたのん姫っち!?」
「い、いえ。すっごく可愛らしいぬいぐるみが出てきたもので……」
 ぎゅっとぬいぐるみを胸に抱き締めながら姫が言う。ぬいぐるみに血は着いてない。どうやら鼻血を出す瞬間、さっと射程範囲内から非難させたらしい。
「……可愛い?」
 伊御が姫にプレゼントしたぬいぐるみはうさぎの体の半分が機械化したような感じだった。人の美的センスをとやかく言うつもりではないが、とても可愛いとは理解し難い真宵であった。
「つみきさんは何が入ってたのかにゃ?」
「ん……」
 開けるのが勿体無いのか、それともここで開けて良いのか迷っているのか、つみきは箱を手に持ったまま俯いたままだ。
「つみき、開けても良いよ?」
「良い。後で、開ける」
「そう?」
「はっはーん。つみきさん、開けた瞬間の嬉しそうな顔を伊御さんに見られたくないから、そんなことを言うんじゃ――うぼぁ!?」
 残虐悪魔超人も真っ青なエルボーが真宵の鳩尾にヒットし、遥か後方へと綺麗な円を描きつつ吹っ飛んでいく。
「つみき。そんなの気にしなくて良いのに」
 ぽむっとつみきの頭上に手を乗せる。と言うか、吹っ飛んだ真宵はスルーですか。
「私が気にしゅるにょよ……ふかーっ!!」
 噛み噛みだった。余計に恥ずかしくなったのか、つみきは思いっきり伊御の頭に噛み付いた。
「わ、分かった分かった。俺としてはつみきの喜ぶ顔が見てみたかったんだが……」
「開ける」
 即決だった。つみきは伊御から口を離すと手に持っている箱のラッピングを外し始める。それも物凄く丁寧に、まるで包装過程の逆再生を見ているかの如く。
「これ……」
 箱から出てきたのは、リボンだった。青の、少し大きめの可愛らしいリボン。
「つみき、時々髪を結ぶ時あるだろ? その時に使ってくれたらって思って……さ」
 照れ臭そうに頬を掻く。そんな伊御の仕草と表情と気持ちとでつみきは赤面してしまう。
 姫はぬいぐるみに夢中で二人どころではなく、真宵は真宵で魂を口から出して気絶していた。

 てれりこてれりこ。


 おしまい。
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2008年07月09日 @ 00:02AM
「ステーキカルテットドラゴン」 by しーな
 
 初めましての人は初めまして。遺失物(略)機動六課フォワードリーダー、ティアナ・ランスターです。
 現在あたしはスバル、エリオ、キャロと共に何故か(ここ強調)八神はやて部隊長の部屋にいたりします。
 八神部隊長はどこかの汎用人型決戦兵器の組織の偉い人がするポーズをしながら、このモノローグが始まる五分前、つまりここに呼び出されてからずっと黙ったままです。
 スバルがごくっと息を呑んだ音が静かな部屋に響きます。そして、八神部隊長は重々しく顔を上げ、口を開きました。
「笑いが足らんねん……」
 超がつくほどの真面目な顔で八神部隊長は言いました。
 あたしは思わず「は?」と素っ頓狂な声を上げてしまいます。
「せやからな、機動六課には笑いが足らんと思うんや」
「いえあの、仰っている意味がよく解らないのですが」
「あかん!」
 いきなりびしっと人差し指を向けられた。
「ティアナ! そんなツッコミじゃあかん! 私が一からツッコミについて教育したる! 数年前に見せたあのツッコミをもう一度見せるんや!!」
 いや、貴女にツッコミなんて見せてないしそもそも数年前どころかあたしと貴女が出会ったのは半年前だし、教育するならもっと他のことを教えてください。
「そうだよティア。忘れちゃったの? あの日のことを」
「あの日って何!?」
「ほう、スバルの前やとええツッコミが出来るやないか」
 にやり、と言う擬音が物凄く良く似合う表情で八神部隊長が口の端をにぃっと曲げました。
「うーん丁度フォワード陣は四人……フリード入れたら四人と一匹か。ステーキカルテット+α、なんてどうや?」
「いえ、どうや? なんて言われても意味が解らないのですが」
 大体、なんでステーキなんだろうか。
「四人組漫才コンビはカルテット。ステーキと言うのはスバルさんの『ス』、ティアさんの『テ』、僕の名前の『エ』、そしてキャロの『キ』からでしょう。フリードは+αですね」
「なんで解るのエリオ!? つかそんな真面目な顔で間抜けな理解を示さないで!」
「フリードが+αってなんだかおまけみたいですね」
「きゅく〜」
 キャロの膝に抱えられていたちび竜が落ち込んでいるような顔つきになる。
「せやったら、ステーキカルテットドラゴンなんてどうや?」
「なんだか凄くかっこ悪いドラゴンのネーミングになっちゃってません!?」
「きゅく〜♪」
「フリード喜んでる、よかったぁ〜」
「良いの!? ちび竜あんたそれで良いの!?」
「おーすごくいい! どう、エリオ?」
「はい、すごくいいと思います!」
 フォワードのフロントアタッカーどもは馬鹿ばっかか!
「よっしゃ! 機動六課の新チーム、ステーキカルテットドラゴン結成や!」
「いえあの、フォワードチームで結構なんですけど」
 いやだ、そんなかっこ悪いネーミングのチーム絶対いやだ。
「なのはさんとフェイト執務官が黙っていないと思いますけど」
「あー、あの二人は最初からうちに反論はできんで」
「な、何故ですか?」
「上司権限で色々と二人の弱みを握っているしな。なのはちゃんはユーノくんと、フェイトちゃんは義兄のクロノくんと色々……な」
 色々ってなんだろう。それ以上聞いてはいけない気がした。
 兎にも角にも、最後の望みも絶たれたと言うことだ。
 因みに、「なのはちゃんはユーノくんと」の件(くだり)からスバルが激しいほどの嫉妬の炎を放出したが、見なかったことにしておく。
「と言うわけで、この案を上に持って行って可決してもらうわ。――と言うわけで今日はここで解散」
「はい!」
 椅子から立ち上がってあたし達は敬礼をする。
 あたしは上の人たちがこの馬鹿げた事を一蹴してくれるのを祈るだけだった。

 ――数日後――

 どうもこんにちは、ティアナ・ランスターです。
 冒頭と似たような切り出し方でごめんなさい。
 今あたしは、正確にはフォワード陣四名は八神部隊長の部屋にいます。今日はなのはさんとフェイト執務官も一緒です。
 どうやら数日前に八神部隊長が提出したステーキなんとかの件で結果が出たようで、その発表らしいです。
「結論から言うで」
 誰かが生唾を飲み込んだ。それがあたしの隣に座っているスバルだと気付くのに数秒と掛からなかった。
 結果なんて解っている。上層部がそんな馬鹿げた案を通すはずが無い。"不採用"、これで決ま――
「見事、上からも認められて正式に『ステーキカルテットドラゴン』として動き出すから、よろしく頼むで!」
 ってなあああああああああああああい!?
 ち、ちょっと待て! 時空管理局の上はアホばっかか!?
「あの、八神部隊長……ご冗談ですよね?」
 あたしは心の声とは裏腹に発した声は割と落ち着いていた。
「冗談ちゃうで。ほんまや。クロノくんとカリムも絶賛しとったで」
 一人は弱み握られている執務官の義兄だし、もう一人は貴女のご友人ですよねぇ!?
「元帥の人らも素晴らしいって誉めてくれとったわ」
「馬鹿だ! 目上の人を非難するのはいけないと解っていますけど絶対馬鹿でしょ、その人ら!」
「ティアナ」
 叫ぶあたしの言葉を遮るように、なのはさんの声がした。
「だ、ダメだよ、そんなこと言っちゃ」
「そうだよ」
 今度はフェイト執務官が口を開く。
「せ……せっかくはやてが一生懸命考えてくれた新チーム名で新しい動きなんだし、ちゃんと言う事聞かないと」
 だったらちゃんとあたしと目を合わせてください。その目は今どこの海を泳いでいるんですか。てか、どもらないでください。
「そろそろ行数……やない。時間もないし、今日は報告だけや。詳しい話はまた今度な」
 あたしは願う。夢オチでも良いのでどうか夢であってください――と。

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2007年08月23日 @ 06:54AM
続きでーす。そろそろ終わりが見えてきました。


「衣装は決まった。次はマスコットだな」
「クドのマスコットがたぬきだから……やっぱ、きつね?」
 僕がそう言うと、恭介は首を横に振った。
「いや。エイリアンだ」
「なんでさ!?」
 たぬきのライバルがエイリアン……。ありえない。普通にありえないから!
「そのありえなさが良いんじゃないか。ウケるぜーきっと」
 そんなきらきら目で言わなくても。と言うか、誰を笑わせるつもりなんだろうか。
「来ヶ谷さんも何か言ってよ!」
「私か? 別にエイリアンでもジョーでもなんでも良いと思うぞ」
 この人に頼んだのが間違いだったことに今気づいた!
「まぁそれは冗談としてだ。恭介氏」
「なんだ?」
「結果的に決めるのは、小毬君だと思うのだが」
 そうだ。僕達がどうこう言うより、小毬さんに決めてもらった方が早い。
 視線を小毬さんに移すと、彼女は一個のぬいぐるみをとても大事そうに両手で持ち、じーっと凝視していた。
「小毬、そのぬいぐるみ……気に入ったのか?」
 しかし小毬さんはぬいぐるみから視線を外さない。恭介の言葉も届いていないみたいだ。
 目の前でぶんぶんと彼女とぬいぐるみの間で手を振ってみる。が、反応無し。
「小毬さん、小毬さーん!」
「……ほわぁ!? え、り、理樹くんか〜。びっくりしたよ〜〜」
 耳元で大声で叫ぶと、ようやく気づいてくれた。
「いやまぁ。すっごく夢中で見てたから」
 小毬さんが抱えているのは、ぺんぎんのぬいぐるみだった。
 まんまるな体に白いお腹。楕円形の黄色いくちばしに円らな黒い瞳。
「よし、小毬のマスコットはそのペンギンに決まりだな」
 なんとも、小毬さんらしいマスコットだと思った。
「それで、このペンギンにも何か細工するの?」
「当然だ。小毬、ちょっとそのペンギンを貸してくれるか」
「ふえ? どーするの?」
 小毬さんが小首を傾げる。
「昨日作ったタヌキと同じ仕掛けをする。中にイヤホンを埋め込み、傍から見ると喋っているように思わせるんだ。ま、小毬はタネが解っているが、それでもなんとなく面白いだろう?」
「ダメです」
 しかし、きっぱりとした口調で拒否を示した。
「いや、しかし……」
「ペンギンさんに穴を空けるなんて、許しません」
「いや、すぐに塞げば大丈夫だ。タヌキの時は反対しなかったじゃないか」
「それでもダメです!」
 小毬さんにしてはものすごい頑固だった。
「……解った。じゃあペンギンはそのままにしておこう」
 あの恭介が折れた!
「理樹、俺はいつだって完璧なわけじゃないんだぜ……」
 そう言って背中を向ける恭介。もしかして、泣いているんだろうか。
 と言うか、そんなに改造したかったのか、あのペンギンを。


 それから暫くして。
 ふと、来ヶ谷さんが思い出したように口を開いた。
「そう言えば恭介氏」
「ん、なんだ?」
 僕のベッドに腰掛けて漫画を読んでいた恭介が、来ヶ谷さんの方を向く。
 彼女は僕の椅子に足を組んで座っている。
「杖はどうなったのだ? まだ見せてもらっていないが」
 その言葉に僕を含め、他の面々も思い出したように顔を上げ、恭介の方を見た。
「ああ、忘れてた」
 瞬間、全員が一斉にコケた。
「お前、だからなんでそう何か一つ忘れるんだよ……」
「アホだな」
 真人と謙吾が容赦なくツッコむ。
「安心しろ。別に出来てないとは言ってない。ちょっと待ってろ」
 そう言うと恭介は部屋から出て行った。

 それから数分後、再び恭介が戻ってきた。
 手には布で包まれた細長い何かを持っている。
「お、これがそうなのか」
 真人が興味津々な顔をする。それは他のみんなも同じで、勿論僕もだった。
「これが……まほーのつえ、なのか?」
「そうだ」
 鈴の問いに恭介が応える。
 そして包んである布をゆっくりと解く。中から現れたのは……。

 バールだった。

「いやいやいやいや! なんで、なんでバールなの!?」
「そっちの方が面白そうだからさ!」
 バールで戦う魔法少女なんて聞いたことないよ!?
「って言うか、クド公には重すぎやしませんかね? これ、私が持つだけでもきついですヨ」
 葉留佳さんがバールを持つが、確かにちょっと重いのか、両腕が震えている。
「安心しろ三枝。能美用に軽いバールを用意するつもりだ。これは言わばサンプルだな」
「あーなるほどー。それならクド公も安心っすねー」
 そのままバールを手から離した――途端、真人の足にヒットする。
「いでぇええええ!?」
「あやや、真人くんごめんねー」
 足を抑えて転げまわる真人に対し、あんまり悪びれた様子もなく、葉留佳さんが謝った。
「しかしバールか。恭介氏もなかなか面白いチョイスをするな」
「そうだろう」
「うむ」
 互いに笑いあう二人。なんて言うか、気が合うよね、この二人。
 ふと、西園さんの方を見る。
 彼女は窓を背凭れにして座り、本を読んでいた。
 タイトルを覗き見る。
『魔法少女リリカル○○○』
 なんだろう。タイトルは口に出しちゃいけないような気がした。
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2007年08月19日 @ 07:30PM
リトバスにはまって衝動的に書いたSS。まだ完成ではないですが、出来ている分まで公開します。結構長いです。テキスト容量は現在18.4KB。普通に20KBは超えそうです。
お話は魔法少女になりたいと願うクドのためにリトルバスターズががんばると言うお話。クドが主役のはずなのに、出番少ないです、しょんぼり。
ではでは始まります。次のページをクリックすると、ページが切り替わります。


リトルバスターズ!外伝「魔法少女クドリャフカ」


「リキ〜。ちょっといいですかー?」
 2時間目終了後の休み時間。真人と談笑していた僕の机の側までクドがやってきて開口一番そう尋ねる。
 能美クドリャフカ。名前の通り外国人と日本人のクオーターで、ナリはちっちゃいが、同じクラスの女の子だ。
 僕が「何?」と問い返すと、クドは何やら真剣な眼差しで見つめて言った。
「魔法少女って、どうすればなれるんでしょうか?」
「へ?」
 そう反応したのは真人だった。口をぽかんと開け、目をぱちくりさせている。
 僕はと言えばやはり真人と同じ反応で、どう返して良いのか解らない。
「あの、なんだって?」
 取り敢えず聞き返す。
「魔法少女って、どうすればなれるんでしょうか?」
 さっきと一字一句まったく違(たが)わない応えが返ってきた。
「おい、クー公よ……」
「なんですか、井ノ原さん?」
「お前、魔法少女ってのが何なのか知っているのか?」
「えっと、テレビで見た程度で……詳しくは知らないのです」
 クドがちょっと恥ずかしそうに両手の人差し指を胸の辺りでつんつんさせながら言う。
「そうか、知らないのか」
「井ノ原さんは知っているのですか?」
「オレも知らん!」
 凄く自信たっぷりに言った!
「なぁ理樹、魔法少女ってオレでもなれるか?」
「取り敢えず性転換する度胸があるならなれるかもね……」
 苦笑交じりに言った。否、笑っているのかどうかも解らないが。
「それで、リキは知らないですか? 魔法少女になる方法」
 さて、どうしたものか。
 恐らくテレビか漫画か何かで魔法少女モノのアニメでも見たのだろう。
 それに影響されるのは恭介に似ているというか、なんて云うか。
「うーん僕もあんまり詳しくは。恭介なら知ってるかも」
「きょーすけさんですかー」
「ああ、確かにあいつなら知ってそうだな。その手の漫画も読んでるかも知れねぇし」
「ああ、当然読んでいるし、知っているとも」
 噂をすればなんとやら。或いは出てくるタイミングを見計らっているのか。
 教室の窓からやってきた恭介はすたっと教室に着地すると、クドの前に立つ。
「能美、魔法少女になりたいか!」
 右腕をクドの真正面に向け、手をパーのように広げて叫ぶ。
「はい!」
 ぐっと胸元で拳を作って元気良く頷く。
「ニューヨークにいきたいか!」
「どっちかというと京都にいきたいです!」
「……じゃあな」
 恭介が再び窓から去ろうとする。
「ちょ、ちょ、ちょっと恭介待ってよ!?」
「冗談だ。能美、魔法少女になりたいのか」
「はい、なりたいです」
 恭介の問いに、真剣に答えるクド。
「よし、今から魔法少女になるためのいくつかの条件を言おう。それさえクリア出来れば、立派な魔法使いだ!」
「よ、よろしくおねがいします!」
「まず一つ、魔法が使えること」
 一つ目の時点でアウトだった!
「いや、いくらなんでもそれはさすがに無理と思うんだけど……」
「ああ、オレでもそれは無理だと思うぞ。魔法なんてこの世にあるわけねーし」
 しかし恭介は何故か不敵な笑みを浮かべている。
 そうだ、恭介のことだからきっと何か意味があるに違い無い。
「そうだな、無理だな」
 さわやかな顔で肯定した!!
「わふ〜、無理なのですか〜?」
 ちょっとしょぼんとした表情でクドが呟く。
 確かに魔法少女ってのは無理があるかも知れない。けれど、クドの寂しそうな顔は見たくないし、なんとかしないと……と思った。
「ふむ、だったら魔法以外の部分で魔法少女になりきれば良いんじゃないか?」
 いつのまにいたのか。来ヶ谷さんがクドの背後に立ってそう提案してきた。
「聞いてたの?」
「ああ、実に興味深そうな会話をしていたのでな」
 目を伏せ、窓のサッシのところに腰を降ろし、足を組みながら言う。
「確かに魔法はこの現実世界においては不可能に近い領域だ。そこの所はクドリャフカ君も理解はしているだろう?」
「は、はいです」
「だったら、それ以外のところで魔法少女をすれば良い。衣装、マスコット、杖。それさえあれば誰でも立派な魔法使いだ」
 それって、単なるコスプレなんじゃ?
「魔法少女だって、魔法が使えるだけでただの人間と変わらんよ。魔法が使えようが使えまいが、魔法少女の格好をしていれば魔法少女だ」
 それに、と来ヶ谷さんは付け足した。
「最近の魔法少女は町一つ破壊できそうな勢いのが多いがな」
 いや、さすがにそれは無いだろうと思った。
「なるほど……流石は来ヶ谷だな」
 恭介は何度も頷いてえらく感心している。
「へ! 行き詰まったクドの願いを見事に叶える、流石は来ヶ谷だぜ。そこに痺れる、憧れる!!」
「筋肉バカに憧れられても気色悪いだけだ。弁えろ」
「うおおおおおおおおおお――――!!!」
 真人が頭を抱えて叫びだした。
「まぁそれは良いとしてだ」
「よくねぇよ!!」
「なんだ?」
 来ヶ谷さんの眼光が真人を射貫く。
「いえ、なんでもないっす」
 弱っ!!
「ふむ。やはり魔法少女に必要なマスコット、衣装、杖の三種の神器がいるな。衣装は私が用意しよう。マスコットと杖は……」
「ああ、マスコットと杖なら俺が」
 挙手しながら恭介が名乗り出た。
「助かる。そうだな……3日あれば大丈夫だろう。それでいいか、クドリャフカ君?」
 来ヶ谷さんがクドの方を向いた。
 クドはなんだかおろおろしていて、「あのその」をしきりに繰り返している。
「どうしたのかね、クドリャフカ君?」
「あの、そこまでして頂かなくても……。ご迷惑ですし」
 指をもじもじさせながら、クドが申し訳なさそうな顔で言う。
 来ヶ谷さんはクドの頭に手を乗せて微笑んだ。
「クドリャフカ君は心配しなくて良い。別に迷惑だなんて思ってないからな」
 と、僕の方を見て片目を一瞬だけ閉じる。
 それが「同意しろ」との意思表示だと気づいた。
「うん、そうだよ。クド、魔法少女になりたいんでしょう。だったら叶えてあげたいんだ」
「それに能美は我がリトルバスターズのメンバーだからな」
「へ、そう言うこった!」
「皆さん……ありがとです〜!」
 クドは何度も何度も、僕たちに向かってぺこぺこと頭を下げる。
 その後チャイムが鳴り先生が来たため、この話は昼休みで改めてと言うことになった。

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2007年06月17日 @ 09:57AM
「あの、今なんて?」
 あたしはなんだか信じられない言葉を聞いた気がして、なのはさんにもう一度尋ねた。
「次の日曜、私と二人でお出かけしょうか、って言ったんだよティアナ」
 なのはさんはあたしの問いに笑顔で応える。
 でも、どうしてもその言葉の意味が理解出来なくて。
 ううん、言葉自体は解る、解るのよ。そう言うことじゃなくて……そう。
「あの、どうしてあたしと……なんですか?」
 そう、つまりはそう言うことだ。
「どうしてって、私がティアナと色々お話したいからだよ。それじゃダメかな?」
 そんな、困ったような顔されるとあたしが困るんだけど……。
 なのはさんの頼みとなると断れないし。
「ダメってわけじゃ、ありません」
「そう、じゃあ次の日曜日、よろしくね♪」
 先ほどとうってかわってとびっきりのスマイルでなのはさんは言う。
 その時の笑顔がとても眩しくて、あたしは少しだけどきっとしてしまった。
「は、はい!」
 かくしてあたし、ティアナ・ランスターと高町なのは教導官との一日デートが始まったのだった。
 ……って、デートじゃないわよ!


 日曜日。
 これでもかってくらい、見事に晴れた。
 あたしは現在、なのはさんが指定した待ち合わせ場所であるミッドチルダ首都の駅の方にいる。
 着ている服は当然私服。これもなのはさんの指定だ。
 まだなのはさんは着ていない。彼女が遅れているとかではなく、あたしが単に早く来て待っているだけ。あんまり人を待たせるものじゃないから。
「ティアナー!」
 暫くして、私服姿のなのはさんの姿がに見えた。
 走りながらこっちに手をふりながらやってくる。
「はぁ、はぁ。早いね、ティアナ。待ったでしょ?」
「大丈夫です。待つのは嫌いじゃありませんから」
「ティアナは真面目だね。ちょっとくらい、肩の力を抜いても良いんだよ?」
 肩の力を……上司の前で、とてもそんなことできるはずが無い。
「今、上司の前で、とかそんなこと思ったでしょ?」
「え!?」
 す、鋭い。
「今日はお仕事の話とかは無し。だから、私とティアナも今日はただの友達、ね?」
 いや、友達と言われましても……。
 少し狼狽する。なのはさんはじーっとあたしの目を見つめてくる。
 うう、こう言うのあたし苦手なのよね。
「わ、解りました。でも、敬語はやめませんよ?」
「それでも良いよ。それじゃ、いこっか♪」
「あ、あの。行くってどこへ?」
 なのはさんはあたしの手を引っ張って走り出す。
「私の行きたいところ♪」
 あたしは一体、どこに連れて行かれるのだろうか?


 どこ、と言うほどでもなかった。
 単なるデパートだ。そこの3階洋服売り場にあたし達はいる。
「ねぇティアナ、こう言うのどうかな?」
「えっと……黒くて大人っぽいですね」
 なのはさんはさっきから何度も、黒と金のカラーで構成された服ばかりを見せている。もしかしなくてもこれは……。
「えへへ。フェイトちゃんに似合う服を探しているんだけど、一人では難しくて」
 もしかしてあたしが呼ばれたのはそう言うことなのだろうか。
 それならはやて部隊長かフェイト執務官を連れてくればよかったのでは?
「うーんフェイトちゃんには内緒にしたいし、はやてちゃんと一緒に行ってもなかなか決まらないと思うんだ。その点ティアナだとなんでもずばっと決めてくれそうだから」
 それは、信頼されていると見て良いのだろうか。
「そう言うことでしたら……さきほどの、これなんてどうでしょう」
 あたしはさっきなのはさんが見せた服を取り出す。
 落ち着いた色でそれほど派手さは無く、クールで知的なフェイトさんにぴったりな気がするのだ。
「あ、それ良い! 色も形もフェイトちゃんにぴったりかも」
 なのはさんは嬉しそうな声を出す。
「本当に仲良いんですね、なのはさんとフェイトさん」
「うん、10年前からの親友だから」
 幼馴染、だっけ。あたしにはそう言うのいないから、良く解らないかな。
「ティアナだっているじゃない」
「……え?」
「スバル。訓練の頃からずっとコンビだったんでしょ。そう言うの、素敵だと思うな」
「じょ、冗談言わないでください。スバルとあたしはそんなんじゃありませんよ! 大体あいつはわがままだしそのわがままを押し通そうとするし真っ直ぐだし……」
「そして、親友?」
「だから、どうしてそうなるんですか」
 溜息を吐く。スバルとはコンビだけどそれだけで、親友とかは違う気がする。
「違うのかな。息がぴったりでフォローし合えて、プライベートでも一緒にいれば十分親友だと思うよ?」
「そりゃなのはさんとフェイトさんは」
「ティアナとスバルも同じじゃないかな」
 なのはさんはあたしの言葉を遮るように言った。あたしと、スバルが同じ?
「息はぴったり。フォローもし合えて、プライベートでも一緒だよね。それにティアナが唯一、スバルには色んな感情を表に出している」
 ただ罵声浴びせたり呆れてたり怒鳴っているだけの気も……。
「そう言うの、ただのコンビじゃ出来ないよね。自分の感情を相手にぶつけることって」
 ……あ。
 あたしはなのはさんの言いたいことがわかってしまった。
 だからそれ以上反論の言葉が出てこなくて。
「……そうなの、でしょうか」
「うん。あ、私この服会計してくるから、ティアナは外で待ってて」
「はい。解りました」
 頷き、あたしは踵を返して出口へと向かうのだった。



 なのはさんの言葉が何度も何度も頭を駆け巡る。
 あたしとスバルは一体、何なのだろうか。
 きっとあのバカはあたしのことを友達だとは思っているのだろう。
 そりゃ出会った最初の頃はあの子に散々迷惑掛けられたけど、今は……認めてしまうと、あたしはあの子以外のパートナーなんて想像出来ない。

 スバルと一緒にいると、安心出来る。
 
 スバルと一緒だと、どんな無茶でもやり通せる。

 スバルと一緒に戦うと、安心して背中を預けられる。

 ああ、なんだ。
 悔しいけど、あたしはスバルのこと、親友として仲間として好きなんだ。
 でも、スバルとの接し方はきっと普段とあまり変わらないだろう。


 それから。
 なのはさんと色々街を周り、日が暮れてきたので解散となった。
「今日は楽しかったよ、ありがとうティアナ」
「こちらこそありがとうございました」
「私は何もしてないよ。でも、どういたしまして」

 なのはさんがあたしを呼んだ本当の理由はスバルとの関係を気づかせるためか。
 それともただ単にフェイトさんに贈る服選びだったのか。

 まぁ、別に今となってはどうでもいいか。
 あたしはなのはさんの横顔を眺めて歩きながら、そう思うのだった。



 終わり。



==================================

と言うわけで、SSですよ。
うち本業はこっちなんで。絵も描くけど。

うん、実はまだ続いている時空管理局ラジオ聴きながらなんですよね。
もしくは過去形にして聴きながらでした。
最後まで聴けたかどうかは神のみぞしる、でしょうね。

SSの説明だけど、プロットもろくに立ててません。
と言うかハイになった頭で妄想だけで書きました。ふはははは(ぁ

うん、なのはXティアナと見せかけて実はティアナXスバル、みたいな?
スバル出てないけれども。
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