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<title>創作小説愛好会書読会</title>
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<copyright>Copyright &amp;copy; 2003-2006 by 創作小説愛好会書読会/Surfersparadise All Rights Reserved.Since2003/5/2</copyright>

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<title>書読会とは</title>
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<summary type="text/plain">←書読パンダ（当サイトのマスコットキャラ）</summary>
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<dc:subject>未分類</dc:subject>
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<![CDATA[<img src=http://sou-zou.com/uploads/photos1/17.gif>←書読パンダ（当サイトのマスコットキャラ）　１９９６年よりオフラインにて書読会という創作小説サークルの活動を行っております。　社会人を中心とし、まじめな作品を手に取りやすい気軽な冊子として発行していきたいと活動をしております。　当会ではプロへのサポートはしておりません、ただし、プロになる為の踏み台にしていただく分は全く構いません。<br>書読会ミラーサイトは<A href="http://syodoku.web.fc2.com/">こちら</A><br>みんなで物語を作ろう掲示板ただ今みんなで話を作ろうという企画をしています。<a href="http://www.attedea.jp/room/mindshare/swf/mindshare.php&amp;#63;msid=1854&amp;userid=1459">現在のイメージ</a><br>アイディア投稿先↓<script type="text/javascript" language="javascript" src="http://www.cgi25.jp/sf01/usr/01000140/bbs.js"></script><br>書読会については<a href="http://blog.surpara.com/syodokukai/archive/2015/01/5777_2.html">NEXT</a>へ。<nextPage>　書読会は趣味の会です。　全ての人間が、なりたいものだけになったら、この世は成り立ちません。<br>　生産者がいて、製造加工の方がいて、運送業の方がいて、販売する方がいて、皆が嫌がるような仕事を引き受けてくださる方がいる。 <br>　　いろんな職業の方がいるおかげで我々は快適な生活を送ることが出来るのです。　そんな一生懸命働いている方の意思の主張、ストレス発散の場であればいいと思っています。　社会人の草野球チーム、バレーボールチーム等々…色んなアマチュアの大会があるんだから、小説だってアマチュアが一生懸命取り組む場があってもいいと思うんです。<br>　日ごろは頑張って仕事をして、あいた日に好きな小説を書く。　締め切りに追い立てるようなものではなく、執筆者が生きる上での大切な場所として必要にしていただけるような場所を提供したいと思っております。<br>　自分の作品を少しでも多くの方に読んでもらいたい、書読会の趣旨に自分もも同感だ、自分の作品を本として残したい、読んでもらいたいという方、参加しませんか？<br>　貴方のご入会心よりお待ちいたしております。]]>
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<title>春の午後</title>
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<summary type="text/plain">彼女と目が合った。</summary>
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<dc:subject>星先ひとで</dc:subject>
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<![CDATA[彼女と目が合った。　春休み、友達はみんな帰省していて遊べない。　退屈だったから、とりあえず環状線をぐるぐると回ってみる。　その３周目、高校の時のクラスメイトが乗ってきたんだ。　タンポポのようにふわりふわりと、でも元気よく笑う子だ。　３年前の卒業式よりも、キレイな女の子になっていた。<br>　挨拶もそこそこに、イチカバチカ。「俺、前からお前のこと好きだったんだ。つきあわねぇ？」「うん、いいよ。私も昔、君のこといいなぁって思ってたんだ」<br>　ラッキー。何事も言ってみるものだな。　退屈な春の午後も、楽しいひとときに変わる。　そのまま環状線をぐるぐる回る。　他愛のない話で盛り上がってさ。　彼女のタンポポのような笑顔に酔いしれていた。<br>　そして夜になり、何週回ったかも分からなくなった頃。「じゃ、別れようか」「え！？　何だよそれ？　昔俺のこと好きだったって言ったじゃん」　突然の別れ話。あんなに楽しそうに笑顔ふりまいてたくせに。<br>「だって、今日はエイプリルフールだよ♪」<br>　まじかよ。してやられた。　彼女のタンポポのような笑顔は、綿毛のようにふわふわと飛び去っていった。　ぐるぐると回る退屈な環状線。退屈な春の午後。<br>]]>
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<title>Ｅａｓｅ　ｇｏｉｎｇ</title>
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<summary type="text/plain">　目覚めが良かった。俺にとっては年に一度、あるか無いかぐらいの目覚めの良い朝だった。</summary>
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<dc:subject>高原慧志</dc:subject>
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<![CDATA[　目覚めが良かった。俺にとっては年に一度、あるか無いかぐらいの目覚めの良い朝だった。　そのうえ運も良い。カーテンを開ければ外はいい天気だし、フレンチトーストもハムエッグも綺麗に焼けて、コープのクーポン付き新聞広告も二枚入っている。　食後のコーヒーも、コーヒーメーカーが入れた割りには思わず呟くほど旨かった。とてもスーパーで買った一番安かったブレンドとは思えないほどに。「…降水確率は、午前後後を通してゼロパーセント。最高気温も昨日と比べ五度から七度は高く、久しぶりに重いコートから解放されそうです…」　無意味な微笑みを張り付けたリポーターが伝える。「うぇざーりぽーと」も、楽しそうな今日を予言している。　さて、と…　一時限目のドイツ語と二時限目の商法総論。辞書やら資料やら重いテキストが多い講義の準備をしていると、改めて思い立つことがあった。　今日は気持ちのいい日だ。　付けっぱなしのテレビのなかでは、相変わらずの笑顔を振りまいて、リポーターが好天を強調している。財布のなかにはおととい入ったばかりのバイト代がある。多少の贅沢には耐えられるだろう。　気がつくと一人頷いていた。　デイパックをひっくり返す。独和辞典や六法全書をほっぽりだして、改めて外出準備。　読みかけの文庫本に、買ってから一度もＣＤを換えたことのないディスクマン。とりあえずこのふたつをデイパックに突っ込む。　部屋を見渡してみるが、散らかってるのが手伝っているのか邪魔をしているのか、結局持っていくべき物は最低限の暇つぶしグッズの他にはなかった。　何となく物足りない。そんななか思いついたことがあった。<nextPage>「どーすっかなぁ」　自分の言葉ながら、なんてわざとらしいんだろうと恥ずかしくなる。頬の当たりがとても熱い。　脱ぎ捨てたままのジーンズを投げ捨てて受話器を取る。最初っから、少なくとも頭の隅っこにはあったプランにしたがって。それでも、何も見なくても正しい番号を打てるのには、今まで気付くかなかった。　いつの間に？　…ま、いいさ。「はい、もしもし？」　眠そうな声、それも予想済み。相変わらずの低血圧、大変だね。「ほっといて」　たった一言で気付いてくれる。いつものことなのに、今日は素直にうれしい。「こんな朝早くに何の用なの？モーニング・コールなら頼んでないわよ」　暇つぶし…って言ったら怒る？「別に。ただ電話が切れるだけよ」　それを怒るって言うんだよ。イイ天気だから、どっか行こうと思って電話したんだけど。「ふーん、言ってらっしゃい。気ィ付けてね」　…なんてお約束なりアクション。それはないんでないかい。「だってぇー、アタシ眠いしぃー」　似合わないっスよ、ダンナ。「じゃ、おやすみ」「わぁーっ！すいません、スイマセン　可愛いっスよ、お嬢様ァ」　マジで焦ってる自分に気付いた。<nextPage>「…で。とてもいい天気なので、お出掛けでもしたいなぁーと思ったんですけど。…出来れば一緒に」「ふーん、一緒にねぇ」　オイ。そこだけ取んなよ、頼むから。　受話器の向こうでカーテンの音が聞こえた。そのあと、しばらくの沈黙。「ねぇ、どこ行くの？」「ん？とりあえずノエルかなあぁ。ゆっくりするのが目的だし」　ノエルってのはなかなか良いコーヒーを飲ませるサ店、レンガ造りの新しいところだ。「おごってくれるなら、つきあったげるよ」　また沈黙。「イヤなら別にいいんだけど、アタシは」　ま、いいさ。なにせ外はいい天気。フトコロも…ちょっとは温かい。「わぁーりました。んじゃ、いつ、どこで待ち合わせましょ」「ノエルでいいんじゃない。時間は十時頃」「…また、えれー先で」「女の子が、しかも起きたばっかりなんだから、時間かかっても不思議じゃないでしょ。それとも、なんか文句ある？」「なぁーんも、ないです」　ホントにないです。「じゃ、ノエルで」「じゃあ、二時間後にね」　やなやっちゃ。「んじゃ」「ハイハイ」　予定通りなのに気が抜けた。…ま、良いか。　とりあえずデイパックに入れる物が浮かんだ。彼女に借りてたＣＤ。ずいぶん長いこと俺のとこにあったやつだ。　テレビのなかでは相っ変わらずリポーターが喋りまくっている。今日はいい天気だと、再確認できる。　ま、いいか。悪い要素は多分無い。良い天気に、いい女。「…いい女、か」　ま、いいさ　なんたって、今日はいい天気だ。　玄関の鍵を確実に閉める。電車で十五分、徒歩で一時間チョイ。もちろん歩くさ。　気楽に行けば何か良いことがあるさ、こんなにも天気のいい日だし。　足取りは軽い。<br>　テレビを消し忘れたのに気が付いたのは、ノエルが視界に入ったときだった。]]>
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<title>僕が生まれたあの日のこと</title>
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<summary type="text/plain">　もうそろそろ出てもいいかな。ここはとても暖かくて居心地がいいんだけど、最近ちょっと窮屈になってきたんだ。前みたいに手や足を伸ばしたりできないし、頭を動かそうにもかっちり押さえ込まれて身動きが取れない。とにかく少し前まではゆったり泳げていたのに、今ではちょっと向きをかえるだけでもかなりしんどい。</summary>
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<dc:subject>稲井真雪</dc:subject>
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<![CDATA[　もうそろそろ出てもいいかな。ここはとても暖かくて居心地がいいんだけど、最近ちょっと窮屈になってきたんだ。前みたいに手や足を伸ばしたりできないし、頭を動かそうにもかっちり押さえ込まれて身動きが取れない。とにかく少し前まではゆったり泳げていたのに、今ではちょっと向きをかえるだけでもかなりしんどい。　それにそろそろ外の景色を見てみたくなってきたんだ。前は「気持ちよくてサイコー。一生ここにいたいね」なんて思ってたけど、ずいぶん長い間ここにいると近頃だいぶ飽きてきた。毎日毎日景色に変化はなくて、まあ少し明るくなったり暗くなったりするくらい。それに引き換え外からはいつもいろんな音や人の話し声が聞こえてきて、なんだか楽しそうだ。笑い声が聞こえてくると「何だよ、僕にも見せてくれよ」って思っちゃうし、変な物音がするとどきどきして耳を澄ましてしまう。ほんと、よく聞こえるんだよ。でもその正体がなんだかわからないから、いつも一人で寂しい思いをしてしまう。　そして何より、自分の力を試してみたいんだ。長い時間をかけて僕はここまで大きくなった。いつの頃からか耳が聞こえるようになったし、目も見えるようになったよ。最近はおしっこだってしちゃうし、指しゃぶりにハマッてる。結構いろんなことができるようになったと自分では思ってるんだけど、それが実際どのくらい通用するのか、実はよくわからない。だからそれを外でやってみたいんだ。そして外の人たちに見てもらいたい。そろそろいいかな、と思うんだよ。<nextPage>　何日か前に、あの日も居心地の悪さにちょっと鬱々としていたときに、僕は聞いたんだ。「もういつでも出てきていいよ」　その声の主を僕はよく知っている。お母さんだ。「早く生まれておいで。待ってるよ」　その人はいつも僕のすぐ近くにいる。そしていつも僕に｢お母さんよ｣って話しかける。僕が調子に乗って壁を蹴ると、外から壁を蹴り返してくれて答えてくれる。たまに歌も歌っている。とても気持ちのいい歌。暖かい気持ちになっていつも眠くなってしまう歌。だから実は最後まで聞いたことがない。　その人はきっと僕を守ってくれるに違いない。外に出て困ったことがあっても、その人が助けてくれるに違いない。なぜ僕がそう確信できるかといえば簡単だ。お母さんがいつもそう言っているからだ。「それがお母さんの役目だよ」って言っているからだ。　その声を僕は物心ついたときからずっと聞いている。いつでもどんなときでもいちばん近くに聞いている。「顔を見せて。早く会いたいよ」　僕だってそう思っている。どんな顔をしているのか、会ってみたい。声とおんなじ、優しい顔かな。　でも、躊躇した。外に出たいとはそれまで漠然と考えていたけど、実際外に出られるとなるとちょっと怖い気もする。外はここみたいに暖かくて快適かな。怖かったり痛かったりしないかな。などなど、いろんな心配がどっと出てくる。　そして数日間考えた。どんどん窮屈になるこの場所でじっと考えた。　このままいつまでもここにいるわけにはいかない。それは明らかだ。僕はどんどん大きくなる一方で、以前は僕に合わせてどんどん広くなっていったこの場所は、最近はもうほとんど変化がない。手も足も頭も動かせない。まだ平気だけどそのうちこのこともきっとストレスになるだろう。それにどう考えても外の方が刺激的で魅力的だ。ここにいるのは一人ぼっち、でも外にはきっとたくさんの人がいる。そして何より、外に出ればお母さんの顔を見ることができる。困ったときはお母さんが助けてくれる。だからきっと大丈夫。<nextPage>　僕は決意した。外に出よう。そうと決まれば早い方がいい。お母さん、外に出るから合図をするよ。だから助けて。僕が外に出るのを助けて。 　 　今日までおなかの中でよくがんばってくれたね。もうすぐ会えるよ。<br>　赤ちゃんの心音だけが分娩室の中で大きく響く。とても早い鼓動。おなかの中で確かに生きている証拠。　その生命の証が緩やかに音を弱めた。「赤ちゃんの心音が下がっているよ！　酸素が足りなくて赤ちゃんが苦しい思いをしているよ！　しっかり呼吸して！」　早く浅くなっていた呼吸を整える。大きく吸って、大きく吐く。唸り声まで一緒になって出る。もう一度、吸って吐く。再び心音はさっきまでの力強さを取り戻す。<br> <nextPage>　もうにっちもさっちもいかなくなった。前へ進むのは窮屈で息が止まりそうだ。でも戻る方法もない。先へ進むしかないなら少しでも早い方がいい。覚悟を決めてふんばった。ちからいっぱいのびをした。 　保育器の中で細い手足を縮めて泣いているのは、数時間前までひとつの体を分け合っていた小さな人間。小さな頭、小さな胴体、真っ白い産着の中にまるで埋もれているようだ。こんな小さな体を私は今までに見たことがなかった。あんなに細い指もあんなにしわだらけな顔も、想像していた以上に｢人間｣だった。　だんだんその顔は穏やかになり、いつしか泣くのをやめてしまったようだ。相変わらず目は開けない。そのまま唇を閉じ、縮めていた手足を緩める、眠り始めた安らかな顔。　そして一瞬まぶたを開く。どこを見るでもなく本当に一瞬、再びまぶたを閉じたら、ガラスの向こうでもう微動だにしない。「お母さんよ」　私はそっと言ってみる。自分のその声を自分で聞いた。私がお母さんよ。私がずっと守ってあげる。あなたが私を必要としてくれる間、私があなたをずっと守っている。だから私をお母さんと呼んで。｢お母さんよ｣　その声はガラスに反響し、私を包んだ。<br>静止画像のようなその顔を私はじっと見つめていた。 ]]>
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<title>妖倖</title>
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<summary type="text/plain">時刻は午前零時。けれど、街に真夜中なんて関係ない。ネオンの輝く通りを人々は流れるまま行き交う。酒臭く淀んだ大気を泳ぐ群れ。私もその中の一人だ。</summary>
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<dc:subject>蓮弌</dc:subject>
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<![CDATA[時刻は午前零時。けれど、街に真夜中なんて関係ない。ネオンの輝く通りを人々は流れるまま行き交う。酒臭く淀んだ大気を泳ぐ群れ。私もその中の一人だ。　おねえさん、遊ばない？　時折酔っ払いがまとわりつくが、私は知らぬふりをしてやり過ごす。女が一人きりで歩いて何が悪いの。 涼子は、強いからな。そこがリッちゃんらしいところよ。わたし、好きだな。　遼司と美香の言葉が浮かんだ。　二人から結婚の話を告げられたのは二時間ほど前。遼司の口許から立ち昇るセブンスターの紫煙と、彼に寄り添う美香のすまなそうな表情は今も頭に残っている。「……おめでとう」　バーのカウンターで彼らに返した台詞だ。素っ気ない私の返事を、二人はどう受け止めただろう。　いつもより多く飲んだはずなのに酔いはまったくない。それとも、自分でそう思っているだけか。裏通りへ進み、路地を通り抜け、私は家路に向かう。と、人けの無い道に出たところで歩みを止めた｡　右手の雑居ビルの奥に、見慣れない店がある。　今にも崩れそうな、と形容したくなる木造の平屋で、小さなショーウィンドー越しに淡い光が漏れている。店はまだ開いているらしい。近寄って覗いてみると、陳列されている書画や陶磁器が目に付いた。深夜営業の骨董屋……こんなところに？ 好奇心に掻き立てられ、私は古めかしい扉を薄く開けた。　外から見た以上に、店内は狭い。仄暗い照明に埃をかぶった陳列品。掛け軸に能面、刀剣……。<nextPage>「いらっしゃい」どきりとした。　入口近くの腰掛に、老婆が座っていた。置物のように動かず、自身もまた陳列物であるかに見える。窪んだ目でこちらを捉え、「ゆっくり見ていきなさい」しわがれた声を出した。私は店に足を踏み入れた。古美術のことは何も知らないけれど、隅の棚に据えられた人形には惹かれるものがある。おかっぱ頭に日本的な顔立ちは市松人形のようだが、身に着けているのは和服ではなく青いサテン地のワンピースだ。「その人形が気に入ったのかい」　老婆の声がついてきた。「市松人形だよ。まあ、鑑賞用というより玩具扱いのものさ。昔は洋装の市松人形なんて珍しくなかったんだろう」確かに、人形は保存用のガラスケースも躰（からだ）を固定する台座もなく、裸足を投げ出して座った恰好で棚の上に置かれている。「手に取ってみていいですか？」　老婆が頷くのを確認してから、私は腕を伸ばして人形を抱き起こした。ずしりとした重さがある。　大きさは五十センチ位。洋服姿が、一般的な和装の市松人形よりずっと人間味を感じさせる。まるで本物の童女だ。指先で埃をはらうと、心なしか人形の表情が緩んだように見えた。「その人形はね」　いつの間にか、席を立った老婆が傍らにいる。「持ち主の願い事を叶える力があるんだよ」私は改めて老婆を見た。飄々とした風貌がどこか人間離れしている。「……あなたは、この人形に何か叶えてもらったのですか」　老婆は首を横に振った。「これは私（わし）のものではないのでね」<nextPage>　私はもう一度人形に目をやる。澄んだ瞳がじっと私を見つめている。 ……遼司と美香と私は学生時代からの友人で、付き合いは十年になる。軽い性格の遼司におっとりした美香、そして私。男一人に女二人の、恋愛感情抜きの交わりはとても心地好いものだった。　その関係の終焉は今年の春。久しぶりに三人で飲んだ帰り、私は居酒屋に忘れ物をしたことに気付いて彼らと別れ、ひとり店に戻った。目的を果たし店を出て、終電に乗り遅れまいと近道のホテル街を通ったとき、街灯の陰に二人の姿を見た。遼司と美香は固く抱き合い、唇を重ねていた。戯れのキスではなく、ひたむきなくちづけ｡　それを目撃したときの、胸の焼け付くような思いは今も忘れない。「みにくいね。嫉妬は」老婆が囁いた。「　　え」「その人形が気に入ったのかい」私は老婆に向き直った。「おいくらなの」「二百万」　しみの浮いた老婆の顔からは、何の感情も読み取れない。「願い事が叶うんだ。安いもんだろ」掌（て）の中で、人形の重みが増した。　望みを叶える人形。真実か嘘か。「……買うわ。カードは利くの」　老婆はからからと笑い出した。「いいさ、ただであげるよ。人形もあんたのことが気に入っているようだ」私から人形を取り上げて腰掛けに行き、脇にある台で梱包する｡「はいよ」　粗末な木箱に入れられて、人形が戻ってきた。皺に埋もれた目で私を見据え、老婆は最後に言った。「いい拾い物をしたね、あんた」<nextPage>　こうして、人形は私のものになった。　アパートの鍵を開けて、誰もいない室内に明かりをつける。この儀式が私は大嫌いだ。独り暮らしの侘しさを否応なく思い知らされる｡　けれど、今夜は違う。部屋でさっそく木箱を開き、市松人形を取り出してみる。ワンピースが薄汚れてはいるが、人形に古さはあまり感じられない。硬質の感触を確かめながら、私は人形の顔を撫でる。うすく弧を描いた眉、おおきな瞳、ふっくらした頬、小さくかたちの良い鼻と唇。どれも美しい。私は人形の色白の顔を、何度も撫でた。子供の頃、私は人形遊びが好きだった。お気に入りの人形に名前をつけていつも手元から離さず、本当の人間のように扱ったりしたものだ。人見知りの激しかった私にとって、人形はかけがえのない友達だった。　美香も人形が好きだと言っていた。私には、彼女こそが人形そのものに思う。愛らしい顔立ちをして誰からも好かれる美香。遼司が彼女を選んだのも当然だろう。　　涼子は、強いからな。なんか、手を出せないんだよな。　　そこがリッちゃんらしいところよ。わたし、好きだな。それに後輩の男の子たちの憧れなんだから。　二人から、こんな話を聞かされた。私は気丈な女で、誰にも頼らず生きていられるというのか。私はきつく人形を抱きしめた。願い事を叶えるというのは事実だろうか。骨董屋での出来事は、もう幻のようなのに。あの時、人形の方も私を気に入っていると老婆は言った。それは本当なのだろうか。　人形は持ち主に反抗することも、異議を唱えることもない。人形は持ち主の理解者となり、よき友人となる。持ち主の心を反映し、持ち主の気持ちを代弁する　　　私は人形を凝視した。人形が、瞳孔の開いた眸（め）で私を見つめ返し、笑った。　人形を取り落としそうになった。<nextPage>　紅い唇をうごかして、少女の姿の人形はささやいた。　アナタ、サミシイノネ。　その声は鼓膜ではなく、胸の奥に強烈に響いてくる。ヒトリガスキナノニ、ダレカソバニイテホシイ。アナタ、トテモサミシイヒトナノネ。　そんなこと、今まで誰にも言われたことなかった。　アナタ、ナニヲココロニトジコメテイルノ。ナニヲオモッテイルノ。　私……私は人と関わるのが苦手だ。いいえ、嫌いだ。煩わしい社交より、ひとり静かに過ごしていたい。　だけど、孤独はもっと嫌だ。ひとりきりは寂しい。誰か私のそばにいてほしい。　美香と遼司との交遊は私にとって至福のひとときだった。それぞれ性格の違う三人が知的好奇心の元に集う。その快（こころよ）い関係を、私は大切に思っていた。　でも、それは最悪のかたちで裏切られてしまった。　私には、ずっと秘めていた感情があった。それは……　ナニヲネガウノ？　私は人形を見た。なんて優しい表情をしているのだろう。そして、なんて温かな言葉なのだろう。　ナニヲネガウノ？「私の願い、叶えてくれるの……？」　私は呟いた。　人形の眼が、すうっと細くなった。　アナタノネガイ、カナエテアゲル。<nextPage>「洋服の市松人形なんて、珍しいじゃない」　美香が感嘆の声を上げた。遼司はその隣で物憂げに人形を眺めている。「結婚祝いに人形かあ」遼司が言った。「市松人形って、ちょっと不気味だよな」「ひどいわ、リョウちゃん」　美香が遼司を睨んだ。「せっかくリッちゃんがプレゼントしてくれたのに。ねえ、どこでこの人形見つけたの？」　私は曖昧に微笑んだ。　青いワンピースは洗濯で少し色褪せてしまったが、丁寧に手入れした市松人形は新品同様になっている。真新しいインテリアに囲まれた居間で人形を手にする美香。そして、彼女を守るように寄り添う遼司。美しい光景だ。披露宴を間近に控えた二人は眩い。彼らの新居は２ＬＤＫのマンション。頭金は双方の親が半分ずつ出し、残りは共働きで返済していくらしい。「賃貸で、もっと安いのにしてもよかったんだけどさ」「なに言ってるの」美香が遼司の背中を小突いた。「いい条件だったし、絶対ここにしようって二人で決めたんじゃない」　それに、リッちゃんの所からも近いし。と彼女は付け加えた。このマンションから私のアパートまでの距離は五百メートルくらいしかない。「本当に、そう思ってるの」「もちろんよ」　私の意地悪な問いに、真剣な面持ちで美香は答えた。「リッちゃんのそばで、わたし本当に嬉しいわ。今日だって来てくれて感謝してるのよ」「式が近くて忙しいのに、お邪魔だったんじゃない」　そんなことはない、と遼司も美香もつよく否定した。「ま、腐れ縁だしな」<nextPage>　相変わらず、遼司の態度には磊落（らいらく）なところがある。「これからも、家に遊びにきてね」　人形を大事そうに抱き上げ、美香が言う。　これからも、私に二人の幸せを見せつけようというの。窓辺から、やわらかな陽が射している。秋の日差しを受け睦やかな二人。人形は静かに、美香の膝の上にある。　私はそれを見つめて、言った。「人形、大切にしてね」「もちろんよ」　美香がにこやかな笑みを浮かべた。私も微笑んだ。翌日、二人が事故に遭った知らせを聞いた。　指定された病院へ駆けつけ、病室のドアを開けると、ベッドに横たわる白い姿があった。「美香」　私が呼ぶと、彼女は包帯の巻かれた顔を弱々しくこちらへ向けた。青ざめた唇から、掠（かす）れた声が漏れる。「……リョウちゃんが……」遼司が死んだ。<nextPage>　披露宴の打ち合わせに式場へ行く途中、遼司と美香の乗った車は路肩のコンクリート壁に激突した。助手席の美香は一命を取り留めたが、運転席の遼司は即死だった。　病院の受付には二人の両親がいた。私は美香の父母から事情を聞いた。遼司の母親は半狂乱だった。原因は遼司の運転ミスらしい。「急に……リョウちゃんがハンドルを切って……」美香の目から涙がこぼれ落ちた。　私はベッドに近寄り、優しく美香の手を取った。「いいから、今はゆっくり休んで」　美香のすすり泣きはいつまでも続いていた。　私は彼女の手を何度も撫でた。擦り傷が痛々しい。ギプスに包まれ身動きひとつしない美香の体はまるで人形のようだ。　人形。　私はひそやかに笑った。私には、ずっと秘めていた感情があった。私は愛らしく誰からも好かれる美香がいとおしかった。人形を愛でるように美香を慈しみたいと思っていた。美香と遼司のくちづけを見たときから、この想いは膨らんでいった。美香を自分だけのものにするには、遼司は邪魔な存在だった。　彼はフロントガラスに何を見てハンドルを切ったのだろう。　嫉妬は醜いと骨董屋の老婆は言ったが、愛もまた醜いものだ。愛情が強い程、それを受ける者には呪いでしかなくなるのではないか。でも、そんな事どうでもいい。やっと私の願いが叶ったのだから｡　美香、もう泣かないで。これからは私がずっとそばにいてあげる。だからもう泣かないで。　あなたに近づく者は、市松人形が取り除いてくれるでしょう。あなたに近づく者は、誰であっても許さない。あなたは私だけのものよ｡　美香。私の気に入りの、美しいひと。]]>
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<title>桜</title>
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<summary type="text/plain">また…</summary>
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<dc:subject>涼</dc:subject>
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<![CDATA[また…この季節が来る―<br>あの日　あなたへの想いと供に私が　私の想いと供に　刻を止めた季節―<br>桜の舞い散る姿を見つめあの頃の痛みと手ひどい裏切りの傷にまた　涙を流す<br>私の恋心は封印されたままあなたを待ちわびて　待ちわびて…そして　私の桜は永遠の眠りにつきもう　蕾さえもつける事はない…<br>もう2度と　誰も愛さないように誰かの為に　美しく装う事などないように…<br>一時の魔力一時の夢…<br>花と供に散った私の恋心…<br>もう2度と　純粋なあの頃に戻る事などないのだけれど<br>それでもまだ焦がれている…<br>もう1度咲き誇る事に― ]]>
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<title>あなたのまわりにも××が…</title>
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<summary type="text/plain">「うっわースゴーイ！」</summary>
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<dc:subject>王巳叶依</dc:subject>
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<![CDATA[「うっわースゴーイ！」　私は思わず歓喜の声をあげた。　なんと、私は今地上五百メートルの所にいるのだ。　〃いる〃と言うよりは〃浮いている〃の方が正しいのかな。　どっちにしても、とにかく爽快！　気持ちいいのなんの。　人の姿なんてゴマよゴマ。すっごくちっちゃいのよね。　いやーおもしろいなー。　へっへっへーあのゴマちゃん達には味わえないのだ。　そう思うとよけいに爽快だね！　何せ私は死んでるんだしねー。　そう、死んでんだよ。　私。しかも、自殺だよ。自殺。<nextPage>　昨日。自宅のマンション(十二階)からの飛び降り。　いやー、あの一瞬って凄く長いのよ〜。　覚悟して飛び降りたつもりが、怖くてしかたなかったもの。　そしてあの地面についた感覚ときたらさー。　うまく言えないけど、あえて言うなら。　まるで〃ど根性ガエル〃のピョン吉のようだったわ…。　痛くはないけど、内蔵が破裂するのハッキシ分かった。　ぐちゃ、て体の中で飛び散る感じが。　あのぶんじゃ肋骨なんか折れまくりだろーな。　あ、でも後頭部からだったしなぁ。　背骨の方が跡形もないかも。　顔から落ちてたら悲惨だったろーな。　後片付けの方、ご苦労様でした。　それにしても。　理由(わけ)ってのが、今になって考えるとちゃんちゃらおかしい！　男に捨てられたのよね。　よくありがちだけど、会社の上司と不倫してたのね。　そいつがさ、「女房と別れて君と一緒になる」なんて行ったの真にうけて信じたらあっけなく裏切られた。　そんで自殺。　ああ、ありがちすぎる。　もうちょっとロマンチックな恋したかった。　誰もが羨(うらや)むような大恋愛。　現代版のロミオとジュリエットみたいの。　その上で死ぬんなら悔いも残んないと思うけど、私みたいな場合はダメね。後悔ばっかり。　あんなクソ男の為に自殺したなんて。　馬鹿みたい。　つくづく思う。　死んだ後でこんな風に気付くなんて超オマヌケ。<nextPage>「あーくだんない死に方」　溜め息(？)と一緒に、ポツリ。　何人もいるんです。　こうゆう幽霊(ひと)。　この方はまだいいほうです。自分が死んだのを分かってらっしゃる。　ひどい幽霊(ひと)になると自分が死んだのすら分かってません。　そういった類い(たぐい)の方が一般に言う、浮遊霊になんてしまうんですね。　この浮遊霊になられた方が私怨を持っちゃったのが、自縛霊って方です。　この方たちは自由に飛び回る事ができないぶん力が並じゃありません。おっぱらう力がない方やとり憑かれやすい方、近付かない方が妥当です。遊び半分で近付くのはやめましょう。　え？　近付くなと言われても見えないからわからないって？　それじゃ見えるように努力してください。　え？無理だ？　仕方ないですね〜。　ま、大抵の自縛霊の方は噂どおりの所にいます。　よくテレビや雑誌でやってるでしょう？　心霊スポットだのなんだの。　まずそういったとこには絶対いますよ。　少しは役立ったでしょ。　でも私は見えないと言っている貴方。　よぉぉぉぉく目を見開いて見て下さい。　貴方の隣には、ホラ子供が遊んでますから………。　かくゆう私の家の廊下では、座敷童子が(ざしきわらし)がいっも走り回っています。(この子は妖怪ですけどね　) ]]>
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