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[ あいさつ]2007年05月12日
テレビって何でもやりますね。冷凍マグロでボブスレーって・・・坂で止まってるし!
しかも選手の二人押してますからね。
マジウケた。
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[ アトスク/第一話]2007年05月05日
 気づくと、オレはベッドで寝ていた。白い布団が敷かれたベッドと、寝ているものを隠すためのカーテン。恐らく、ここは病院だ。
 ここが何処の病院かは知らない。だが、そんなことはどうでもいい。何故、オレは生きているんだ?オレはたしかデブ男にのしかかりをされ、全身の骨が崩壊して今すぐ死んでもおかしくない状態だったはずだ。それなのに何故生きている?
 オレは確認するように、右手を動かしてみた。
 ・・・・・・動く。左手も動く。
 オレは動かないはずの上体を起きあがらせて頭をかく。どういうことだ?
 オレが延命の疑問を抱いていると、病院特有の、横スライド式のドアが開いた。
「お、目が覚めたようだな」
 聞き覚えのある声にオレはドアの方を向く。見覚えのある白髪に見覚えのある白衣。そして顔の左半分に巻かれた包帯。そう、オレはこの男に会ったことがある。今朝、路上で爆睡している所をオレが起こし、競馬で十万儲けた男だ。
「見つけたのがオレで良かった。心配すんな。お前の全身の骨は完全に直ってる。もしあの状況で一般人が救急車なんか呼んでたら、お前はとっくにお陀仏だったぞ」 
 いや、それはおかしい。普通怪我人がいたら救急車を呼ぶのが当たり前だろ。それに、救急車呼ばない方がオレがお陀仏の可能性高いだろ。てゆーか、全身の骨がすぐに直ると思ってんのか?
「お前、表社会の医者なんかが全身骨格の崩壊に対処出来ると思ってんのか?」 
「表社会?」
 表社会。そう言えばデブ男もそんなことを言っていた。表社会の科学技術なんかじゃ比べ物にならない、驚異の科学技術とかなんとか。現に、オレはその科学技術で創り出された鎧の皮膚を目の当たりにした。裏の世界では、ピストルよりも恐ろしい兵器が普通に散財しているのだろうか。デブ男はいわゆる、人間兵器というやつだろう。
「それより、ここは何処だ?」
「ここか?街の総合病院だ」
「アンタ自分が何を言ってることを忘れたのか?裏社会の医療術によってオレは助かったんだろ?普通の総合病院って、どう考えたって表社会じゃねーか」
「ああ、ここは普通の総合病院。表社会の代物だ。だが、別にここの病院の医者がお前を治療したわけじゃない。ここはいわゆるレンタル。裏社会の医者は治療室を一般の病院から借りて、処置を施したら病院側に後は任せる。こういう仕組みを使うのがほとんどだ。ブラック・ジャックが良い例だ。その医者は免許を取得してるがな」
「なるほど。それは良い例だ。それで、その裏社会の医者はオレにどういった処置を施したんだ?」
「悪いが、オレも知らん。以前、興味本意で聞いたことがあるんだが、医学用語を五百単語ぐらい使って説明されたもんだから、二度と聞かんことにした」
 一単語出てきてもワケのわからん医学用語を、五百単語並べられては一溜まりもないな。
 それより、オレが気になるのは・・・・・・。
「なあ、大丈夫なのか?」
「何がだ?」
「ここは病院だ。病院ってことは当然、治療費ってもんが出る。それに裏社会の医者の例にブラック・ジャックを挙げたのも気になる。何か、不法な治療費を請求されそうだ」
「ああ、心配すんな。治療費ゼロだから」
「は?」
 それはそれで嬉しいが、どういう風吹き回しだ?治療費ゼロ。それはつまり無料、タダと言うことだ。保険証を提示しても病院は全体の何割かの治療費を患者に請求する。それなのに、何故オレはタダなんだ?
 すると、そいつはわざとニイッと笑い、そばにある机を指さした。見てみると、机の上に何やら小さな本みたいなのがある。オレはそれを手に取って見ると、何のことは無い。オレの生徒手帳だ。
「これが、どうしたんだ?」
「それが、保険証だ」
 ますます意味がわからん。これは明日オレが入学することになる高校の生徒手帳。当然、普通の生徒手帳だ。これのどこが保険証だ。
「ああ、それは只の生徒手帳だ。たしかに、裏社会の医者は医師免許を持ってはいるが、不法な治療費を請求してくる者もいる。しかし、その手帳を提示すると、治療費は別のトコに請求されてタダになるのだ」
 まさかこの生徒手帳にそんな効力があったとは。もしかしたら、オリエンテーションの段階でこれが渡されたのはこの為なのかもしれない。現に、この生徒手帳を持っていたおかげでオレは助かった。ん?
「何でアンタがこの手帳の秘密を知ってんだ?」
「何でって・・・・・・」
 そいつは困ったような顔をすると、着ている白衣をさぐり、右ポケットから几帳面に折られた紙を取り出し、オレに手渡した。開いてみると、A4サイズの紙に、三十二人の名前が表記されていた。
 ・・・・・・色んな名前があんなあ。名前をざっと見ていると、見覚えのある名前にオレは釘付けになった。原上秀也(はらがみしゅうや)。どう見たってオレの名前だ。何を表しているんだこの紙?よく見ると、紙の一番上に「一年二組の生徒」と表記されている。そう言えば、オレがこれから通う学校でもオレは一年二組だったはずだ。ん?
「もしかして・・・・・・」
「そうだ。オレは滝正太郎(たきしょうたろう)。お前の、つまり、一年二組の担任だ」
 誰がこの展開を予想出来ただろうか、いや出来ない。まさか路上で爆睡していた競馬男がオレの担任だったとは。しかも、その担任にオレは助けられた。これではまるで、運命の出会いだ。安っぽいなあ、オレの運命。
「とにかくだ」
 滝が口を開く。
「お前の怪我は完治した。もう帰っても良いぞ」
「もう?すげーな裏社会の医者って」
 オレはベッドを降りて、滝に頭を下げた。
「助けて頂きありがとうございました」
「ああ、それじゃあ明日な。自宅に真っ直ぐ帰るんだぞ」
「はい」
 オレはもう一度頭を下げ、横スライド式のドアに手をかけた。


 何のことはない。滝の言ったとおりオレが寝ていたのは街で一番大きな総合病院だった。門の立て札でそれを確認して、オレは歩き始めた。
「・・・・・・」
 正直に言おう。オレは半分嘘をついた。滝に言われたとおり、オレは家に帰ることを選ぶ。しかし、その前にやらなければいけないことがある。
 ・・・・・・ひろむ!
 そうさ。いくら初対面のガキと言えど、オレはあいつと約束した。一緒にママを捜してやるとな。裏社会とやらが何故ひろむを誘拐したのか、そんなことカンケーねえ。相手が鎧の皮膚なんてのもカンケーねえ。大事なのは、ひろむとの約束を、オレが守れるかどうかなんだ。男と男の約束を、オレは死んでも守らなきゃいけねえんだ。
 オレの心にこういった決意がある。だが、一つ問題があるわけだ。
 やつらは、何処にいるんだろね?奴らの居場所がわからなければひろむを助けるどころかデブ男とリターンマッチすら出来ん。さて、どうしよう?
 ひろむを助けるって決意した矢先、だせえなあオレ。一体何を思ったのか、オレはズボンのポケットから生徒手帳を取り出した。これによって何の助けになるんだろ・・・!
「何だこれ?」
 手帳のページとページとの間に、何やら紙がはさまれていた。開いてみると、何やら地図のようなものが描かれている。
 その右端に、何やら言葉が書かれていた。
「お前が一番知りたい場所の地図だ。後はお前のしたいようにしろ」
 こんな紙を生徒手帳にはさんでおいた覚えは無い。滝がはさんでおいてくれたのだろう。何故、滝がデブ男の居場所を知ってるのかは気になるが、今はそれどころではない。紙に書かれている場所に行かなければ。ありがとう、滝。
 オレの足取りは次第に速くなり、デブ男の憎たらしいにやけ顔を思い出しながら、紙に書かれた場所へと急いだ。
 正直、オレは見落としていた。滝が筆記した言葉の最後を。滝が一番オレに伝えたかったであろう言葉を。
「もしお前が守るために闘いを望むと言うなら、オレは何も言わない。勝手にしろ。だが、今からお前が闘おうとしている奴らは普通の人間が勝てるような相手じゃない。蟻が象に闘いを挑むようなものだ。あくまで普通の人間での話だがな。案ずるな。明日からお前が行く高校。お前がそこに合格した時点で、お前は普通じゃない。お前もまた『煉衝』に選ばれた、特別な男だ」


 さて、地図に書かれた場所にオレはたどり着いた。
 潮の臭いが異様に強く、波の音がザザーンと聞こえる。本来なら汽笛の音が聞こえ、海の男達が荷物を船に運んで海に出ていく場所。そう、港だ。
 今日は人っ子一人姿が見えず、オレの頬に吹き抜ける風が不気味な感じだ。まるで、ヒーローが港に潜伏したテロリストを追いつめた時の、映画のワンシーンのようだ。オレがヒーローかどうかは知らんが、少なくともひろむのヒーローでないと。
 オレは半分シャッターが開いた倉庫を発見する。近づいて耳を澄ましてみると、誰かが大声で電話をしている。声の主は言うまでもないだろう。デブ特有のしゃべり方、忌々しいデブ男の声だ。他に声は無いから、いるのはデブ男くらいだろう。そう言えば雑魚はオレが倒してたっけ。電話しているってことは、ひろむは身代金目当てで誘拐されたのだろうか。そんなことはどうでもいい。ひろむはどうなんだ。
 デブ男が何者かなんてどうでもいい。まして、オレがデブ男に勝てる確率なんてもっとどうでもいい。大事なのは・・・オレさっきからこればっか言ってないか?とりあえず省かせてもらおう。と言うわけで、オレは勢いよくシャッターを開けながら。 
「デブ男お!!」
 オレは喉がつんざけるくらいの大声を張り上げた。
 オレの大声に反応して、デブ男がビクッとしたようにオレの方を向いた。
「何だ、生きてたのか」
 声の正体がオレだと確認すると、デブ男は平然とした表情になった。
「ひろむは何処だ」
「ひろむ?ああ、ガキのことか?ほれ。あそこだ」
 デブ男の指さす方を見てると、柱にひろむが縛り付けられていた。ひろむは気を失っていて、体の所々に殴られたような痣があった。
「ひろむ!」
 オレは急いでひろむに駆け寄ろうとする。
「おっとお、感動の再開なんてさせると思うか?」
 デブ男がオレの行く手を阻んできた。邪魔をするな。
「断らせてもらおう。このガキは我々にとって必要なんだ。人質としてな」
 やはり、ひろむは人質として誘拐されたのか。
「目的は身代金か?」
 オレの質問に、デブ男は憎たらしく笑い出した。
「お前、裏社会の犯罪者が身代金なんぞで誘拐すると思ってるのか!?バカが」
 それは悪かったな。お前らの目的を知らなかったヤツがバカなら一生バカで良い。
「まあそう言うな。少しは知りたがれ。そうだな、あのガキが何者かどうかは知りたくないか?」
「・・・・・・言ってみろ」
「裏社会の犯罪者ってのは誘拐はするが、身代金を引き替えってのはほぼゼロパーセントに等しい。何故だと思う?」
 知るか。
「金よりも欲しいものがあるからさ。金なんて銀行を襲えばいい」
「・・・・・・」
「もしくは金持ちの家を襲撃すればいいし大手企業を襲ってもいい。引いては、一般の家を襲ってもいい」
「・・・・・・」
「だがな、金持ちや企業ってのは金は奪われてもどうしても奪われたくないものを所持していたりする。それは情報だ!」
 情報だあ?そんなもんが何の役に立つんだ。
「役に立つさ。もし、相対性理論をアインシュタインがまだ世に公表してないとして、アインシュタインが死んだ後に偶然それについて書かれた紙を手に入れたら、お前ならどうする?」
 アインシュタインの遺族に返すに決まってるだろ。
「優しいなあ、お前。オレ様ならそれを自分の名で公表する。世のほとんとがそうするだろうよ」
 だろうな。偶然そんな紙を手に入れたら自分のものにしたがるのが人間・・・そう言うことか!
「そうだ。あのガキに用があるわけではない。ガキの父親はな、機械メーカーの社長を務めているらしいのだが、その会社、世に公表されていない科学技術を生み出し掛けているという情報がオレのいる組織に入ってしまったのだ」
「つまり、あんたの組織はその技術とやらが欲しくてひろむを誘拐したってのか?」
「そうだ。さっき父親と電話していたのだが、検討させてくれだとよお。全く、子供を大切にせんといかんな・・・」
「いい加減にしろよテメエ!」
 オレの奇声にデブ男はビクッとする。
「何だ。オレの何処が悪い・・・」
「悪いに決まってるだろ!ひろむをまるで物のように見やがって。あのひろむの体の痣は何だ!?人質どころか、あれじゃ捕虜じゃねえか!」
「何とでも言うがいい。貴様が何を言おうと組織の野望が揺るぐわけがない。お前に何故色々と教えてやったかわかるか。今からオレに殺されるからだよ!」
 デブ男は着ているノースリーブシャツを脱ぎ、忌々しき鎧皮膚が出てきた。のしかかりされたら一溜まりも無いな。だがな、オレにはもうそんなこと考えるつもりはねえ。オレの体がボロボロになろうが体中の骨が砕けようが、コイツをぶん殴らねえと気が済まねえ。
「オレからのサービスだ。お前から殴っていいぞ」
 何余裕ぶってんだよ。オレの怒りはもうおさまらねえぞ。
「最後に、一つだけ聞くぞ」 
「何だ?」
「組織、お前にとって、普通の人間って何だ?」
「決まってるだろ。道ばたの石ころだ。好きなだけ蹴ってくらいのな」
 もう、オレの怒りのバラメーターはMAXを当に越えていた。天の神様よお、何故こんなヤツに命を与えた?いや、あんたも予想してなかったろうな。世に犯罪者が何万も出没している現実なんて。だがな、何故こんなヤツ、犯罪組織なんぞにチャンスなんぞを与えてるんだ?チャンスってのは部活で死ぬ気で頑張ったやつらとかに与えるもんだろ?なのに何でこんなヤツに、馬鹿げた計画のために誘拐を成功させて、オレの思考回路じゃ到底理解出来そうにない科学技術とやらを手に入れることが出来るチャンスなんぞを与えてるんだ?オレは納得せんぞ。犯罪者にチャンスを与え続けてみろ。世界が火の海と化すぞ。
「何ごちゃごちゃ言ってる。あの時、素直に死んどけば良かったものを」
 黙れよデブ男。神様よお。アンタがコイツに下さねえんなら、オレが天誅を下させてもらうぜ。
「天誅だあ?やれるもんならやってみろ!」
 オレの全身の骨をバキバキに砕いた時のように、デブ男は巨体からは想像のつかないほどのジャンプをし、のしかかりの体勢に入った。
「死ねえ!!」
 デブ男がオレ目掛けて落下してくる。もう死んでも良い。明日高校の入学式なんだが、今コイツと闘かっとかなきゃ、オレの一生の後悔、魂が死んでしまうんだ。さあかかって来いよ。テメエののしかかり、正面から受け止めてやる。
「うおおおお!」
 オレは拳をがちがちに固め、落下してくるデブ男に向けて右拳を突き上げた。
 さて、この瞬間何が起こったのかと言うと・・・・・・
 オレの右拳が、燃え出した。
「え?」
 燃える右拳はデブ悪の腹に直撃した。だが骨が砕けることはなく、オレの右拳はデブ男を完全に受け止めていた。
「き、貴様」
 デブ男は驚愕の表情だ。何かよくわからんが、オレは握り拳をほどき、デブ男を地面に叩きつけた。
 オレは直ぐにその場から離れ、燃えている自分の右拳を見る。何故、オレの右拳は燃えているのだろうか?いやそれ以上に、燃えているのに全然熱くないんだが。オレの着ている上着なのに、引火して燃えないのは何故だろう?いや、今はそんなこと考えている場合ではない。今頃気づいた。何となく右拳に、とてつもないパワーを感じる。まるで後ろから押してもらうように楽に走れる電動自転車のようだ。これなら負ける気がしない。デブ男に、勝てる!
 オレはデブ男に顔を向け、睨みを見せ付ける。デブ男は驚愕の表情のままだ。
「どういうことだ。貴様、何故、れん・・・しょうを・・・」
「あ、れん・・・しょう?」
 れん、何とかって何だ?いや、今はどうでもいい。とりあえずコイツを倒さなければ。
「覚悟はいいだろうな?」
「あ・・・ああ・・・・・・」
 デブ男はがちがち震えている。どうやらオレの燃える右拳に勝つ手段が無いらしい。
 オレは拳を握り締め、デブ男に向けて走った。
「別にお前が太っているからいらついてるんじねえ。だがな、それを悪事を働かせるための道具にするのはどうかと思うぜ。オレはそれをいらついてんだ。三十代のおっさんに説教するような歳ではないんだが、オレから一応言っとく。幸せ太りしろや〜!」
 そういったことを抜かしながら、オレはデブ男の腹に炎の右ストレートをおみまいした。デブ男は吹き飛び、地面に倒れ付した。
「で・・・デブ男は止め・・・ろ」
 デブ男はそれだけ言って、ガクッと気を失った。・・・・・・今頃?
 ・・・・・・裏社会か。


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Up— posted by kouryu @ 04:15PM   Comment[0]  Trackback[0] 
[ あいさつ]2007年04月07日
以前投稿していたアトスクのリメイクです。
前より良いと思いますが、どうでしょう?
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Up— posted by kouryu @ 11:21PM   Comment[0]  Trackback[0] 
[ アトスク/第一話]2007年04月07日
 人生がつまらない。
 人間退屈に直面すると、誰もがそう嘆くだろう。内心、オレもその中の一人だ。
 テレビで流れるニュースは、いつも殺人事件ばっか。オレの心をぐっと掴むような、わくわくする内容のニュースなど、最近全く放送されていない。だが、それはそれで重要なことだ。
 仮に、六本木ヒルズが、テロリストによって爆破される事件が、ニュースで放送されたとしよう。国民はテレビやラジオに釘付けになり、事件についてのニュースで話題が持ちきりになる。人間はその時、大きなスリルを味わうことになり、スリルを味わえば味わうほど、退屈から遠ざかっていく。
 しかしだ。いくら退屈が無くなろうと、ヒルズ爆破によって、大勢の命が無くなるのだ。それに、六本木ヒルズはIT関係の会社が多く集まっている所。それが一気に無くなってみろ、世界が大混乱だ。
 人は退屈から逃げるためにスリルを求める。だがしかし、スリルを求める余りに、それを作るため、犯罪に手を染めてしまう。
 ならば、犯罪に手を染めずにスリルを味わえないのか?おそらく無理だ。犯罪ほど、スリルを味わうことなど、ゴビ砂漠の数千億の砂の中から、ありもしない真珠を探し出すことと同じくらい難しい。普通に生きたければ、退屈な生活を我慢する他無いのさ。
 オレもまた、現代社会の退屈に苛立ちを感じていた。だが、さっき説明したように、スリルを求めるわけには行かず、ただずっと、我慢する他無い。
 そう、オレは思っていた。退屈を凌ぐには、犯罪に手を染めるしか無いんだ、と。
 東京に来るまで。そして、あの男に出会うまで。


第一話1:危険都市東京


 今日は四月三日の日曜日。大阪の中学を卒業し、親父の仕事の都合で、東京の高校に行くことになったオレは今、自分の部屋にいる。東京の狭い土地の一部を何とか確保し、十年ローンで手に入れたマイハウスは、何処にでもある、普通の家だ。手に入れたのは親父だが。
 午前十時。オレは自分の部屋で、敷かれた布団に腰を下ろし、明日から行くことになる高校の、生徒手帳を手に取り、眺めている。
 一年二組十三番、原上秀也(はらがみしゅうや)。そう書かれた生徒証明書にオレの顔写真が貼られている。染めているわけではない茶髪を完璧にセットした、それなりに顔立ちの綺麗な十五歳。何を言ってんだ、オレ?
 新入生のためのオリエンテーションでこれをもらったが、クラスが何処になるのか教えられず、担任もまだだ。まあ、学校のシステムについて説明するオリエンテーションに、そんなのいらないわな。
 さらに言えば、オレが進学することになっている高校は全寮制で、たとえ近くに住んでいても、生徒全員寮に住むことになっている。勿論、寮で暮らすために必要なものはバッグに詰め、部屋の隅に置かれている。折角の新しい家だが、寮生活が楽しみでたまらねえ。
 そんなわけで、オレも明日から高校生なのだが、今思えば、東京に引っ越してきて一週間が立つ。折角の東京なのに、未だ東京的な街にお目に掛かってないない。荷物も昨日の段階で完璧に片づけて、今日は暇だから、中心街に行ってみようと思う。
 と言うわけで、食パンをトーストに進化させ、オレは牛乳と共に食し、一応、一番のお気に入りの服に着替え、我が家の玄関を開け、オレは外に出かけた。


 こうして見ると、住宅の数が大阪の比じゃねえな。それに、微妙に小さい気がする。まあどうでもいいが。
 オレはそんなことを考えながら、オレが住む町の中心街を目指し、住宅が立ち並ぶ道路を歩いている。その途中、足下で何かがコツンと当たったのに気づき、足下に目をやると、
「おわあ!?」
 オレは裏返りぎみの奇声を発しながら、後ろにたじろぐ。オレの足下に、人間がいた。そいつは男で、頭に新聞紙を被り、いびきをたてて爆睡している。横に、ワンカップが添えられている。
 オレはとりあえず、そいつを起こすことにした。オレは肩を叩きながら、そいつに声をかける。
「お、おい。こんな所で寝てたら風邪引くぞ」
 もう引いてるかもしれんが。
 すると、そいつは意外と簡単に目を覚まし、上半身を起きあがらせて、あくびをした。
「あー、よく寝た」
「いや、よく寝たじゃねーよ。そもそも、何でこんな所で寝・・・て・・・・・・」
 オレは言葉を詰まらせる。新聞をどかせて出てきたのは、顔の左半分が包帯で被われ、オレより五センチぐらい背の高い、二十代後半くらいの、白髪の男だった。いや、白髪なのは別にいいが、包帯には驚かされた。
 そいつはもう一度あくびをしながら立ち上がり、頭をかきながらオレの方を向く。
「ん、どうした。オレの顔に何かついてるか?」
「あ、ああ。包帯が。じゃなくて、アンタが何故ここで爆睡してたのか。それを聞いてんだよ!」
「オレか?あれだ。昨日競馬で大勝ちしたんだ。十万ぐらいかな?」
十万?すげーなおい。
「そんで、そのお祝いに、ワンカップ買ってここで飲んでたら、そのまま寝ちまったみたいだ」
「十万の祝いがワンカップ?」
 オレは思わずツッコむ。
「アンタ、それだけで十分なのか?」
「少し物足りん気がするが、まあいいや」
 そいつはノー天気に笑う。いいんだ。
 それより、オレには当初の目的、中心街に行くというものがある。こんな所で、赤の他人と話をしている場合ではない。
「オレ、用事があるから」
 オレがその場を立ち去ろうとすると、
「おい、これお前のじゃないか?」
 そいつの声がオレを呼び止める。振り返ると、そいつはオレの生徒手帳を手にしていた。そう言えば、Gパンのポケットに入れて、そのまま外に出たっけ。おそらく、さっき後ろにたじろいだ時に、外に出てしまったんだろう。
「サ、サンキュ」
 オレは生徒手帳を受け取る。拾ってくれたんだ。お礼は言わんとな。
「あれ、お前、その生徒手帳ってもしかして・・・・・・」
 オレの左手の生徒手帳を見て、そいつは何かを言おうとしているみたいだが、もうどっかに行きたい気分だ。オレは急ぎ足でこの場を立ち去った。
 この出会いが、オレの運命を大きく変えていたことも知らずにな。


 さて、オレは中心街に足を踏み入れたのだが、凄いなオイ。人が多すぎて、何かもう気持ち悪いわ。今日が休日ってのもあるみたいだが、他に行くトコとか無いのかね?オレも無いけど。そんなことはどうでもいいとして、ぶらりと歩いてみるか。
 オレがそんなことを考えながら街をぶらぶらと歩く。
 オレは街を何回も回っているのだが、その度に一人の少年が目に入る。少年は一人で、歳は七歳くらい。男の子ものの洋服を着て、駅のプラットホームの噴水の前のベンチにぽつんと座り、どこか物寂しげな表情をしていた。
 街を八回ぐらい回ったところで、オレはついに、少年に声をかける。
「お前、さっきから寂しそうな顔してるけど、どうしたんだ?」
 オレがそう聞くと、少年はオレの顔を見上げ、泣きそうな顔で口を開く。
「ママとはぐれちゃったの」
 えらく可愛い声だった。女の子に近い。
「そうか、ママとはぐれちゃったかあ」
 どうやら迷子らしい。
「お母さんと何処ではぐれたんだ?」
「わからない」
「わからない、かあ・・・・・・」
 オレは頭をかく。何処ではぐれたか分かればなあ。今頃、この子の母親も子供の失踪に気づいて、必死になってこの子を探しているんだろうが・・・・・・。
「よし、オレが一緒にママを探してやるよ」
 オレはとりあえず、この子の母親を探してやることにした。どうせ暇だしな。
 少年は半泣きの顔でオレの顔を見つめる。
「本当?」
「ああ、本当だ」
 少年を安心させるため、オレは善良な笑顔を作る。すると、少年も無邪気な笑顔をオレに見せた。純粋な、子供の笑顔だ。
 と言うわけで、オレは少年の左手を手に取り、二人で街を歩き始めた。少年の手は小さく、少しでも気を抜けばすぐに離してしまいそうだ。痛いかもしれんが、オレは少年の手を強く握る。痛くないか、オレは聞く。
 少年はオレの顔を見上げ、
「ううん。痛くない。お兄ちゃんが一緒にいてくるから」
 お兄ちゃん、か。オレには一つ年下の妹がいるが、物心が付いた頃には、オレ「兄貴」って呼ばれてたっけ?一回でもいいから、お兄ちゃんって呼ばれてみたかった。んで、その願いは今叶った。
 それはそうと、少年の名は「ひろむ」。ひろむ曰く、この街から少し遠くに住んでいて、ママと二人で電車で来たらしい。何処ではぐれたかは知らないが、ママがきらきらした石に夢中になってる時に、店の前を通りかかった笛や太鼓を鳴らす人たちに夢中になってついて行き、気が付いたら駅にいたらしい。
 ちんどん屋とランジェリーショップ。それだけで十分な手がかりだ。オレは道行く人の一人のサラリーマンに、ちんどん屋が通るルートにある宝石店が無いか聞いてみると、サラリーマンは、
「ちんどん屋が通るかは知らないけど、この街にはたしか、宝石店は一件しか無かったはずだが」
 それはありがたい。オレはサラリーマンにその宝石店の場所を教えてもらい、ひろむの手を強く握って、再び歩き出す。
「あっこの歩道を渡って、右に曲がる」
 オレはサラリーマンに指示された通りに歩を進める。あとはあの道を右に曲がれば、宝石店が目の前にあるはず・・・・・・?
 オレは今、一通りの少ない道を歩いている。その歩道を歩くオレとひろむの横に、時速八十キロはあろうスピードから急ブレーキして、いかにも怪しい感じの黒いワゴン車が一台が停まった。
 後ドアが開いて、いかにも雑魚キャラ的なちんぴらが五人出てきた。ちんぴらはオレとひろむを囲む。ひろむは泣きそうな顔でオレにしがみつき、オレはちんぴらを三白眼で睨む。
 すると、えらく髭が濃いちんぴらの一人がオレとひろむに歩み寄ってきて、にやりと笑う。
「お兄ちゃん。あんたが誰だか知らんが、オレ達はその子の親御さんに、引き取ってくれって頼まれたんだ。と言うわけで、そのガキを渡しな」
「お兄ちゃんってオレのことか?あんたみたいなおっさんにお兄ちゃんって呼ばれても嬉しくないんだが」
「そういう意味じゃねーよ!ガキって意味だ!」
「ああわかってるさ。冗談に決まってるだろ。それより、ひろむの親御さんに引き取るよう頼まれた?何か笑えてきた。もうちょっとましな嘘をつけよ。ちんぴらに自分の子供をまかせる親が何処にいんだよ!」
「だっ黙れ!つべこべ言わずに、石崎ひろむを渡せ!」
「誰が渡すかよ。てゆーか、ひろむを物扱いすんじゃねえ!」
 引けを取らないオレの姿勢に怒りを覚えたのか、よく喋るののかけ声と共に、ちんぴらが一斉に殴りかかってきた。まず、一人がオレの右頬めがけてパンチしてきて、オレはそれを軽々と避けて、そいつの右頬にカウンターパンチをお見舞い。次に、背後からひざげりしてきたのをひらりとかわし、顎にアッパーを入れる。続いてのヤツは木刀を振り回してきた。さすがに木刀を避けるのは至難の業。オレは逃げるをフリをしてもう一人の背後に行き、木刀を振り回してるヤツはオレに夢中で仲間に気づかず、そのまま振りかぶって、仲間の頭に直撃。やってしまった、て顔をしている間に、顎にアッパー。最後は、よく喋るヤツ。よく喋るだけで、普通に近づいていって、顔面ストレートをお見舞い。
 闘いの終わりに、敵の死体(?)。
 ん、待てよ?こいつら何でひろむの名字まで知ってるんだ?それに、一人の子供を何故誘拐する必要がある?
 オレは、背後でオレの勇士を見ていたひろむを見る。
 ひろむ。お前、何者だ?
 オレがそうひろむにそう聞こうとしたつかの間、黒い車の方から、野太い声が聞こえてきた。
「チッ雑魚共が。まあいい。あんな奴らなどに期待などしていない」
 野太い声は不気味に笑い声を上げる。車の前ドアが開き、中から身長が百九十センチはある肥えた三十代くらいの男が、不敵な笑みを浮かべて出てきた。よくワゴン車に入ったな。おい。
 デブ男はオレを指さす。
「さっきの闘いっぷりを見ていたが、お前、なかなかやるな」
「そりゃどうも」
 そりゃそうさ。オレはこれでも、大阪の中学校界で最も強い男と言われた男だ。人生の総喧嘩数1500。はじまりは、幼稚園から。地毛の茶髪が原因なのだが、全部勝つもんで大阪の教育委員会でのオレの評判は最悪。正直、東京に引っ越して良かった。
 デブ男はそれを聞き、より一層不敵な笑みを浮かべる。
「ほう。じゃあお前、オレ様が襲いかかってきても喧嘩をおっぱじめるだろうな」
「当然。まして、ひろむを守るためなら」
 そうだ。全然負ける気がしないが、仮にこのデブ男にオレが負ければ、ひろむはどこかに誘拐されることになる。そんなこと、絶対にさせねえ。
「と言うわけだ。でぶいの。まだひろむを諦めてねえってんなら掛かってこい。言っておくが、あんたが思っている以上に、オレは強いぜ?」
 オレが挑発すると、デブ男は突然げらげら笑い出す。
「強い?普通の人間程度で、よくもそんなことが言えたものだ。糞ガキ!」
 何を言っているんだ。普通の人間程度?
「糞ガキ。オレ様が大人の、いや真の恐ろしさってものを教えてやるよ!」
 デブ男は不敵に笑い、オレめがけて突進してきた。デブ男の動きは鈍く、簡単に避けることができた。
「これの何処が恐ろしいってんだ!」
 オレは直ぐさまデブ男に歩み寄り、デブ男の腹にパンチを入れた。
 しかし、パンチが直撃した瞬間、オレは鉄を殴ったような感触を感じを、デブ男の腹に感じた。オレのパンチに少しの衝撃も感じなかったらしく、デブ男は少しも動じなく、オレは後ろに吹き飛ばされた。
 オレは倒れた体を上げる。その瞬間、右拳に激痛が走った。一体どういうことだ?本当は鍛えていて、もの凄い筋肉の持ち主だったとしても、あれはちょっと堅すぎる。
「驚いたか?」
 そう言って、デブ男はにやりと笑う。オレは呆気に取られ、返答することが出来ない。
「どうせだから、死ぬ前に良い物を見せてやろう」
 そう言いながら、デブ男は服を脱ぎだす。出てきたのはデブ特有の厚い脂肪ではない。デブ男の腹は銀色に変色していて、金属のように光沢を帯びていた。ただの銀色の腹ではない。
まるで、鋼の鎧だ。
 オレの推理に、デブ男はにやりと笑う。
「その通りだ。オレ様は、人体に特殊な化学技術を施し、鎧の体を手に入れた、鎧人間なのさ!」
「鎧人間?ちょっと待て。人間の体をそんな風に改造出来る科学技術が開発されたなんて、ニュースで見たことなんか無いぞ!」
「当然だ。この技術はお前達一般人が住む表社会なんかに縁の無い代物。犯罪シンジケートの住む裏社会にあるからこそ、真の価値を表すのだ!」
 言っていることだ無茶苦茶だ。裏社会?犯罪シンジケート?何を言ってるんだこのデブは。「そんな技術が使われて犯罪が行われてるってんなら、既にニュースで公表されてるはずだ」
 いや。こんな技術が公表されれば、世間は混乱し、一般人の中から犯罪者に荷担する者がでるかもしれない。おそらく、そういった混乱を避けるために警視庁や政府がフィルターをかけてるんだろ。
 それより、問題はそこではない。その化学技術を使って、全身鎧化したデブだオレに襲いかかっている。コイツの言うとおり、普通の人間であるオレが勝てるはずがない。ここは逃げるというのが良策だろう。
 オレは目をつむって作戦タイムに入る。次にデブ男が突進してきた時、オレはそれを避け、デブ男が勢い余ってこけそうになっている隙に、ひろむを抱えて、一目散に逃げる。うむ、おそらく良策だ。
 しかしだ。オレの作戦なんか見抜いていたらしく、目を開いた時には既に、デブ男は姿を消していた。どこだ、どこに行った?辺りを見渡してもいない。
「お兄ちゃん、上!」
ひろむが大きな声で叫んだ。オレは上を見上げる。オレの頭上に、デブ男が大の字になっている。のしかかりをしてくる。それは一瞬の出来事だった。避けるにしても、鋼の重さを持つデブ男ののしかかりの速度はすさまじく、オレは全身押しつぶされた。
「ぐっはあ・・・・・・」
 やばい、肋骨が何本かやられたかもしれん。
 オレの上からどいてデブ男は立ち上がり、床に倒れ伏すオレを見ながら、デブ男はにやりと笑う。
「やはり、普通の人間だったな。ガキ」
 当たり前だろ。鎧人間なんかいてたまるかよ。
「さて」
 デブ男はひろむに顔を向ける。
「あのガキを連れて行くとするか」
 デブ男はずんずんひろむ近づいていく。
「待て・・・よ・・・・・・」
 オレはデブ男のズボンの裾を掴む。オレはまだ死んじゃいない。ひろむを連れて行くのは、オレを倒してからにしろ。
 デブ男は面倒臭そうに振り返り、オレを一瞥すると、
「わめくな、ガキが。今楽にしてやる」
 デブ男はオレに再びのしかかりをしてきた。今度こそ終わった。
 もう動くどころか、息すら出来ん。オレの目の前で、ひろむが連れて行かれる。
「お兄ちゃん!」
 ひろむはデブ男に抱えられ、オレに向けて手を伸ばしていた。オレは体を動かすことは出来ず、ひろむの手はオレに届くはずがない。ひろむワゴン車に放り込まれ、車は去っていった。
 悪い、ひろむ。負けてしまった。お前が何者なのか知らないが、お前を守らなきゃならんのに、オレは負けてしまった。もう、お前の手を強く握ってやれない。大阪の中学界で最強?子供一人守れないのに、何を言ってやがんだオレ。
 おそらく全身の骨が崩壊したかもしれん。オレ、死ぬんだ。明日入学式なんだが。オレ、死ぬんだ。
 畜生。力が欲しい。弱気者を守ることが出来る力が・・・・・・

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Up— posted by kouryu @ 11:18PM   Comment[1]  Trackback[0] 
第一話:出会いはけなし合い


東京から、爺ちゃんの運転する、村専用のワゴンに乗ること六時間弱、車の窓から映る風景は、大都会から田舎へと変わっていった。
こうして見ると、田舎の風景も、なかなか素朴で乙なものだ。世知辛い世の中代表とも言える都市、東京にしか住んだことのないオレにとって、緑の下敷きよりも良い目の肥やしになる。
だが、村にある高校へ転校ってのは納得がいかん。そもそも、オレが以前いた高校は、進学校として少しばかり有名で、部活動においても、それなりに優秀な記録をちらほら残していた。そんな高校で、それなりの学業成績を納めていたオレが、東京からかなり離れた、まして、定員割れか何かは知らんが、転入試験を受ける必要が無いってどういうことだ?その高校、学業レベルはどうなんだ?てゆーか、ド田舎の高校なんて、オレはごめんだぞ?
まあ、だからと言って、村の高校以外で、一番近くにある進学校に行くにしても、村発のバスに乗って、その高校まで五時間かかると言われちゃあ、諦めて村の高校を選ぶしか無いわな。ああ、オレの進路はどうなるのだろう・・・・・・?


そんなわけで、爺ちゃんの車は目的地の、谷地越村に着いたわけだ。
爺ちゃんは、オレの記憶上、爺ちゃんの家の前に、ワゴンを止めた。
「どうだ、相太。自然がたくさんある村だろう?」
オレがワゴンから降りると、爺ちゃんがはきはきとした口調で、そう聞いてきた。
オレは辺りを見渡す。辺り一面田んぼだらけで、草の生い茂った道は当然コンクリートで舗装されているはずが無く、全体的にでこぼこだった。そうか、車の中で揺れが激しかったのはそのせいか。そして、オレの記憶通り、九年ぶりに村に来たオレを歓迎するかのように、蛙の鳴き声が、やかましく鳴り響いていた。
「まあ、自然が多くて、良いんじゃねえ?」
半分嘘だ。自然に触れるのは良いことだが、完全都会っ子のオレにとって、不屈の自然より最先端の技術の方が、この世に必要な物だと考えている。
オレの嘘に気づくことなく、爺ちゃん満足げに、うんうんと頷いた。
オレは、左腕に巻かれた腕時計に目をやる。時刻は十時十五分。
「今日はもう遅い」、と爺ちゃんは言って、オレと母さんを爺ちゃんと婆ちゃんの家に招いた。オレが家に入ると、婆ちゃんが笑顔でオレ達を迎えてくれて、夕食を用意していてくれてた。
今日の献立は、まいたけの佃煮と、近くの川で釣ったらしい、わかさぎの天ぷら、他ごはんなど。正直うまかった。都会には無い、日本伝統の味、な気がした。だが、オレとしては、都会のごはんの方が好みかもしれん。
オレがごはんを済ますと、風呂に入るよう言われ、風呂場に行ってみると、テレビとかでよく見る、五右衛門風呂、というものが設置されていた。どうやって入るんだっけ?そのまま入っていいんだっけ?
とりあえず、ふたを取ってオレは湯につかる。しかしだ、底がとてつもなく熱い。オレは数秒もせず風呂から飛び出し、あまりの熱さに奇声を発した。
オレの奇声を聞いて、爺ちゃんが風呂場に急いでやってきた。オレが奇声の理由を説明すると、爺ちゃんは笑いながら、ふたの上に乗るのだと説明した。
・・・・・・先に言えよ。


明くる日の朝。オレは五時に、無理矢理爺ちゃんに起こされた。
「相太、水くみを手伝ってくれ」
爺ちゃん曰く、都会では当たり前の、水道ってものが谷地越村には設置されていないから、近くの川まで水くみに行かないといけないらしい。
いきいきとした表情で、鼻歌を歌いながら歩く爺ちゃんの後ろを、眠たい目をこすりながら、オレは桶を担ぎ、とぼとぼ歩きでついていく。
そして、村で一番近くの川に着いた。んー、一番近くと言っても、村から一キロはあったかもしれんな。
さて、これからが大変だ。行きはそこまで重くなかった桶も、中に水を入れれば何十キロもある、とてつもなく重い物体と化すのだ。
「ふんがあぎごご」
行きが一キロなら、もちろん帰りも一キロだ。オレは変な奇声を発しながら、家への道の森の中を辿っていく。
「相太、良い体格した若造が情けないぞ!爺ちゃんがお前くらいの歳の時なんか、お前の十倍の速さで、その桶を運んでいたぞ!」
「はいはい、ちゃっちゃと運べばいいんでしょ?」
そう言ってはみたものの、さっきから全然運べてないような気がする。
・・・・・・ダメだ、腕がもげる。痛すぎてもう運べない。
100メートル進んだ所で、オレは桶を置いて、座るのに丁度よさそうな岩に座り込んだ。
「相太、若者がそんなんでどうすんだ!」
「ごめん、爺ちゃん。東京もんのオレには、これが限界だ」
もう、運べない・・・・・・
「相太、お前が運んでくれんと困るんだが。わしだってもう歳だ。もう限界だ」
「じゃあ、今まではどうしてたの?」
「お隣の、村本さんに手伝ってもらってたんだが、相太が来ることになったから」
困るよ爺ちゃん。オレに変な期待をかけないでくれよ。
何時までも爺ちゃんを待たせているわけにはいかないので、オレを置いて、爺ちゃんには先に行ってもらうことにした。情けないな、オレ・・・・・・
もう嫌だ。オレの田舎生活は、初日で挫折を迎えた。爺ちゃんには悪いが、もう少し休ませてもらおう。
「ねえ、そこに座られると邪魔なんだけど」
背後で、声が聞こえた。オレはすぐさま、後ろを振り返る。
振り返った先に、少女がいた。しかも、中々の美人だ。ストレートロングの茶髪をポニーテールに束ね、強気な表情をして、オレが隣に置いているのと、同じ桶を所持していた。
「わ、悪りい」
オレはすぐに立ち上がって、その子が通れるだけの道を作った。その子は不機嫌そうな顔で、桶を軽々と担いで、川のある道を歩いていった。
さすがに、あの子がここに戻ってきた時にオレがまだいたらまずいな。だが、さすがに疲れた。もうすこし休ませて・・・・・・
「だから、邪魔なんだけど」
!?オレの頭の中で、この二つの記号が思い浮かんだ。つまり、びっくりしているし不思議がっている。オレが川からここまで来るのに、二十分はかかったのに、あの子は十分もたってないんだぜ?あれ、もしかして、オレ女子に負けた?
「ご、ごめん・・・・・・」
当然、敗者は黙って退くしかないのさ。そう、退くしかないんだ・・・・・・
その子は再びオレの横を通り過ぎる。不機嫌な顔は変わりない。
すると、その子は二メートルオレと離れた所で、オレの方を振り返った。そしてだ、オレをあざけ笑うかのようなにやけ顔で、人差し指でこめかみを叩き出した。つまり、オレバカにされてる。最後に鼻で笑った。
これはさすがにムカついた。この女に負けるのだけは自分のプライドに反する気がし、オレはすぐさま桶を担いで、急ぎ足でその女に追いつき、やがて追い抜いた。
悔しかったから、オレは横目でその女を見て、鼻で笑ってやった。それを見た女の方も、オレの笑いにいらつきを覚えたらしく、ムッとした表情で、オレを追い抜いた。
その後、オレ、そいつ、オレ、そいつの順番で先頭を争い、いつの間にか、爺ちゃんちに着いていた。
「おお、梢ちゃんのおかげで、相太もちゃんと辿り着いた」
家の前で、爺ちゃんが待っていた。・・・・・・梢ちゃん?
「ああ、紹介がまだだったな」
爺ちゃんは少女に掌を向ける。
「彼女は、村本さんのとこの娘さん、村本梢(むらもとこずえ)ちゃんだ」
「村本さん?ああ、お隣さんの村本さん?」
爺ちゃんは首を前に傾ける。
オレは梢を見る。梢は、オレを睨んでいた。オレの鼻笑いが気に食わなかったのだろうか。
「アンタが、東京から来た転校生ってヤツ?」
梢が口を開く。
「そうだけど?」
「一言で言うと、気に食わない」
何ですと?
「アンタさ、男のくせに、私がいちいちけなさないと、水を桶一杯分も運べないわけ?男が引っ越してくるらしいからどんな豪傑が来るのか期待していたのに、がっかり」
「悪かったな。現代の男ってのは、軟弱なのが普通なんだよ。今時、昭和にいそうな男なんて、逆に不自然なんだよ」
オレの返しに、梢はさらに不機嫌そうな顔でオレを睨む。
「なっさけない!アンタなんか、来週にはどうせ山中で餓死して、畑の肥料になってるから!」
捨て台詞をはいて、梢は水の入った桶を担いで、逃げるような早走りで、隣の家に入っていった。そうか、あそこアイツの家か。
てゆーか、何て捨て台詞をはきやがるんだ、アイツ。人間を畑の肥料って、どれだけ恐ろしい村なんだよ、ここは?


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Up— posted by kouryu @ 08:27PM   Comment[0]  Trackback[0] 
[ あいさつ]2007年03月23日
はじめまして、朱雨と申します。
折角ブログを作ったので、小説を公開してみようと思いました。
あまり長い挨拶は出来ないけど、ちょこちょこ更新していく予定なので、小説の感想とかありましたら、是非お願いします。
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Up— posted by kouryu @ 02:32PM   Comment[0]  Trackback[0] 
誰もが認める童顔美少女だが、天然をはるかに越えて、もはや変体の域に達しかけている少女、大田小雪(おおたこゆき)十五歳、通称「タコ」。
運動神経抜群だが、成績がよろしくない、脱力系少年、山木真治(やまきしんじ)十五歳(ちなみに、タコというあだ名は真治が付けた)。
二人は高校で同じクラスになり、小雪は真治にベタ惚れし、真治は一方的に付き合わせるハメに。
それ以降、小雪が問題を起こす度に、真治が頭ぐりぐりでおしおきをする毎日。
しかし小雪には、自分でも知らない秘密があった。
彼女には、シャーロック・ホームズに匹敵する、探偵の才能が備わっていたのだ・・・・・・!

探偵少女小雪と、助手真治が、現代に存在する難事件に挑む!
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Up— posted by kouryu @ 08:26PM   Comment[0]  Trackback[0]