さて、盗賊家業を始めた私にも一つ目的が出来た。
それは家を買う事だ。
あまり高い家で無いならば夢ではない。
そうして新たな目標の元に窃盗を繰り返していると、再び依頼が来た。
今度はしっかりした依頼だと良いのだが。
半信半疑のまま、私はアーマンドの元へと向かった。
「今度のターゲットは、ラザーサ・イングリスの頭像だ。」
出会い頭にアーマンドはそう言った。
詳しく聞いたところ、シェイディンハル(町名)に
エルフが彫った高価な頭像があるとの事。
それを見つけ出し持ち帰るのが今回の任務だというのだ。
ちなみに報酬は100ゴールドらしい。
今度はしっかりとした依頼の様だ。
私はすぐに引き受けると、シェイディンハルへと向かった。
シェイディンハルに着いた私はまず乞食に聞き込みを始める。
詳しい場所を突き止めなければならないからだ。
その結果、次の二つの事が分かった。
?インダリス伯爵という人物が最近頭像を注文し、
聖堂地下墓地のザーサの墓石の側に安置した
?幽霊が出るという噂があり、入り口は見張られていて入れない
幽霊というのは恐らくただの噂だろう。
問題は見張りが何人いるかだ。
一人や二人なら何とかなるが、それ以上だと少し厄介だ。
とりあえず聖堂へ行ってみるとしよう。
聖堂へ行くと、正面に二人衛兵が立っている。
やはり正面からは無理のようだ。
・・・と思ったのも一瞬で、すぐに裏口を発見した。
しかも見張りが居ない。
何というか、思わず笑ってしまう。
聖堂へ入った私は真っ直ぐに地下へと向かった。
鍵が掛かっていたが、いつものごとくすぐに外す。
地下墓地の中はとても暗い。
蝋燭が何本か立っているが、気休めレベルだ。
ただ、部屋自体はそれほど大きいわけでもないので問題ない。
すぐに頭像を見つけた私は、それを持って出ようとする。
その瞬間、後ろに人の気配がした。
瞬時に私は横へ飛ぶ。
振り向くと、男が一人剣持って向かってくる。
どうやら雇われた傭兵の様だ。
何故今日に限って傭兵がいるのかは不明だが、
とにかく切り抜けなければならない。
私はすぐに剣を抜いて応戦する。
それほど強い相手ではないが、いかんせん狭くて戦いずらい。
そう思っていると、前から火球が飛んでくる。
火球は傭兵の背中に命中し、傭兵は倒れた。
仲間が放ったものが当たってしまったのだろうか?
そう思い男の向こう側を見、私は絶句した。
どう見ても幽霊としか思えないモノが、そこにいたのである。
まさか本当に居たとは思わなかった。
幽霊はこちらを凝視しており、気のせいか怒っている様にも見える。
墓を守る亡霊というわけか。
私は剣をもう一度握りなおし、敵の攻撃に備えた。
今私が装備しているのは帝国兵から奪った銀のロングソード。
これならばダメージを与えられるはずだ。
再び幽霊の放った火球を避け、一気に相手へと詰め寄る。
そして渾身の一撃を放った。
一撃を受けた幽霊は解ける様に崩れ落ち、液体になった。
思ったよりもあっけない。
私はその液体をビンにつめ持ち帰る事にした。
何かに使えるかもしれない。
こうして私は無事に頭像を手に入れた。
頭像を手に入れ波止場地区へと戻ってきたが、様子がおかしい。
そこらじゅうを帝国兵が闊歩しているのだ。
何事かと思っていると、以前盗賊ギルドに入る時に争った
メスレデルが現れた。
後で分かった事だが、彼女もギルドに入っていたらしい。
メスレデルに話を聞いた私は、驚くべき事を聞いた。
何と、今回の依頼はアーマンドをはめる為の罠だったというのだ。
依頼主など存在せず、さらに内部の人間が
帝国兵に情報を流していたらしい。
そのスパイの名前はミヴリーナ・アラード、
ギルドの中でも結構古くからのメンバーなのだそうだ。
アーマンドは頭像窃盗で告発され、表に出てこれない状況との事。
どうするのだと私が聞くと、メスレデルはアーマンドからの指令を話した。
今波止場にはヒエロニムスが来ており、
さらにミヴリーナもここのスラム街に住んでいるというう。
それを利用し、ミヴリーナを潰せとの事。
まず私がミヴリーナの家に忍び込み、頭像をその家の棚に置いておく。
そして、ヒエロニムスに彼女が犯人だと話すのだそうだ。
うまくいけばミヴリーナは犯人として捕まる・・・という作戦である。
作戦を聞いた私は、すぐに実行に移す事にした。
ミヴリーナの家にはすぐに入り込めた。
メスレデルが兵士の気を引いてくれていた為だ。
ミヴリーナはベッドで寝ているが、こちらに気づいた様子は無い。
盗賊ギルドのメンバーらしくない無用心ぶりだ。
掟で安心しているのだろうか?
・・・私の様に問答無用で盗みを働く輩もいるというのに。
私は頭像を置くと、すぐにヒエロニムスの下へ向かった。
ヒエロニムスはスラムの中央で兵士達に指示を出している。
私はヒエロニムスに話しかけ、ミヴリーナが犯人だと伝えた。
「何!?
馬鹿な、あの女は・・・。」
そう言って驚くが、すぐに思い直した様に家へと向かった。
家へ着きヒエロニムスがドアをノックすると、ミヴリーナが顔を出した。
ヒエロニムスは何も言わずに入り込み、中を調べ始めた。
ミヴリーナがやめろというが聞かない。
しばらくすると頭像が出てきた。
「これはどういう事だ?」
頭像を見たミヴリーナは驚いた顔をし、私の方を見る。
「そいつはギルドの人間だ!
私をハメようとしてるんだよ!」
ドキリとするが、あくまで平静を装う。
私がギルドの人間だという証拠は無いはずだ。
「・・・どちらにしろお前は用済みだ。
その男の言うとおりならお前は我々を裏切った。
お前の言葉が真実でも、既にお前の事がグレイフォックスには
バレているという事になる。
潮時だな。」
なるほど、ヒエロニムスが驚いていたのはミヴリーナを
送り込んでいた本人だからという事か。
「そんな!
ずっと情報を流していた私を捨てる!?
そんな事が許されると思ってるのかい!?」
ミヴリーナがわめき散らす。
五月蝿い奴だ。
「黙れ。
お前をラザーサ・イングリス頭像窃盗の罪で連衡する。」
喚き散らすミヴリーナを連れ、ヒエロニムスは出て行った。
何か言われると思ったが、彼は私には一瞥しただけだった。
その日の夜、私はアーマンドに今回の報告をしていた。
「すまなかったな、お陰で助かった。」
アーマンドは私に礼を言い、私がさらに一段階昇進した事を話した。
これからは、レヤウィンのダル・ジーとも盗品の取引ができるという。
さらに、依頼を受ける人間も代わるそうだ。
次からはブラヴィル(町名)にいるスクリーヴァから
依頼を受けろとの事。
少々寂しい気もするが、昇進は素直に喜んでおこう。
こうして、私はさらなる昇進を目指しスラムを後にした。




