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November, 2008
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祈りを終えた男が振り返ると、レニッシュが恐ろしい形相で睨みつけていた。

「なんだ、その顔は?何を怒っている?」

心当たりなど検討もつかないという感じで男はレニッシュに尋ねた。

「かあさまは色々と教えてくれたんだ。でも・・レニが聞いてなっただけなんだ・・・。」
「だからかあさまを悪く言うやつは、誰だって許さないんだから!!」

どうやらサリカの悪口に腹を立てているようだ。
涙ぐみ必死に怒るレニッシュを見て男が話しかけた。

「そうか、悪かったな。まさかキミがそんなに怒るとは思わなかったよ。」
「キミがそれ程怒るって事は、いい母親だったんだろうな彼女は・・・。」

予想に反して素直に謝る男にレニッシュは少し驚いたような、恥ずかしいような、複雑な表情を見せた。

「ちょっと羨ましいよキミが。」
「世の中には誇りに思えないような親も沢山いるんだよ。」
「そう言う親を持った子供は不幸だとは思わないかい?」

言葉の意味が判らず、けげんそうな顔をするレニッシュの頭を、男は少し悲しげな表情を浮かべながらやさしくなでた。

「おっと、それでそのかあさまはどこにいるんだい?」

本来の目的を思いついたのか、男がレニッシュに尋ねる。
目をそむけたい現実に気づかされ、我に返ったレニッシュは奥のほうに駆け出した。

「かあさまっ!」

レニッシュが駆け寄ったその場所には、ブルネイとは違う人影が横たわっていた。
わあっと泣き崩れ、そこに倒れこむレニッシュを見ながら男がうわ言のようにつぶやく。

「おい、嘘だろ?まさかこんなクズのような男にやられたのか・・・?」

信じられないといった様子で、男がゆっくりとサリカに近づこうとしたその時、入り口から低く落ち着いた声が耳に飛び込んできた。

「こっちは大体片付いたぜ、リーンハルト。」

リーンハルトと呼ばれた男は、呆然としながら声のほうに足を向けた。
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Up— posted by 草場妖 @ 05:35PM   Comment[0]  Trackback[0] 
「誰だ、お前!こいつらの仲間か!?」
「おいおい、こんな賢そうでカッコイイお兄さんが、盗賊に見えるのかい?」

飄々と答えた男はまるでレニッシュに関心がないかのように、ズカズカと彼女の前を横切るとブルネイの前に座り込んだ。

「あらら、ひどいなこりゃ。ぐちゃぐちゃだ。」

そう言い放つと男はスクッと立ち上がり、少しだけ体をひねると肩越しに頭から足の先までレニッシュを一瞥した。

「キミ、レニッシュだろ?」

名前を呼ばれ驚くレニッシュ。

「どうして私の名前を!」

とっさの事で失われていた警戒心がようやく働いたのか、半歩ほどすばやく後ずさりすると、レニッシュは武器を身構えた。
いや、身構える筈だった。
しかし構えた筈の武器はまるで意志でも持ってるかのように重く、そこに留まる事を主張した。
つい先程までその重さを感じなかった筈の武器が、ズシリとレニッシュの小さな手にのしかかる。

「あ、あれ。」

どうにか思い通りに武器を動かそうともがくレニッシュの様子を見ながら、男は大きくため息をついた。

「はぁ〜、だから俺はサリカには無理だっていったんだ。」
「言葉より先に剣を抜く女に育てられたら、こういうお馬鹿さんな子に育つ事は判っていたはずだ。」

お馬鹿さんと呼ばれムッとするレニッシュ。
男はレニッシュをもう一度見直すと、また大きくため息をついた。

「だいたいそんな体に合わない武器を振り回しても、ねずみ一匹殺せはしない事になぜ気づかない?」
「全くサリカは何を教えていたんだ。」

独り言のようにぶつぶつと文句を言っていた男は、何か気づいた様子で振り返りブルネイを見た。

「まあ。ブタは殺せたみたいだけどな。」
「おっと失礼。神の御傍にあらんことを・・・。」

自分が何者か自覚したのか、男はブルネイに祈りを捧げた。
それが本当に心から祈っていたかどうかは別として…。
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Up— posted by 草場妖 @ 02:03PM   Comment[0]  Trackback[0] 
肩で呼吸しながら呆然と立ちつくすレニッシュの足元に、どす黒い液体がテカテカと輝きながら迫ってくる。
まるで生き物のようにゆっくりと近づいてくるそのものを眺めながら、頬に付着した同様の生暖かいものをゴシゴシとふき取った。

どれくらいの時間が経ったのだろう、その時は一瞬でも永遠でもあった。
横たわった憎むべきものの末路を呆然と見つめるレニッシュ。

「人を殺した感想を聞いておこうかな。」

背後から不意にかけられたその軽薄な言葉は、レニッシュを虚無の世界から現実に引き戻すのに充分事足りた。
驚き振り向いたレニッシュが見たのは、年の頃は二十歳前後の知的そうな男だった。
髪は少し薄めの金色で、肩までのストレートヘアー、そしてレニッシュが今まで見たことのない立派な白いマントを羽織っていた。
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Up— posted by 草場妖 @ 10:25AM   Comment[0]  Trackback[0] 
「ガリガリガリ」

床を引きずる嫌な音が部屋中に響く。

「うわぁぁあぁ」

狂気にも似た叫び声がレニッシュの口から漏れた。
遠心力をつけながら振り回した無骨な棒状の武器がふわりと地面から浮いた。
体を大きくひねり、自分の体重と同じくらいのこの武器にレニッシュが体重を加える。
それは大きな破壊力へと変わり、虫のように地面に這いつくばっているブルネイの後頭部をとらえた。

<砕牙刀>、鋭く欠けた大きな石をいくつも並べ、二枚の長方形の板で挟んだこの無骨な武器は、これまで数々の罪もない子供たちにその牙をむいた。
しかしこの忌まわしき牙が求めた最後の獲物が、まさか自分自身になろうとは最後の断末魔をあげるまで、ブルネイが予想することは出来なかっただろう。

「あ」

これがいくつもの罪のない命をもてあそび奪いとった男の最後の言葉となった。

「グシャ」

小さく、そして鈍い音がすがすがしい朝日が射し込む部屋に響きわたった。
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Up— posted by 草場妖 @ 10:53AM   Comment[0]  Trackback[0] 

 
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